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本章 ――魔導騎士団の見習い団員――
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太陽がちょうど空のてっぺんにくる頃。セレナは、ケルピーの魔石よりも少しだけ小さい灰色の魔石を数個、もう少し小さい群青色や黒の魔石や小さな赤の魔石を大量に持ち帰った。
魔導騎士団の詰め所には昼食をとる団員達が集まっている。興味深そうに食堂の隅のテーブル席で真剣な面持ちの魔導騎士団本部隊長アレクサンドロと、その向かいに座る見慣れぬ娘を眺めているようだ。アレクサンドロの向かいに座るセレナは背をピンと伸ばし、緊張した面持ちだ。
アレクサンドロは呆然として、セレナの持ち帰った魔石の山を見つめている。
「……これ、本当にお嬢さんだけで?」
「えぇ、まぁ」
信じられないという思いがその表情に現れてしまっている。
――う~ん……どういう事?
――星獣がいるから全くの一人って言っていいか迷うとこだけど、あたしの魔力でお願いしたし……
――あたしの魔法って事になるものね?
――……星獣は一人に数えますかぁ? とは、聞ける雰囲気じゃないよね……
――もちろん聞いちゃダメだけど…
「あの……何か不備でもありましたか? 」
――バイコーンは珍しいみたいだけど、他にあんまり強い魔物がでてこないから、張り切って魔物を探してまわって、張り切って狩ってきたのに…
――そりゃぁ急いでたから、魔石をちょっと大雑把にあつかっちゃったかもしれないけど…
――商品にならないほど、キズとかないはず……何がおかしいのかな?
――星獣どうこうは聞けないけど、ラジット小父様は妖精って強調してたよな…
セレナは眉をしかめ、その顔色は心なしか青白くなっていった。アレクサンドロはそんなセレナの様子に気付くこともなく、唖然と山になった魔石を見つめている。
――このお嬢さん…
――見かけによらず………いや、本物の方だったか
――という事は、朝言っていたことも……嘘はないってことか…?
――ここまで条件が揃えば、養女という点は無理があるよな?
呆然と魔石の山を眺めていたアレクサンドロは、そこに陰るうつむき加減の女性の影にハッとして顔を上げた。セレナの顔色が白くなっているのを見て慌てて言葉を探した。
アレクサンドロが顔をあげたのでセレナも思い切って言葉を発した。ふたりが放った声は、同時だった。
「妖精に手伝ってもらったのは、ダメなんですかっ? 」
「合格だ……文句なしの、合格だっ!!」
同時に言葉を発してしまった為、相手の言葉を読み取るのに少しの間。お互い相手の顔を窺う様に見つめた数秒後。
「ん? 妖精?」
「ん? ……やったぁっ!!」
――妖精の加護っ!!
――いや、愛し子の扱いか…
――なるほど、其れなら……
――ちょうどいい言い訳になるね…
再び思案する表情を見せたアレクサンドロ。それとは反対に両手を口の前で合わせて、 歓喜に瑠璃色の大きな目を潤ませたセレナは、ヤッターと飛び跳ねた。そこへ先日聞いたばかりだが、まだ聞き慣れない低くなった声が届く。
「 ……レナっ!!」
「……ルー!! 」
「ルイス…? 」
頭から降ってくるその声に反応して、階段の上をセレナとアレクサンドロがそろって見るとそこには見慣れたボサボサの朱色頭。 セレナの姿を目にして、階段を駆け下りてくる。
「どこ行ってたんだよっ 街中さがしてたんだぞっ!! 昨晩どこでどうしてたんだよっ」
「ルー、声大きいよぉ」
「……知り合いか?」
怪訝な表情を浮かべたアレクサンドロ。腕はあるがなにかと問題児のルイスが怒鳴る勢いのままセレナに詰め寄ってこようとしているのだ。1つに結わかれた長い金色の髪をふわりと揺らしセレナは、ヒラヒラと手を振っている。にっこりと笑みを浮かべて。
「おいルイス、女性相手に…」
「ルーっ!! どこ行ってたのはあんたでしょうがっ!! 駅に着いたら、いきなり消えちゃってっ」
「ぐ……」
「大体ルーはいつもそうだよねっ 散々オレに任せろとか言ったおいて、良いとこでいなくなっちゃうんだからっ 泊めてくれるって言ってたのにっ!」
セレナを庇おうと立ち上がったアレクよりも一歩前に出て、階段から降りてきたルイスを睨み付けているセレナ。瑠璃色の大きな目に睨まれ、ルイスはぐっと言葉を飲み込んだ。
「……うぐっ…」
ルイスの戸惑った様子に、満足した様にセレナが口の端を持ち上げた。
「昨日はヤドリ木亭って所に泊まったのよっ ラジット小父様も、門番の騎士様もお勧めしてくれたからっ」
「……なんだ…それならそうと…」
オレにも言っとけよなあのくそしじぃ――最後はボソボソと呟かれるルイスの声に、耳を傾けていたセレナは、ばつが悪そうに頭をかくルイスの顔を覗き込んだ。ルイスの真朱色の目の下には、くっきりとした隈がみてとれる。
「もしかして…一晩中探してたとか?」
「(コクリ)」
ばかねっと、囁きながらセレナがルイスの目の下にはっきりとできている隈を指先でそっと擦る。すると、黒ずみはサッと消えた。ルイスとセレナは気にした様子はないが、その出来事にアレクは息を飲んだ。
――この子は、絶対に本物だ…っ
内心焦っているアレクサンドロを置いて、ルイスとセレナは何やら楽しげに話し込んでいる。ひとしきり話が終わったのか、2人そろってアレクサンドロに視線を向けてきた。
「なぁ、アレク、 レナの部屋は?」
「ん? あぁ、急なことだからなぁ…」
本来であれば、1ヶ月に1度の入団試験。その上、合格者がでるのは稀な事。団員は皆共同生活になるのだが、合格者がでないのだから、部屋の用意などしているはずもない。空き部屋は多数あるが、先住民の物置きと化しているのだ。
「まいったな…どこかの部屋を片すしかないな……どこにするか…」
「決まってないなら、オレが決めていいよなっ」
ルイスの楽しそうな弾む声。普段不機嫌面で決まったメンバーにしか寄り付かずしゃべることも少ないルイスが、声を上げることすら珍しいのだが、その声がご機嫌ならなおの事目立っている。食堂で昼食をとっていながら、こちらを気にしていたメンバー達が驚きを隠せない顔をしていた。
「いやだからぁ、ルーの部屋を一緒に使うのは、ダメでしょやっぱりっ」
「……べつに、昔はよく一緒に寝てたからいいだろ?」
「昔はねっ!! これでも年頃の女の子なのよっ!!」
「オレだって、年頃の男だぞ」
「なに胸張って言ってんのよっ」
太陽がちょうど空のてっぺんにくる頃。セレナは、ケルピーの魔石よりも少しだけ小さい灰色の魔石を数個、もう少し小さい群青色や黒の魔石や小さな赤の魔石を大量に持ち帰った。
魔導騎士団の詰め所には昼食をとる団員達が集まっている。興味深そうに食堂の隅のテーブル席で真剣な面持ちの魔導騎士団本部隊長アレクサンドロと、その向かいに座る見慣れぬ娘を眺めているようだ。アレクサンドロの向かいに座るセレナは背をピンと伸ばし、緊張した面持ちだ。
アレクサンドロは呆然として、セレナの持ち帰った魔石の山を見つめている。
「……これ、本当にお嬢さんだけで?」
「えぇ、まぁ」
信じられないという思いがその表情に現れてしまっている。
――う~ん……どういう事?
――星獣がいるから全くの一人って言っていいか迷うとこだけど、あたしの魔力でお願いしたし……
――あたしの魔法って事になるものね?
――……星獣は一人に数えますかぁ? とは、聞ける雰囲気じゃないよね……
――もちろん聞いちゃダメだけど…
「あの……何か不備でもありましたか? 」
――バイコーンは珍しいみたいだけど、他にあんまり強い魔物がでてこないから、張り切って魔物を探してまわって、張り切って狩ってきたのに…
――そりゃぁ急いでたから、魔石をちょっと大雑把にあつかっちゃったかもしれないけど…
――商品にならないほど、キズとかないはず……何がおかしいのかな?
――星獣どうこうは聞けないけど、ラジット小父様は妖精って強調してたよな…
セレナは眉をしかめ、その顔色は心なしか青白くなっていった。アレクサンドロはそんなセレナの様子に気付くこともなく、唖然と山になった魔石を見つめている。
――このお嬢さん…
――見かけによらず………いや、本物の方だったか
――という事は、朝言っていたことも……嘘はないってことか…?
――ここまで条件が揃えば、養女という点は無理があるよな?
呆然と魔石の山を眺めていたアレクサンドロは、そこに陰るうつむき加減の女性の影にハッとして顔を上げた。セレナの顔色が白くなっているのを見て慌てて言葉を探した。
アレクサンドロが顔をあげたのでセレナも思い切って言葉を発した。ふたりが放った声は、同時だった。
「妖精に手伝ってもらったのは、ダメなんですかっ? 」
「合格だ……文句なしの、合格だっ!!」
同時に言葉を発してしまった為、相手の言葉を読み取るのに少しの間。お互い相手の顔を窺う様に見つめた数秒後。
「ん? 妖精?」
「ん? ……やったぁっ!!」
――妖精の加護っ!!
――いや、愛し子の扱いか…
――なるほど、其れなら……
――ちょうどいい言い訳になるね…
再び思案する表情を見せたアレクサンドロ。それとは反対に両手を口の前で合わせて、 歓喜に瑠璃色の大きな目を潤ませたセレナは、ヤッターと飛び跳ねた。そこへ先日聞いたばかりだが、まだ聞き慣れない低くなった声が届く。
「 ……レナっ!!」
「……ルー!! 」
「ルイス…? 」
頭から降ってくるその声に反応して、階段の上をセレナとアレクサンドロがそろって見るとそこには見慣れたボサボサの朱色頭。 セレナの姿を目にして、階段を駆け下りてくる。
「どこ行ってたんだよっ 街中さがしてたんだぞっ!! 昨晩どこでどうしてたんだよっ」
「ルー、声大きいよぉ」
「……知り合いか?」
怪訝な表情を浮かべたアレクサンドロ。腕はあるがなにかと問題児のルイスが怒鳴る勢いのままセレナに詰め寄ってこようとしているのだ。1つに結わかれた長い金色の髪をふわりと揺らしセレナは、ヒラヒラと手を振っている。にっこりと笑みを浮かべて。
「おいルイス、女性相手に…」
「ルーっ!! どこ行ってたのはあんたでしょうがっ!! 駅に着いたら、いきなり消えちゃってっ」
「ぐ……」
「大体ルーはいつもそうだよねっ 散々オレに任せろとか言ったおいて、良いとこでいなくなっちゃうんだからっ 泊めてくれるって言ってたのにっ!」
セレナを庇おうと立ち上がったアレクよりも一歩前に出て、階段から降りてきたルイスを睨み付けているセレナ。瑠璃色の大きな目に睨まれ、ルイスはぐっと言葉を飲み込んだ。
「……うぐっ…」
ルイスの戸惑った様子に、満足した様にセレナが口の端を持ち上げた。
「昨日はヤドリ木亭って所に泊まったのよっ ラジット小父様も、門番の騎士様もお勧めしてくれたからっ」
「……なんだ…それならそうと…」
オレにも言っとけよなあのくそしじぃ――最後はボソボソと呟かれるルイスの声に、耳を傾けていたセレナは、ばつが悪そうに頭をかくルイスの顔を覗き込んだ。ルイスの真朱色の目の下には、くっきりとした隈がみてとれる。
「もしかして…一晩中探してたとか?」
「(コクリ)」
ばかねっと、囁きながらセレナがルイスの目の下にはっきりとできている隈を指先でそっと擦る。すると、黒ずみはサッと消えた。ルイスとセレナは気にした様子はないが、その出来事にアレクは息を飲んだ。
――この子は、絶対に本物だ…っ
内心焦っているアレクサンドロを置いて、ルイスとセレナは何やら楽しげに話し込んでいる。ひとしきり話が終わったのか、2人そろってアレクサンドロに視線を向けてきた。
「なぁ、アレク、 レナの部屋は?」
「ん? あぁ、急なことだからなぁ…」
本来であれば、1ヶ月に1度の入団試験。その上、合格者がでるのは稀な事。団員は皆共同生活になるのだが、合格者がでないのだから、部屋の用意などしているはずもない。空き部屋は多数あるが、先住民の物置きと化しているのだ。
「まいったな…どこかの部屋を片すしかないな……どこにするか…」
「決まってないなら、オレが決めていいよなっ」
ルイスの楽しそうな弾む声。普段不機嫌面で決まったメンバーにしか寄り付かずしゃべることも少ないルイスが、声を上げることすら珍しいのだが、その声がご機嫌ならなおの事目立っている。食堂で昼食をとっていながら、こちらを気にしていたメンバー達が驚きを隠せない顔をしていた。
「いやだからぁ、ルーの部屋を一緒に使うのは、ダメでしょやっぱりっ」
「……べつに、昔はよく一緒に寝てたからいいだろ?」
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