死んだ日の朝に巻き戻りしました  ら、溺愛生活がリスタート?

ピコっぴ

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2 あの日の朝に

2‑4 クレディオスの苦悩

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     📍

 中は、嘆く精霊や怒る精霊で荒れ狂っていた。
 季節外れの嵐でもまだこれよりかは静かだろう。

 人や動植物の姿を模倣できるほど力のある大きな精霊はまだいいけれど、純粋な力の塊でしかない原始的な精霊達は、その性質を歪めそうなほどに正気を失って危険だった。
 己の属性を失って、闇に落ちかねない。


 クレディオス様は、何とか集めた精霊を制御しようと、手にした宝珠オーブに魔力を込め、逃げ惑う精霊を睨みつける様子は、まるで恐怖政治を敷こうとする独裁者のよう。

「クレディオス様、それでは精霊達との交信は出来ませんわ。一度彼らを解放して」
「うるさい!! 僕は、精霊魔法を使えるようにならなくてはならないんだ。それには、従える精霊を、君よりも多く集めなくては。僕は、生まれながらのアァルトネン一族ではないからな。ハンデがある。
 エミリア嬢と公爵家に見合う、相応しい術者にならなければ⋯⋯」

 エミリアの隣に立つために、アァルトネン一族に婿入りするために、彼は精霊魔法を使えるようにならなくてはならないと、思い込み、焦っている。
 嫌がる精霊をたくさん集めても、意味はないのに。

「精霊魔法は、厳密には魔術ではないのです。強制的に従わせても、魔法が使えるようになる訳ではありません」

 私の言葉には、常に疑心のフィルターがかかるのか、こちらを睨みつけて窺っている。

「僕を欺そうとしているのか?」
「いいえ。そんな事しても何にもならないわ。あなたは、エミリアと一緒になるのでしょう? 妹の夫になる人を欺して何になるというの。信じて、一旦術を解いて」

 オーブを掲げる手が、少し下がる。

 建物の外で、いくつかの悲鳴が上がった。
 彼の気が弛んだことで、一部の大きな精霊達が制御から離れ、暴れながらこの地を去って行くのに巻き込まれたらしい。

「クレディオス。いいから、一旦術を解くんだ。君も、嫌がる精霊の吐き出した澱に浸食されているだろう、顔色が良くない。体調を整えて、もっと正確な術式を構築し直して、再挑戦した方がいい」

 エリオス殿下が促すと、少しだけ心が動いたのか、オーブを両手に抱えて、室内の様子を見、長椅子を視界に納める。

 ホッとしたのも束の間、私が一歩進むと、また興奮状態に陥る。

「く、来るな。エステル⋯⋯君は、冷たく、理解出来ない。なぜ、あの家に暮らしていられるのか。家族にあんな風に扱われて、傷つかないのか? 心はないのか? あっても、氷の心を持っているのか? 僕には信じられない。僕なら、耐えられない⋯⋯」
「あんな扱い? クレディオスには、エステルが不幸に見えるのか?」

 殿下が整った眉を顰め、クレディオス様に詰め寄る。

「不幸? そんなものじゃないな。公爵家の『家族』はリレッキ閣下とラウハ夫人と愛娘エミリア嬢しかおらず、もう一人娘がいるように見えるけど、実際は、公爵家の名声を高めるためだけに教育された、前公爵の遺した魔法人形が居るだけだ。使用人達も、家人の前では、魔法人形に構ったり声をかけたりしない。人形は感情がないとでも思っているのか、彼らも機械的に仕事を熟すだけ。僕なら、家のためだけに選別された特別な教育を受けさせられ、どんなに結果を出しても頑張っても、その場に居ないかのような、そんな扱いは耐えられない」

 クレディオス様は、片手でオーブを大事に持ち、片手で目もとやこめかみの辺りを覆い、しゃがみ込む。肩は震えているようだった。

「そう思うなら、なぜ君は、彼女に寄り添ってやらなかった? 婚約者だろう? 母親を亡くし、父親は再婚相手とその間の子ばかりを可愛がり、彼女が孤立していたのなら、夫となる君だけは味方でいてやるべきだったのではないのか?」
「い、嫌だ。エステル嬢の、ミントグリーンベリル(緑柱石)のような透き通った濁りのない眼が、僕の卑小な人間性を、矮小な魔術力を、見て見ぬ振りをする小狡さを、見透かすようで落ち着かない。動悸が激しくなるし、熱に浮かされたようにフラフラになったり、息が浅くなったり、彼女の傍にいるのは苦痛なんだ⋯⋯」
「クレディオス、お前は⋯⋯」




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公開予約の設定を間違えていたことに気づいてなくて、こんな時間に失礼しました🙇

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