身代わりの私は退場します

ピコっぴ

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テレーゼ様と私

72.空気を読まない晩餐?

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 晩餐の時は、まわりの空気が微妙だった。

 壁際に控える給仕達使用人は、僅かに緊張を隠せていなかった。

 ジェイムスさん以外。

「お嬢さま。これが、この地で採れたズッキーニ(黄)とコー ※ ルラビ、ロマネスコ、アスパラガス(白)とチコリ、アーティチョークのラタトゥイユになります。昔フランク王国の一部だった頃から伝わるこの地の料理になります。王都では中々食べられなかったでしょう」
「ええ。とても美味しくてよ。お野菜がとても豊富でよく火が通っていて食べやすいわ。味付けは少し違うけれど、南のカポナータに似てるのね?」
「はい。ラタトゥイユは具材を一度に炒めて調理しますが、カポナータは、ひと品一品素揚げしたり、ワインビネガーや砂糖など味付けも濃いめです。お嬢さまは、さっぱりしたお味の方がお好みでしたね?」
「ええ。素材の味を活かしたとてもいいお料理だわ」
「料理長も喜びます。お伝えしておきますね」

 ジェイムスさんは、王都のお屋敷と変わらず通常業務。
 元々こちらでお祖父さまにお仕えしていたのなら、ホームグラウンドとも言えるだろうから、長年の経験もあって緊張もないのだろう。

 お祖父さまにも同じように給仕をして、丁寧にひと言二言添えている。

 お祖母さまが私を (アンジュリーネ) 歓迎していないのは出迎えの時の態度からありありなので、他の使用人達は、なるべく私には遠巻きにしている様子が見て取れる。
 お祖父さまもお兄さまも私を構うのに、お祖母さまは居ないかのように扱うので、よけいに困惑しているのだろう。

 テレーゼ様はまったく気にしていない様子で、カトラリーの音を立てることもなく上品に食事していた。
 クリスも、時々私に話しかけてくれる。

 メインの羊肉は、クリスの国と、ヒューゲルベルク領の野菜と交換貿易で入手したものらしく、お兄さまと競うように解説してくれた。


 夜は、お嬢さまの部屋がある訳でもないので、テレーゼ様と二人用の客室に泊めてもらう。

 この家の正統な孫なのに、部屋がないとは、本当に歓迎されていないのだな、と思った。
 お兄さまは、ご自身のお部屋の隣に用意しようと言ってくださったけれど、今まで必要なかったのだし、来年クリスのもとに嫁がれるのなら、お嬢さまにもこの先も必要はないと思われるので、「王都に戻ってから、お母さまと相談しますわ」とだけ言って、やんわりとお断りした。

 お嬢さまのお部屋がない事は、お祖父さまもご存知なのか訊いてみたいけれど、もしかしたら虎の尾を踏む行為かもしれないし、家政に関しては、お祖母さまの領域なのでお任せしているのかもしれないので、口は出さないでおこうと決めた。

 お嬢さまもこの先一年足らずで侯爵家を出るのだし、私に至っては、お嬢さまが快癒なさった直後から必要はないものだ。

 それに、こうして、隣り合ったベッドでテレーゼ様と話しながら入眠を待つのもいい。

 姉妹が居れば、こんな感じだったのかもしれない。



 翌朝は、クリス達を見送るため、早めの朝食を摂り、玄関口に並ぶ。

 友好国の公子を見送るのだから、当然、お祖母さまも立っている。

「アンジュ。また、しばらく会えなくなるけど⋯⋯」
「はい。お元気で。また、社交シーズンには、帝都や王都で招待されればいらっしゃるのでしよう? パートナーとして恥ずかしくないよう、お兄さまと練習しておきますわ」
「そーそー。アンジュの事は、俺に任せて、心置きなく、領地に帰りたまえ」

 笑って、私の肩を抱いてクリスを送り出すお兄さま。

「アンジュ!! やっと会えたのに、⋯⋯帰りたくないなあ」

 そう言って、お兄さまの顎を押しやって私から引き離すと、人目も憚らずガバリと抱き締めてくる。

「お、大袈裟ですわ。次の会期まであとふた月ほどではありませんの」

 これのどこが、冷え切った仲の婚約者なの?

 お嬢さまの情報は適当なのばかりだ。


「帰ってこないと思ったら、ここに居たのか」

 中々私を放そうとしないクリスの背後から、低めの通るよい声が聴こえた。 




 ❈❈❈❈❈❈❈


コールラビ(直訳:Kohlコール=キャベツ rabiラビ=かぶ)
  見た目はかぶらの、アブラナ科の植物。根菜ではなく太った茎。らしい。この中で唯一、筆者も見たことがない野菜。

ロマネスコ
  カリフラワーの仲間で、ドリルか針葉樹のような尖ったブロッコリーに見える。
  筆者は以前、東京の三鷹市で栽培されているのを見たことあります。が、食べた事はありません。

アーティチョーク(和名は朝鮮アザミ)
  でっかいアザミの蕾。筆者は育ててましたが、食べたことはありません。私の身長より高く伸びました。

チコリー(菊苦菜)
  キク科の植物の新芽。苦いけど、陽光に当てずに白く育てると食べやすいらしい。アスパラガスと一緒だね。

ズッキーニ(ウリ科カボチャ属)
  見た目は太い、イボのないキュウリ。黄色いのは青い方に比べて青臭さもなく、サラダなどでも食べやすい。らしい。筆者は、スイカみたいな濃い緑のを輪切りにして炒め物やカレーに入れたのしか食べたことはありません。

 最近ではスーパーでも見かける野菜だと思いますが、念のため


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