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コハク、遊び人Lv1 初めての大きな依頼に緊張シマス

いち。『むせるほどの緑気。吸い込む空気も、緑に溢れている』──やって来ました、西濤の森。波濤の一族の依頼のために

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     🏞️


 むせるほどの緑気。吸い込む空気も、緑に溢れている。
 踏みしめる足元の蒼と三六〇度見渡す限りの植物。

 街よりもかなり涼しい。

 クリステルパルスシティまで、ルーナ姫を連れて転移魔法で来たキールさんだけど、流石に、何人もは無理という事で、馬車を使って、西濤にしなみの森まで3日かけて来た。

「そもそも、転移魔法を展開したのは、クリステルパルスシティに行った事のある自分ですが、調整と魔力供給は、姫さまなのです」

 私達の街の座標を知っているキールさんが転移魔法を使ったけれど、細かな調整やたくさん消費した魔力の殆どは、ルーナ姫さまが行ったのだという。

「素晴らしいですね。妖精族は、大掛かりな魔法陣や触媒を必要としないで、協同魔法が行えるんですね」

 あの場に居合わせ、上級精霊術を扱えるので今回の調査団に立候補したハーフエルフのターレンさんが、興奮気味に食いつく。

「そもそも妖精族は、世界を構築する力の元となる魔素を糧に精霊と共に在って、色んなものと同化して来た存在だからな。魔力や魔法を共有するのは得意なんだ」

 君のスニャイム達だってそうだろう?

 目を細めてにこやかに、私の頭の上のチルちゃんを見るキールさん。

 ちなみに、ナーヴさんのコーディネートとギルマスの推薦で、腕利きSランクパーティの三人組、魔剣士のフィルタさんと魔導師アネッタさん、考古学者で自称探索家のギレウォッタさんに加え、ギルマスやアミナさんとも冒険に出たことのある上級調教師テイマーのラジエさんの中に、何故か、私も入っていた。


 ❊❊❊❊❊❊❊


「ええ!? 私も行くんですか?」
「何を今更。当たり前だろう」
「で、でで、でも、私は、Lv1の下っ端も下っ端、駆け出しの初心者より弱っちぃんですよ? 狂った魔獣や正気を失った精霊が暴れる森になんて行ったら、初日でおばあさんの元に行っちゃいますよぅ」
「おばあさんは、妖精と旅に出たんだろう? ちょうどいいな、手伝ってもらえ」

 冗談なのか、本気なのかわからないけど、ヒドイデス……

「波濤の一族で、通訳の出来る人間も一人は必要だろう?」
「キールさんがいるじゃないですか」
「半妖精で ハーフフェアリー あちら側の人間だろう? 異国間や異種族との協同活動上で、通訳は両方に必要なもんだ。読み違えもあるかもしれないし、一方的に騙される場合だってある」

 疑う訳でなくても、そうするものなのだそうだ。

「それに、お前さんの強運とスニャイムの豪運が、今回のクエストにいい方向に働くかもしれん」

 期待されてるんですね、チルちゃんたちに。

 実は、ギルドに残して保護するお姫さまの為に、もうひとり妖精を喚び出したのだ。
 ルーナ姫本人が。

 誰もいない個室に私と二人っきりで、『妖精王の杖シルフィールスタッフ』を貸出して、チルちゃん達のような、妖精族と人族との架け橋になれる妖精を願って振ってもらった。
 私は、いつも願いを込めて踊りながら振り回すのだけれど、お姫さまは片手でシャッシャと降っただけだった。

〈結構、魔力使いますね……〉

 森から街まで、二人分の長距離転移魔法を使った後に、召喚術は疲れたらしい。
 触媒なしで妖精が喚べるよ、って見せたら、感激された。

 上位の妖精の気配を感じる杖らしい。やはり本物?

 ピンク色の髪と瞳、薄緑がかった銀色のトンボの翅を生やした小妖精ピクシーが喚ばれて来た。

 翅の鱗粉(トンボの形だけど薄っすらと蝶みたいな模様もあった)を触媒に、意識の一部を共有できるようになるらしい。

 ギルマスとアミナさんにふりかけてもらったところ、ルーナ姫さまと会話が可能になったのだ。


 ❊❊❊❊❊❊❊


「あの小妖精ピクシーがもう一匹いたら、私、必要ないんじゃ……」

 ターレンさんもキールさんも、ある程度私の事情を知っているラジエさんも、微妙な顔で私を見るけど、何も言わなかった。

 そりゃ、MP(魔法精神力)マジカリティサイコス が2の私に喚び出せるとは思わないけど!
 いつか、すごい妖精を喚び出してみせるからね!


 ──しばらくは、この緑豊かな瑞々しい森が続くとのことだった









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