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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
51.犬を飼いたいの!⑤
しおりを挟むこの秋に、15歳になる。つまり物心がつく前も含め、約15年生きてきた訳だけども。
その15年間生きてきて、人間が、まるっと脱皮して脱け殻を残す、なんて、聞いた事がない。
「そうだね、わたしも聞いた事ないよ」
にっこり微笑むカインハウザー様。
「じゃ、これはなんなんですか?」
「なんだと思う?」
いや、解らないから訊いているのに、質問返しされても……
「もちろん、私の脱け殻ではないですよね?
凄い霊圧ですし、気配は、サヴィアやアリアンロッドに似てますね」
アリアンロッドを創り出し、瘴気を花畑の地に縫い留め、魔力の枯渇から昏倒して三日後に目覚めてから、精霊を視ることが出来るようになり、また、視なくても、目を閉じてても気配や霊気を読み感じる事が出来るようになっていた。
それは、強制的にカインハウザー様と同調した時の名残で、昏倒して知恵熱に寝込んだ甲斐はあったのだろう。
嬉しそうに微笑んだカインハウザー様は、私の背後に立ち、両肩を支えるように手を添え、顔を寄せてくる。
「霊気を感じるようになれたんだね。成長したなあ。前は、空想上の概念だとかいってたのに」
「カインハウザー様のご指導の賜です」
「それはそうとして、アレはね、妖精だよ」
「妖精? 私の脱け殻みたいな、アレが?」
蝉の脱け殻みたいに、私の形をした薄皮みたいなのが、私達の前にふわっと立っている。
あれが、妖精?
「妖精の羽衣は妖精達が織る。素材がなんなのかは実はハッキリしてないんだ。蜘蛛とか何か生物の糸を使っているのか、動物の毛や植物の繊維を使っているのか、人間の考え得るものとは別の、もっと何か不可思議なもので出来ているのか……」
魔法や魔術が便利なせいか、ここの文化水準は、中世よりやや古代に近い。科学的にものを分析する技術がないのだ。
火をつけると、酸素を消費しながら物を燃やしていく。二酸化炭素を排出しながら燃えかすをつくっていく。
私達現代人が普通に、小学生の理科で習うようなことも、ここでは、精霊が魔法を営んでいるとされるのだ。
私達の常識『科学』がここでは『魔法』なのだ。
「全部がそうなのかは判らないが、少なくとも、目の前にあるあれは、妖精が姿を変えたモノのようだね」
「あの状態で、生きてるのですか?」
「さて? 我々生物と、妖精達の生きているという概念が同じかどうか……本人に訊いてみてはどうだい?」
肩に置かれていた手が、背中を圧して、私は、数歩前に出た。
これが、妖精? サヴィアも籾ッコちゃん達も、花の妖精達も、薄翅をもった少女の姿をしていた。
土妖精や草の精霊
まだ遭ったことはないけど、パーンやコボルドなんかは、羊や犬の獣相をもった人型だという。
でもこれは、「生き物なの?」って訊きたくなるくらい、他の妖精達とはかけ離れてるんですけど。
《あ~あ、バレちゃった》
ガムランボールや錫
「バレたって?」
《あの、辛気臭い神殿の中でジッとしてるのも、とりわけ美しい羽衣のフリして心根の汚い人間を守護するのも、ぜ~ぇんぶ飽きちゃったの!》
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次回、Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
52.妖精王と狼犬
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