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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
84.アリアンロッドの自己申告
しおりを挟む身を屈めて、私の目の高さにあ合わせていたカインハウザー様は、立ち上がって、花畑の方へ向く。
「あ、あの……」
「驚いたな、あの時よりかなり小規模になってる」
ふらつく私を支えながら、瘴気を観察しているカインハウザー様。動揺してるのか喉が渇いているのか、やや声がかすれてうわずっている。
「闇落ちの残骸は……瘴気が呑み込んだのか?」
≪セル……ホメル、アリアン、ほめて≫
「ん?」
私の腰に縋りつく形でくっついたままのアリアンロッドが、上目遣いで、カインハウザー様に、誉めろとねだった。
やっぱり、私の感情を核にしてるって納得いかないんですけど。
「あ、アリアンロッド、が、喋った?」
驚いて、アリアンロッドに向き直るカインハウザー様。幼児の話を聞くパパみたい。
≪アリアン、いい子。セル、ほめる。シオリ、ほめてクレタ≫
「アリアン、何がいい子だったのかな?」
にっこり微笑むカインハウザー様。でも、動揺が隠せてないって言うか、声が変ですよ?
≪アリアン、クロい悪いの、やっつけた! クロい悪い、妖精やお花コロす、仲間悲しませる、悪いクロクロ、いっぱいやっつけた≫
「アレが、小さくなったのは、アリアンロッドのおかげなのか?」
≪そう! アリアン、いい子、シオリ言った!≫
私にしがみつく姿勢から離れ、両手をあげて振り回し、はねるようにして、カインハウザー様に自ら報告するアリアンロッドは、本当に幼児のようだった。
困惑した様子で顔をあげたカインハウザー様と目が合ったナイゲルさんが、興奮気味に報告する。
「本当に、凄かったですよ! 一気に天高く飛んでいったかと思ったら、ハヤブサの如く急降下してきて、両手にそれぞれ光の球を生み出して、次々と瘴気に叩き込むんです!!」
オラフさんやキーシンさんも頷く。
「あっという間に、瘴気が縮んで、闇落ちの残骸も粉々に……本当に迫力ありましたよ」
「もう少し続けば、本当に滅せてたかも……」
興奮状態のナイゲルさんやオラフさんと違い、ロイスさんだけが硬い表情で続けた。
「喜ぶんじゃない。アリアンロッドの活躍はそれはたいしたもんだけど。でも、また、力加減も慣れてないし、フィオちゃんの消耗が激しすぎる。後1~2発撃ってたら、昏倒してただろう。負担が大きすぎて、そうそう気軽に出来るもんじゃない。フィオちゃんの事も考えろ」
「す、すみません」
育ちのいい素直なキーシンさんはすぐに謝り、ナイゲルさんとオラフさんは気まずそうに俯いて黙り込む。
「助けてと言うのは……」
「私が、アリアンを止める事が出来なくて、呼吸が出来なくて、気が遠くなりそうだったんです。苦しくて苦しくて、気がついたら、助けを求めてたみたいです。なんだか、すぐカインハウザー様に頼る甘え癖がついたみたいで」
「それは構わないよ、幾らでも頼ってくれ。わたしの弟子だろう? 不慣れな弟子を扶けるのは師匠の務めだからね」
それよりも。
カインハウザー様は私に向き直り、
「危ないから、こういう事は、事前にわたし達に報せなさい。勝手な事をして、命の危険が迫ったらどうするんだ」
と、頭を軽く小突かれた。例の、どこから出したのが謎の教鞭のような棒でだ。
「はい。すみません。こんな事になるとは思ってなかったんです。まさか、アリアンがあんなに過剰反応するなんて……」
「ここへ来なければ、起こらなかった事だがね」
誉めろと騒ぐアリアンロッドに、霊気とマナを集めた右手で、頭の辺りを撫でるようにしてやっているカインハウザー様。
精霊を誉めるってああするの?
「よくやったなアリアンロッド。偉いぞ。ただし、これからは、シオリだけでなく、わたしもいる時にしてくれ」
≪はーい。 ……でも、セル、いない時に、クロクロ悪いの、シオリ襲ったら、どーする? セル、来るまで待つ?≫
確かに、この先にも、そんな場面がないとは限らない。でも、斃しきる前にこちらが昏倒したら、結局は、誰かが駆けつける前に呑み込まれてしまうのではないだろうか。
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