異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋

112. 番は蝶の雌雄ペア

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 シーグの叫びに、頭が真っ白になりそうだった。

「……………………えと、それは失礼したね」

 絶句していたカインハウザー様も、ようようそれだけは答えるが、まだ、脳内処理が追いついていないようで、姿勢もそのままシーグに向かい、何かをしようとしていた手元は固まったままだ。

「シオリ?」
「……は……い」
「説明してもらってもいいかな」
 ダメです。と、言いたい。無理ですと断りたい。

つがいって、動物で言うところの伴侶ってや……いや、扉に使われる開閉を支える器具……」
 ダメってば、聞かないで。

「そのジョークはウケないですね、あるじ?」
 幾つかの書類を抱えたリリティスさんがいつの間にか来ていた。

「番いと蝶番、確かに名称の由来は、蝶が雄雌番いでとまっている様子に、金具の形を見立てたものだそうですが、一口に番いと言えば、雄雌ペアの事を言うのでは?
 で? 番いがどうなさったんです?」

 どうやら、シーグの爆弾発言は聴いていなかったらしい。

「いや、なんでもない。聞き違い、あるいは、彼の勘違い、かな?」
『勘違いじゃない! 俺は、シオリとずっと一緒にいる、離れないしそばにいると、守ってみせると約束した! シオリは俺の番いなんだ!』
 まだ言うシーグを、カインハウザー様は困惑の眼で、リリティスさんは微笑んで生温かい眼で見る。

『嘘じゃねぇ! 妖精王も立会人なんだからな』
《まあ、その場には居たケド》
 サヴィアンヌは蝶の姿のままで表情は判らないけれど、声は、あまり同意したくなさげだった。

「まあ、そうなの。よかったわね。女王陛下が立会人なら、妖精達も祝福してくれるわねぇ」
 リリティスさんは、幼稚園児の「ボク、大きくなったら○○ちゃんと結婚するんだ!」に対する保育士のお姉さんのような生温かい言葉をかける。
 確かに、こういう台詞には、否定的な言葉を投げると拗れるのかもしれない。

「おう。俺が傍にいて、必ず幸せにしてやるんだ」
「あら、羨ましいわ」
「すまないが、狼の一族は一夫一婦制だ。例えつがいが失われても、生涯つがいに心は沿うものだ。アンタにもアンタのいい人が見つかるさ」

 キリッ

 本人はいたく真面目に答えたのだと思う。
 でも、カインハウザー様は眼を落っことしそうなほど見開き、リリティスさんは鳩が豆鉄砲喰らったような表情で固まり、サヴィアンヌは、堪えきれずに吹き出した。

《ぶぷっ》

 その笑いは、シーグに向けられたものなのか、リリティスさんに向けられたものなのか。
 私も、カインハウザー様も、問いただしたりは出来なかった。

「残念だわ。私も、誰か一途な人が現れてくれればいいんだけど」
 ニッコリ返すリリティスさん。一応、特にこれといって引き攣った様子はない。



「え~、そろそろ本題に入っても?」
「ど、どうぞ。カインハウザー様もお忙しいでしょうから」

 咳払いをし、テーブルにつく面々。

 カインハウザー様のご用は、今後、私が精霊に好かれる体質とどう向き合っていくか、美弥子達が活動を始めた以上、私は、今まで以上に目立つ訳にはいかない事などの、相談だった。

 実は、最近は前ほど野放図に精霊が群がったりはしない。
 それは、約束事を取り決めたから。
 精霊達みんなは、世界を営む大切な存在で、私にばかり構っていては、自然界──動植物の生命に関わる場合もあるので、当番制で少しだけがそばにいる事になったのだ。

 カインハウザー様に習った精霊達の労い方、『魔力を少しだけ分けてあげる』を、お手伝いしてくれた精霊に行うようになると、私のまわりは集まった精霊で、某天空の城の竜の巣のようになって積み上がってしまったので、カインハウザー様が交渉してくださったのだ。

 それでも、時々通りがかりの精霊達が寄ってくるので、精霊を視る事が出来る人には、何事かと気をひいてしまうだろう。

「これから収穫祭の時期に向かって、手の空いた者達が、巡礼に出る事が多くなる」

 ここ数年、瘴気・魔属の侵食が増えて不安な折、神々の主神殿をまわる大巡礼に出る人も多くなっていて、山頂の大神殿に訪れる巡礼者も次第に増えるとかで、このままでは、いずれ誰かの話題に上ってバレる可能性もあるという。

「一番いいのは、シオリから漏れる精霊達が好む魔力や霊気を抑えて、群がる精霊の量を抑えること。その辺の、精霊の加護を持ったちょっとだけ魔力の大きい町娘を装う。その暗褐色の髪も、明るい色に変えた方が」
「染めるんですか?」
「染める必要はないよ。明るい髪を暗く染めるのは楽だけど、明るく染めるのは、うまく染まらないだろうし。わたしの花冠と同じだよ」

 お屋敷の中ではコサージュだけで花冠は外していらっしゃるけれど、街の外に出る時は、私の作った花冠をどこかに装備している。頭上に乗せるだけだったり、背負った荷物に飾ったり。
 でも、光の精霊の魔法で光を屈折させて、外からは見えないようにしている。
 勿論、リリティスさんの腕輪も。

「当面の訓練は、ダダ漏れの魔力、霊気を抑えることと、光の精霊と契約して、髪の色を違って見えるようにする事、だね」

 カインハウザー様は、子供の宿題を出すかのように気軽に仰られるけれど。

 難題……な気がした。





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