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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
113. 光の精霊はお花畑がお好き
しおりを挟む《綺麗な艶髪じゃないの》
なんとか、言葉を交わせる光の精霊達は、カインハウザー様のお屋敷の庭で、花壇を守護している人型の上級精霊。
でも、彼らは、お屋敷から離れたくないらしい。
《私は、リリティスの先祖と、この地を護ると約束したからね、君と新たに契約して、ついていく訳にはいかないね》
「そうですよね」
私は、カインハウザー様と同じく精霊に好かれるけれど、実は、契約した子は一人もいないのだ。
「精霊と契約ってどうやるんだろう……」
ラノベや漫画だと、何かをあげたり、名前をつけるってのがよくあるけど、こんな立派な精霊に、私が名前をつけられるとは思えないし。
《あなたのその髪、ツヤがあってとても綺麗じゃないの。他の人にはない色よ》
「そう、他の人と違うから同じにしたいの」
《勿体な~い》
《止めとけば? そのままが可愛いわよ》
この地から離れないという、リリティスさんのご先祖の姿を映した精霊以外のみんなも、乗り気ではないみたい。
後、交流のある光の精霊は、田んぼの向こうのお花畑で、瘴気の恐怖に打ちのめされた妖精達を癒すために頑張っている。
勿論、彼女達も、そのままの私がいいと言うだけで、契約してはくれそうになかった。
シーグは、私の番い宣言の後、屋敷内でシーグを撫でたいと言うメイド達を断り続け、小屋に戻った時に、リリティスさんにだけ少し撫でることを許す程度で、そのキッパリとした態度が、また乙女達の心に響いたらしい。人気はうなぎ登りだった。
いわく
「自ら番いと決めたフィオリーナ様だけに許すその姿勢と、一途な眼差し。格好いいわ」
とのこと。
屋敷の中でも街でも、小屋の中でもずっと狼の姿のままで、あの日みた青年の姿は気のせいだったのかと思うほどだ。
あの場に居たサヴィアンヌ、アリアンロッド、サヴィアとその他の精霊達以外、誰も、人間で、彼が幾つもの姿を持っているとは知らないままだ。
「今日も、誰も、契約してもいいって言ってくれなかったね」
本当に精霊に好かれるのか、不安になってきた。
私の望みを叶えるために、無茶したり暴走気味に動くという話はどうなったの?
『明日も畑や林に行くのか?』
「うん」
ムームーのような、頭から被る長い貫頭衣を寝間着に、ベッドに入る。
毛布を肩まで引き上げると、シーグは、お座敷犬のようにベッドに上がってきて、私の足元に、クロスに組んだ前脚に顎を乗せて横になる。
その巻いたお尻尾に、小さくなったサヴィアンヌが腿に凭たれるように埋まり、頭をシーグの背に乗せて、以前言っていたように、本当に、布団や枕にして休む。
妖精って眠る必要あるのかしら?と思ったけど、純粋な力の存在である精霊と違い、妖力と精気、森や地など属する性質の霊気を形にした幽体のような身体を持っていて、世界のマナや精気に反応して可視化・実体化するので、精霊眼を持っていなくても視える人は多いし、触れる事も可能である。
《それなりに、疲れたりするシ、寝ぼすけな種族なら、何年でも寝ちゃうワヨ》
……だそうだ。
言葉を交わせない基礎精霊達と、カインハウザー様はどうやって交流しているんだろう……
カインハウザー様とリリティスさんの花冠を不可視化しているのは、人型の精霊でも、カインハウザー様が契約している精霊でもない。
ただその辺に居た精霊に、花冠を盗られなくないから、見えなくして欲しいと言っただけだった。
精霊に話しかけるために、眼や脳の奥に魔力や霊気を集中させるので、この所すぐつかれるのだ。
布団に入るとすぐに、意識は遠い夢の世界に行きかけている。
リリティスさんに聞いただけで見てないけれど、さくらさんは、光の精霊と契約していて、小さくて蛍のようなものだけれど、それなりに力を持っていたとの事だった。
その精霊の能力を、美弥子とさくらさんで増幅して、あの辺り一面を浄化したのだという。
そんな力、私にはない……
やはり『聖女』の美弥子や『巫女』のさくらさんとは、私は違うのだろう。
明日は、何か、進展があるといいな……
*******
「シオリは、苦戦しているようだね?」
「ええ。精霊と契約出来ない、髪の見た目を変えて貰えないと嘆きつつも、精霊達の元へ日参しているようです」
精霊を視る事が出来ないリリティスには判らないが、シオリのまわりには、常に精霊がいる。
女神の祝福を持つ上、彼女自身の霊気や存在値が綺麗で、精霊達の気をひくのだ。
それは『聖女の再来』と言われた母の何倍もの量で、視る者がみれば、息苦しさを感じるほどだ。
馴れていないシオリは、敢えて視ようと意識しなければ、そばで声をかけてくる数体の精霊にしか気づかないようだが、彼女の頭上に堆く巻き上がり、まるで真夏の積乱雲のようだ。
「態々意識してはできないようだが。咄嗟のお願いは出来るのにね」
その辺りに気がつけばすぐだろうに。
「意地悪してないで、可愛い弟子にお教えすればいかがですか?」
ため息をついて、批難がましくこちらを見るリリティス。
「こういう事はね、まわりがどうこう言うより、本人が気づいて、身体で覚える方がいいんだよ」
「間に合えばいいですけどね」
確かに、巡礼者が増えてきたし、そろそろ愛し子ではないかという噂は立つかもしれない。
収穫祭──シオリの成人の祝いまであと少し。
間に合わなかった時の事も考えておかねばな。
我先にシオリの就寝を報せんとする精霊達がたくさん室内に飛び込んでくるが、視えないリリティスには、風が出て来たな、くらいにしか感じられないようだった。
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