異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

95.収穫祭⑤晴

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 この街でずっと暮らす。お嫁に行っても? ここに?

 私は、この世界のことに慣れて、シーグと仲良くなれたら、サヴィアンヌに静かな人里離れた場所を見繕ってもらって、二人で遠くへ行くつもりだった。
 少なくとも、美弥子の話が耳に届いたり、大神官達の目に入らない所へ行くつもりだった。今も。

「いつものように、即答で「勿論です」とは言ってくれないんだね」

 ギクリとした。見透かされている気がする。いや、本当に見抜かれているのかも。

「この国の習慣に慣れて、人前に出ても目立たなくなったら、シーグを連れて、もっと人目につかない場所に行くつもりでした」
「うん。必死に溶け込むために色々頑張ってたね」
「ここは、大神殿から歩いても一日の距離で、美弥子達からも大神官からも、何かあれば目につく場所です」
「そうだね」
「それでなくても、異国ヽヽから来たと判る日常的なことの認識の違いや、明らかに目立つ髪は、どうしたって隠せませんし、昨日みたいに、何かあれば僧兵に追われたり睨まれるんです」
「わたし達では頼りにならないかな」
「そんなこと! ⋯⋯そんなことないです。昨日だって皆さんに助けてもらいました」
「シオリちゃん、申し訳ないとか迷惑かけてるとか、そんなこと考えて遠慮する事はないのよ?」
「リリティスさん⋯⋯」

 いつの間にか、ここで暮らすことを楽しいと、幸せだと感じていた。最初は、あんなに帰りたいと思っていたのに。
 もっとも、帰ったところで両親もいないし、美弥子とあと五年は気まずい生活をしなくてはならないけど。

「ここでの暮らしが楽しいと、幸せだと少しでも思ってくれるなら、それが、生まれ育った地に帰りたいと願う気持ちより大きくなっているのなら、帰らなくても誰にも支障がないのなら、知る人のいない遠くへひとりで行くよりもここで、私の領民になってくれないかな?」
「その、あるじが発行した割り札(身分証)は本物だから今も領民だし、もちろん、どこかへ引っ越しても有効よ。でも、出来れば、ここで今まで通り暮らして欲しいわ」

 カインハウザー様も、リリティスさんも、無理して言ってる訳でもないだろうし、私の精霊に好かれる体質を利用したくて言ってるのでもないとも思う。

 判るけれど、ここは、大神殿に近すぎる。

「おそらく、ミヤコ達は近い内に王都に行くことになるだろう。この参道とハウザーを浄化して、慣れてきたのもあるだろうし、公表しても大丈夫だと確信も持っただろうからね」

 今後は、王宮でもてなされ、懐柔されて、王都を中心に、人の多いところと主要都市から順に、浄化してまわる事になるだろう。
 カインハウザー様はそう言って、私道から街に出ると、収穫祭を祝う領民たちに笑顔を振りまき、気さくな若き領主になった。

 街の中心にある大広場に人がたくさんいて、ちょっと低めで大きな、盆踊りの太鼓櫓たいこやぐらに似たお立ち台が設置されていて、若い男女が数人立っていた。
 男性は全員空色のスカーフを首に巻き、女性も肩にストールのように広げてかけていた。
 また、全員が、月桂樹に似た葉の冠を被っており、ところどころ白絹草しらぎぬそう姫鈴草ひめすずくさをあしらっていて、とても誇らしげにしていた。彼らが、今年成人する若者なのだろう。

玻璃はり梼薬樹とうやくじゅに似てるけれど、あれはリンドの木だよ。例の花畑のそばの林にいくつか生えていただろう?」

 リンドの木は、葉の形や色合い、木全体的な佇まいも、玻璃はり梼薬樹とうやくじゅに似ているけれど、エルバレオに比べると、リンドの方がギザギザの切れ込みが細かく入っていて、葉の縁取りや形も似ていながら、大きさや柔らかさ、匂いなどが微妙に違う。

「フィオリーナ嬢!」

 んん? どこのお嬢さんを探しているの?って思ったけど、私のことだよね。キーシンさんとロイスさんが駆け寄ってきた。

「フィオリーナ嬢、成人おめでとうございます」
「本当はあと八日あるけれどね。ありがとうございます」
「フィオリーナちゃん、これ⋯⋯」

 ロイスさんが差し出したのは、三鈴トリリーンが棲んている、私の編んだ白絹草の花冠! それをカインハウザー様が受け取り、私の頭にのせた。

《シオリ!! ワタシもう元気になったノヨ。一鈴ヘンリーン二鈴ジリーンもヨ。シオリのおかげダワ》

 花畑の瘴気を祓ったのも、闇落ちの残骸を滅したのも美弥子だし、その後、傷ついた三鈴トリリーン達を癒やしたのは、領主館の花畑の花や土や水、光や風と、それらの元素精霊や精霊達と、花畑を提供してくれたカインハウザー様だろう。

《それらが助けてくれる機会をもらえたノハ、シオリが瘴気の成長と行動を著しく低下させ、縫い付けたおかげで、それが間に合ってなければ、自分たちはこうしてここにいないから、シオリのおかげナノヨ》
 そう言って眩しい笑顔で喜んでくれる。
《15度目の秋、おめでとう! 成人してもよろしくね》

 カインハウザー様が台に上がり、隣に立っていたわたしも背を押されて台に上がらされる。リリティスさんが、空色の大判スカーフを持ってきて私の肩にかけてくれた。

「親愛なる、ハウザーの領民達! 本日は素晴らしい天気に恵まれて、皆の働きに精霊達も喜んでいることと思う」

 カインハウザー様の、高過ぎず低くない、柔らかい伸びのある声が、拡声器も使わずに、高らかに宣言した。


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