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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち
94.収穫祭④祝
しおりを挟む食事も済み準備を整えてカインハウザー様と屋外へ出ると、素晴らしい景色が広がっていた。
「わあ⋯⋯」
「壮観だろう?」
「はい!!」
冬が近い秋とはいえ、もうすっかり太陽は顔を出していて、秋特有の高く済んだ空は、見た事もないくらい綺麗な薄空色で、光の精霊や光霊達が一面に飛びまわり、キラキラしていて、カインハウザー様の青銀の瞳のようだった。
空が抜けるように冴え渡って、光の精霊達が踊って祝福してて、色味も優しさも、まるでカインハウザー様に温かく見守られてるみたい⋯⋯
「褒め過ぎかな? わたしはそんなに出来た優しい人間ではないよ」
「えっ? あ、いえ、そんなことないです! カインハウザー様の保護とお心遣いがあってこそ、私は今生きていられますから」
恥ずかしい。口に出してたのね。それとも、これだけ精霊も妖精もたくさんいるから、いたずらっ子が、カインハウザー様に聴かせたのかしら。
「これから一週間、次の聖の日まで、そのかしこに精霊と妖精が溢れているから、いたずらには気をつけるようにね」
「はい」
やっぱりそうなのね。
今も、誰かが、せっかくセットしてもらった髪を引っ張ってるの。
「ああ、ほら、言ってるそばから⋯⋯ 君達、申し訳ないけど、今日はシオリは成人儀礼の主役なので、髪には潜るだけで引くのは遠慮してもらえるかな?」
優しくお願いして、いたずらピクシーを払うと、困った子を見る目で微笑み、妖精達の引っ張って曲がった髪飾りを直してくれる。
「たった二週間会わなかっただけなのに、すっかり娘らしくなったね」
子供の成長を見守るお父さん──いや、妹を見守るお兄さんかな──みたいな目をして髪をなでて整えてくれ、滑り降りた手が頰に添えられる。
ものっすごく居たたまれませんが!!
大人になったみたいに見えるのは、華奢なレースの飾り襟付きのワンピースと、ハーフアップの髪と、宝石(イミテーションだよね!?)のついた髪飾りと、薄化粧のせいですから!
頰っぺ熱いし、絶対真っ赤になってる! ここは他の地にくらべて精霊も多い街で、カインハウザー様の館だもの、思慕の精霊もいるかもしれない。バレちゃう!! 動揺してるの、伝わっちゃうよ!
くすくすと、笑みをこぼして頰に添えられた手を離すカインハウザー様。
「そんなに緊張しなくても、他の新成人達と一緒に祝ってもらうだけだよ。何かしろとか、祝辞への答辞を返せとか言わないよ」
そういうの、苦手だろう? そう言って微笑むカインハウザー様に手を引かれて、街への坂を下り始める。
《おめでとう》
《あなたが無事、そのままあなたのままで大人になってくれて嬉しいわ》
《これからも、この街とセルティックを、花を樹を、世界をよろしくね》
《あなたの行く手が素晴らしい光と共にあることを》
《花が咲き綻ぶように、あなたも愛を夢を花咲かせますように》
行く先々で、精霊達が妖精達が、歓びを伝えてくる。
なんだか、歩いてるのにふわふわと浮いてるような気がする。
ダンスなんか出来ないのに、このまま踊れそうな気すらする。
北と南の城門近くで祝砲の代わりの精霊達が打ち上げられ、その精霊たちが、街中に祝福を振りまいていく。
「シオリがいてくれるおかげで、いつもより精霊達の機嫌がいいね。君の言うキラキラが、例年になくたくさん降り注いでいるよ」
「いつもこうじゃないんですか?」
「もちろん、わたしもそこそこ精霊に好かれているからね、だいたいこんな感じだけど、彼らの歓びが、いつもより大きい。今年は、まだまだ彼らの祝福が増えるんじゃないかな」
私がいることで、精霊達が活性化して、街が潤うなら、私がこの街にいる意味はある?
「そうだね。どこにも行かないで、たとえお嫁に行っても、ずっとそばに⋯⋯この街にいてくれるかい?」
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