異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

119.夢も見ないほど深く眠る

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「君は人気者だよ? 明日で成人だろう? 今に求婚者が列を成すよ。だが、それはめぐだからじゃない。シオリ。君だからだよ」

 カインハウザー様はそう言って私を縦抱きに抱え上げ、シーグとシーグ②が ダッシュ 「あっ!」と声を上げたけど取り合わずに、ベッドまで運んだ。

「ゆっくり眠りなさい。色々考えてしまうなら、女王陛下の安眠の魔法をかけてもらってでも」
《いいワヨ。なんなら、心が癒えるまで眠り続けるやつデモ》
《シオリ、そばにいるから。ゆっくり眠って?》

 サヴィアンヌとフィリシアがベッドサイドに集まる。半透明になるほど存在値が希薄になったアリアンロッドが、添い寝のように身を寄せてきた。

「そういえば、アリアン、無理をしたのね? こんなに薄くなって⋯⋯」
≪ケッコ、手強かっタ・身の内からわく分身、強いの仕方ない≫
「? 身の内から涌く?」
「あれは、人に好かれたいと嘆くシオリから生まれたものだ」
「ィグナリオン!!」
「隠しても仕方ない。自覚してもらった方がいい。精霊に働きかけられる強い感応力と魔力を持っている者の感情の揺らぎの振れ幅が大きいと、負の感情のこごりやけがれを生み出す可能性があると学ばなくては。知らずに生み出したらいけない。シオリは、気を強く持たなければならない」

 私を介さず、単体で光の霊気を扱った負担が、アリアンロッドの存在値を希薄にさせたの?

「ィグナリオン。今は⋯⋯」

 いつもははっきりと言うカインハウザー様が、気を使っているのか更に穢れを生むことを心配しているのか、シーグを止めようとする。

「シオリを介さなかっただけでなく、大地からマナをとらなかったために、光霊を光の槍にするのに自分の中の霊気で無理やり押さえつけたから消耗したんだ。元に戻るには、シオリが健康になって、アリアンロッドに健康な霊気や魔力を与える必要がある」
「シ⋯⋯」

 人型のシーグに呼びかけそうになって抑える。

 私が美弥子に会った動揺から穢れを生み、私から生まれたソレを私から派生した合成精霊のアリアンロッドが滅するために、私か 同じもの ら生み出されたもの同士で効果が低いから、私を介さずマナを使えなかったから、無理をしたアリアンロッドが希薄になってる?

「そうは言っても、負の感情を持つな、常に感情をコントロールしろと、冷静に平常心を保てと言われても急には出来ないだろう。とにかく、今は、考えすぎるな。休めなさい。やはり、女王陛下、何も考えない眠りを」
《ソウネ。それで解決するトハ思えないケド、今は休めたほうがいいワネ。一度、精神状態をリセットした方がイイワ》
「サヴィアンヌ、待って⋯⋯!!」

 虹色の蝶になって光の鱗粉をまきながら、ぐっすり眠ってネと言う。その妖精魔法の力に抗えず、意識が遠くなっていく。

 最後に見た、悲しげなィグナリオンと、苦い物を堪えるような表情のカインハウザー様は、なぜ、穢れを生んだ私を責めたりしないのか。穢れは瘴気になって、人や獣を闇落ちの魔怪と変えて、世界を呑み込む、必ず無くさなくてはならないものなのに。

 アリアンが必死に、そばにいるからちゃんと寝てくれと縋るので、手に魔力を集めて、撫でてやったのが最後の記憶。
 そのまま、眠ってしまったらしい。


* * * * * * *


 翌朝、目覚めると、ベッドの上、足元にシーグ②が ダッシュ 丸まって眠り、その尾にサヴィアンヌが埋まっているのが見えた。
 枕元のベッド枠に、フィリシアが座っている。

《おはよう。よく眠れた?》
「ええ。昨日、アリアンを撫でてる所で意識は途切れたみたい。撫でてたのに気がついたら今、フィリシアを見上げてる感じよ」
《よかったわ。昨日より顔色もいいし、霊気も安定してる。夢も見ないほど眠れたのね》
「そうみたい。身体だけじゃなくて脳もぐっすり眠ったのね。なんにも覚えてないわ」

 身を起こした私の横に、アリアンロッドが転がっていて、身をすり寄せ、膝に頭を乗せてきた。

≪シオ、ひとりで・泣かないで・アリアン、居る。サビ、シグ、いる。セル、味方、そば居てた、ずっと≫

 フィリシアの顔を見ると、頷いた。昨夜、遅くまで、シーグとカインハウザー様は、眠る私のそばにいてくれたらしい。

 腕時計を見ると、7時だったから、ここでの時間は6時という事だ。いつもより寝過ごしたな、と、身体を起こす。
 昨日は震えていたけれど、今日はしっかり立ち上がれた。

 今日の精霊祭のためにメリッサさんが作ってくださった、フリルとレースの可愛い白の可憐なドレスを身に着け、王宮女官のケープを羽織り、フードをしっかり被って、小屋を出た。

 アリアンロッドは小さくなって、ケープの内ポケットに入り、サヴィアンヌも蝶になってケープにとまる。
 
 領主館では、今日の精霊祭のために、精進料理のような、潔斎食を用意していた。
 毎年、この精霊祭の食事は、どの家庭でもこうした物を摂るらしい。

「シオリちゃん、もうよくなったの? 倒れたって聞いたわ」
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」

 調理場のキッチンメイド達も、下拵えをしながら、昨日は昼も夜も、食事に顔を出さなかった私を心配して、気遣ってくれた。

 リリティスさんいわく。今日の精霊祭の目玉は、日々世界を営む精霊への感謝と、妖精達の齎す恵みへの喜びを伝えるもので、カインハウザー様やロイスさんを始めとした、精霊に好かれやすい人達が精霊と交流して、視えない人達にも見えるように可視化させて、人と精霊とを交えて喜び合うのだという。

「シオリちゃんは、めぐだから、きっといつもより盛大になると思ってたの。本当に大丈夫?」

 そんなめぐが要になる行事と聞かされて、欠席する選択肢はない。

 今日で最後だから、頑張ろう。そう思って、潔斎食の並ぶテーブルに着いた。



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