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【萌々香 Ⅱ】
📵5 見習い巫女達と魔法士
しおりを挟む夜明け前、空が白んできた頃に鳥達のドーンコーラスで目が覚める。
日の出までまだ間があるけど、木戸の窓を開け、虫除けの薄布を張った金網を填め込む。取り外せる網戸みたいなもんかな?
ただの虫だと思ってると、毒を持っているものだったり、蟲型の魔物だったりするので、この網は必ず填めなくてはいけないらしい。
窓の横に打った釘に掛けてある作務衣みたいな作業着に着替える。今日も、昨夜の内に水や風、光の精霊達が綺麗にしてくれている。
共同の水場で顔を洗い、化粧品なんか無いけど、緑色の蛍火(たぶん精霊)が停まって知らせてくれる草の汁を桶の水に搾って肌にはたくと、美容液のような効果が得られる。
一度に使い切れないので、見習い巫女さん達にもお裾分けする。
私がみんなと一緒に顔を洗った後、桶の水に草の汁を搾っているのを見て興味を示した巫女さんに勧めたところ、口コミで拡がったのだ。
不思議なことに、同じ草を他の人が搾っても、美容液のような効果は出ない。
たぶん、精霊の好意で、私が積んだ草にだけ、祝福とか魔法とかがかかっているのだろう。
上級巫女さん達は、個室に水を汲ませて身仕度を調えるので、私が化粧水を提供している事は知らないらしく、精霊ネットワークによると、美土里の祈る恵みの含まれた食事の効果で、見習い達は10代の若い娘だから顕著に肌のコンディションが改善されたのだろうと思っているらしい。
まあ、いずれ誰かが口を滑らして勧めるか、お姉様方から訊いてくる事があれば分けてあげるけど、言葉が通じない設定なので、こちらからは声をかけない。
魔道具の技師さんと薬剤魔法士達が作業をしている工房で、下仕事や魔道具を動かす訓練を受けるための準備に入る。
基本的に西洋人っぽい外見の人が多いけれど、中には東欧、西・中央アジアっぽい外見の人も居る。
評議員達や聖騎士達が使うための高価な魔法薬を調合する魔法士のお兄さん─周りの人はマクロンと呼んでる──が、破顔して片手を上げる。
おひげはないけど、なんとなく竹野内豊に似てる気がする。この近辺の出身じゃないのかな?
どうやら、あの人には、私の周りにいる精霊達が見えているらしい。魔力操作の才能があり、優秀な魔法士だと、彼に憑いている精霊が自慢するらしい。
ここで私に愛想がいいのは、見習い巫女さん達と彼だけだ。
憑き無しは、無能力者として貶まれるらしいから。
民間人でも、弱くても精霊は憑いてるものなんだそうだけど、まだ、町や村には行ったことがないし、精霊は声が聴こえるだけなので、『月无』の私が行っても面白くないかもしれない。
夜灯りをつける魔道具も、水を溜めておいて椀に注ぐポットみたいな壺の魔道具も、ピクリとも動かないけど、動け~動け~と念じてみるその数時間後、やっと美土里達と朝の食事だ。今朝は何かな。
❈❈❈❈❈❈❈
※ドーンコーラス 夜明け前に鳥達が一斉に鳴く事
日照時間による体内時計が内分泌系に作用して雄性ホルモンの分泌を促し歌いたい気持ちにさせるのだそうで、夜明け時はメスがもっとも受精可能な時間帯らしいので、そのタイミングでメスを呼ぶため、熱心にラブコールするのでしょう。
また、夜明けに誰よりも早く歌い始め、長く歌うオスほど多くのメスを射止め、婚外交尾にも成功し、より多くの雛の父親にもなれるとか⋯⋯𓅪𓅪˒˒💕イイノカネ?
参考資料『歌う鳥のキモチ』(石塚徹著/山と渓谷社)
次話
📵6 異世界のイケメン俳優?
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