聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
107 / 163
自由民ギルド ロックウェル支部

⛔7 雄大且つ優美な青碧

しおりを挟む


 高二の16歳の夏休みのある日に異世界へ喚ばれた。

 聖女となるべき巫女として召喚されたにも拘わらず精霊の守護を得られなかった『月无憑き無し』と見做され、下働きをさせられたり、高い魔力を利用しての魔物退治のおとり(餌)にされて、憔悴しきって逃げ出した。

 辿り着いた街で自由民と呼ばれる冒険者のような何でも屋をしながら暮らし始め、果物採集のため登山した山頂付近のカルデラ湖で、噂の星竜に話しかけられた。

 この声は、どこから?

 ううん、わかってる。この、湖の中に沈んでいる巨大な物体が、星竜なんだろう。それこそ、ちょっとした建造物より遥かに大きい。
 頭の中に直接話しかけて来るけど、身体は眠ってるのかな? 冬眠? 夏だけど。

『そうだな。冬眠とは違うが、常にここで休眠している。この身体が活動すると、多くのマナを消費するからな』

 そう言いながらも、湖の真ん中に沈んでいた巨大が身動ぎする。

湖面が盛り上がり、すぅっと、思ったよりも静かに、いかにもザ☆ドラゴンって姿が湖水から現れ、オパール色に輝く蝙蝠のそれのような形の翼を広げる。
 羽ばたかなくても、その翼の周りを踊る風霊達と自身の魔法で浮いているらしく、その場に静かにホバリングしている。

 全身は真珠色。ゆっくりと開かれた双眸はオパール色の瞳。

 恐竜やゴジラを思わせる海イグアナのような凶悪な爬虫類の顔ではなく、すっとした優しいブルーイグアナのような顔である。喉下の袋デューラップは目立たない。

『特に、威嚇したり興奮を表す必要はないからな。喉袋も発達する必要もないのだろう』

 そりゃそうか。こんなに大きなドラゴンなら、態々わざわざ威嚇しなくても刃向かおうとする者は居ないだろうし、ずっと休眠しているのなら、興奮を表に出すこともないだろう。でも⋯⋯

「こんなに強そうでカッコよくてきらきらと綺麗なのに、独りで寝てばかりじゃ寂しくないの?」

 ドラゴン⋯⋯星竜と、隣に立つガヴィルさん、キミカさんの息をのむ気配がした。

「そ⋯⋯ 星竜様は、そういうものだとしか考えてなかったわ」
「確かに雄大且つ優美で、この上ない存在だからな」
「でも、言葉を解さない野のトカゲだって、独りじゃ寂しいと思うだろうに、精霊とも人間とも会話出来る、たぶん、長生きな分賢くて知識もありそうなのに、誰ともお喋りしないでずっと寝てるだけなんて、私なら寂しくて死んじゃうわ」

 周りと見た目が違うから──銀に近い淡い金髪を白髪と後ろから指され、光が当たらなければ黒っぽくて目立たないけれどひとたび光が入ると深いあおの瞳はガイジンと呼ばれ、肌が白いのでより朱く見える唇は口紅をしていると陰口を言われ、他人とあまり拘わらないように生きて来た独りで過ごすのに慣れた私でも、家族や美土里みどりが居なければ、とうに寂しさに自死を選んでいたかもしれない。

 人には想像もつかない永い時を独りで過ごすなんて⋯⋯

『十年以上経っても汝はうぬ※ 変わらぬな、萌々香ももか



 ❈❈❈❈❈❈❈

うぬあるいはなれは、今は罵倒する時の相手に呼びかける意味合いで使われますが、平安以前は、誠意を含んでの(上下関係で同等か以下の)呼びかけに使われる言葉だったので、ここではそちらで(親しみを込めての対等な相手への古語で)受け取ってください。



 次話
⛔8 木の実豊穣の地は禁足地?
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...