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心を守ってくれた優しい人
🚫8 新しいお父さんが出来ました
しおりを挟む自由民協会の建物の外に出ると、イサナさんの足元に、光る魔力で出来た魔法陣が描かれる。
え? 騎乗って言ってたから、馬とか飛竜とか、何かに乗るんだと思ってた。
「殿下。モモカを王城にお連れするのですか?」
ガヴィルさんが連絡したのか、マクロンさんの帰国に合わせてやって来たのか、アディライトさんが来ていた。
「そう。前々からの約束だからね」
「約束? 一応、異界人は監理局で保護し、人物を見極めながらこの世界の常識を教える決まりです」
マクロンさんと何か約束したっけ?
はてなマークをいっぱい飛ばしている私を素通りして、マクロンさんとアディライトさんの会話は続く。
「萌々香は特別だよ。人物は今更見極める必要はない」
「殿下。特例をひとつ認めると、次々と、今後規律が守れなくなる恐れがあります」
アディライトさんの言い分はもっともだ。私もそう思う。
「言っただろう? 萌々香は特別だよ。過去に一度星竜の眠る湖に現れて、星竜の守護を得た後に元いた世界に送り返された唯一の存在だ。
本来はこの後3年後に再び星竜の元を訪れる予定であったが、評議国で行われた成功するはずもない異界人召喚術の儀式に、偶々わたしが居合わせたせいで萌々香を守護する精霊達や星竜の加護が反応してしまった。
これは、わたしの責任だ。本来の約束より早く来てしまったが、今は、送り還せる条件が揃っていない事もあって、このまま十二年前の約束のまま手元に置くことにする。いいな?」
「十二年前の約束、ですか⋯⋯ そう言うことであれば仕方ありません。モモカには、早々にセイル竜王国の戸籍を用意します」
「今すぐにとは行かないのですが、それでもお連れするのですか?」
上司で局長の背後に控えていたガヴィルさんが、食い下がるように訊ねる。
そりゃそうだよね、まだ保護観察中なんだもん、用意してないよね。
「ノーマン救済監理局長。萌々香の戸籍に記載する身元引受人を、ガヴィル・オーウェンにして、続柄は養父にしろ」
「「は?」殿下、自分はまだ独身ですが⋯⋯」
目が点になってるガヴィルさん。私もなんで?って思う。
歳は、そんなに離れてない。34歳のお父さん? 実父なら17歳の時に産まれたことになるやん、16歳で出来た子か?
「まあ、山林地帯の集落や農民なら15~6歳で結婚もあるし、ガヴィルは40男にも見えなくもないから一見おかしくはないかもだけど、なんでまた?」
「局長、自分の事、そんな風に思ってたんですか⋯⋯」
アディライトさんも首を傾げる。ガヴィルさんはショックを受けてた。
「萌々香は随分とガヴィルに懐いてたようだからな。この先も何かあれば心の支えになるだろう? 養父として絆を縁しておくのもいいだろう。かなり頼りにされていたようだし、わたしが替わりたいくらいだが、生憎わたしはまだ二十歳の若輩者だからな」
⋯⋯⋯⋯なんと言っていいのか
「ガヴィル、あなた、モモカに何かした? 殿下が警戒するような」
「まさか。そんな事はないはずだが⋯⋯ 精々、頭を撫でたり誉めたり叱ったりしたくらいだぞ」
「オーウェン監理官。星竜の加護を持つ特別な少女の父親になれるんだ、喜べ。
ノーマン救済監理局長。なるべく早く手配しろ。
イサナ、いいぞ。帰城する」
「仰せのままに、我が君」
凛々しい女性のような綺麗なお顔で、イサナさんが微笑み、立派な長杖をトンと地に打ち付けると、魔法陣の輝きが強くなり、周りの景色がよく見えなくなった。
次話
🚫9 美人姉弟
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