聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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心を守ってくれた優しい人

🚫9 美人姉弟

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 目をぎゅっと瞑ってから瞬きすると、だんだん明るさに慣れてくる。

 目映い輝きのシャンデリア。キラキラしてて本物の宝石を使ってそう。

 唐突に、室内に居て、驚きのあまり声も出ない。
 瞬間移動って、ゲームでもある程度成長しないと使えない魔法だったり、ファンタジー映画や小説でもほいほい使えるものじゃない場合が多い。
 イサナさんって、凄い魔法士なんだな。
 そう言えば、アディライトさん達の会話で枢機卿って言ってたっけ?(第三章 🚷23 マクロンさんって竜王国の人? 参照)
 枢機卿って、あっち • • • じゃ偉い地位──教皇の補佐とか最高顧問とかの事を言うよね? 精霊達の精神領界共有魔法での飜訳が意訳で、該当する役職がなくて近い言葉を当ててるだけだとしても、やっぱ凄い人なんだ。

 さく⋯⋯

 足元にはふかふかの足が沈みそうな絨毯、目に優しい乳白色の壁、温かみのある木の家具。北欧家具に似てて、お父さん側の祖父母の家を思い出す。

「気に入ったかい?」

 私が家具をじっと見ているのに気づいたマクロンさんが訊いてくる。

「父の、実家の伝統家具に似てるの」
「そう。却って里心がついてツラくなるのでないなら、馴染みのある物の方が心地良く暮らせるだろう。萌々香ももかの部屋に使う家具はみなこの作家の物にしよう」
「いいの?」

 こういう手のこんだ、おしゃれなカーブを描くデザインに彫刻細工が繊細で緻密な家具ってお高いよね?
 あ、いやいや、そうじゃなくて、なんで、一緒に暮らすこと前提になってんの?

「⋯⋯もしかして、萌々香ももか、まだ解ってないのかな?」
「おそらくは。竜のいない世界に育った者には思いも寄らないのでは?」
「そうか。いつ気づくか楽しみにしたい気もするが」

 マクロンさんとイサナさんが、私にはわからない話をしていると、ノックがあり、扉が開かれる。

「セフィル、帰っているの?」
「母上。ええ、ただ今、戻りました」
「姉上、知らせが遅れ申し訳ありません」
「いいのよ。この子の事だもの。思った時が帰る時、予定なんてあってなきが如しでしょう?」

 柔和に微笑む美人。西洋人にも東欧人にも見える、やや濃いめの、化粧を必要としない造形美。
 年の頃は三十そこそこに見えるけれど、さっき二十歳だと宣言してたマクロンさんのお母さまと言うのなら、アラフォーかな。
 お母さまの弟だというイサナさんが中性的な美形なのがよくわかる。美人姉弟だ。

「そちらが、あなたの無二、モモカさん?」
「ええ。可愛いでしょう?」
「そうね。思ったより小さいけれど、十二年前に出会ったというのなら、最低でも十五~六歳なのかしら?」
「ええ。今年の初雪が降る前に十七になる年頃の娘ですよ」

 じろじろ、ではないにしても、なんだか舐めるように上から下まで見られている気がする。

「マクロンさん、ご挨拶はちゃんとしなきゃ。おろして?」

 そう。まだ、お父さん抱っこのままなのだ。

 そっと下ろされる。初対面が息子さんに子供のように抱っこされてる所とか、恥ずかしすぎる。
 顔に熱が上るのを感じたけど、我慢して頭を下げる。

「初めまして、さざなみ萌々香ももかと言います。マクロンさ⋯⋯セフィル殿下には、隣国にてとてもお世話に、じゃなくて、何度も何度もたくさんたくさん、助けていただきました」

 初対面の母親に対して、息子さんに非常にお世話になったとか、意味深にとられかねない。

星竜の加護ドラゴンブレシングがあると聞いたわ」
「はい。憶えてないのですが、子供の頃に一度、星竜の真上に落ちて来たそうで、その時に、守護されたそうなんですけど、今まで十二年間、全く思い出しませんでした」

 今も、爪の竜燐から気配を感じるので実感はあるものの、当時を思い出した訳じゃない。

「竜王国の歴史の中でも勿論、この世界のどこに於いても、過去に星竜様が加護を授けたという話はないのよ? 星竜様の大切な人であるあなたは、この国の誰よりも大事にしなくてはいけない人なの。わたくしに対しても敬語は不要よ。この世界での母と思って、気楽にしてちょうだいな」

 マクロンさんが殿下って呼ばれるって事は、当然、お母さまも王家の妃殿下とか公爵家やなんかの王族とかなんやんね?
 そんな人に対して、敬語は不要とか気楽にとか、ムリです。



 次話
🚫10 張り切るご母堂さま
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