聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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心を守ってくれた優しい人

🚫10 張り切るご母堂さま

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「帰って早々で悪いのだけれど、一度陛下に顔だけでも見せてくれるかしら?」
「勿論です。萌々香ももかの事もありますし、すぐにでも挨拶はしなくてはと思ってました」
「姉上。たった今、私の転移魔法で戻ったところですよ。まずは、竜妃様の御身を整えねば」
「あら、それは勿論よ。私に任せてもらえるかしら?」
「侍女の手配がまだでして」
「だから、私に任せて」

 私を置き去りに、話がどんどん進んでいく。

 お母さまがパンパンと手を打ち鳴らすと、メイドさんルックの女性が数人と、お仕着せではないシンプルながらものは良さそうなドレスを着た女性が二人、部屋に入って来た。
 メイドさんのひとりはワゴンを手押しして、ひとりは小さめのもうひとりは大きめの、木製の上部が左右に開くお裁縫箱のソーイングボックス ような箱を抱えていた。

「さあさ、お嬢さんの身仕度には時間がかかるものよ。殿方達はお外でお待ちになって?」

 え、いや、あの。
 この国で暮らすことになった異世界人が、国王様に顔見世するのは解らないでもない。
 私の日常や常識が、ここでは知識チートになる可能性があって、他国や悪い人に影響しないよう監視の目を付けるとか色々あるんだろうとは思うし。

 だけど、ここは、イサナさんの転移魔法で出た場所で、イサナさんかマクロンさんかのお部屋なのでは?
 なのに、部屋の主の方を追い出すの?

 そして、そのメイドさんや恐らく侍女と思われる人達は、なんなのかな?
 私を、異世界ファンタジー小説のように、お姫さまよろしく磨き上げるとか言わないよね?

──いいじゃん、やってもらいなよ
──そうそう、王様に会うんなら、第一印象は大事だもん
──ハッタリ効かすにも、それ相応の装いってあるよね

 なんのハッタリか。私、ちょっとなんだけど。

──あっちはプロだよ、こそばしたりしないって
──郷に入りては郷に従えって言うじゃん?
──それに、王様はともかく、他の貴族達や役人に嘗められないようにしないとね
──モモカを連れて来たマクロンに恥をかかせないためにも、ちゃんとした格好をしなきゃ

 私が見窄らしい格好をしていたり、さっきまでドンパチやったりトレッキングしてましたって丸わかりの、埃っぽいままだと、マクロンさんの連れて来た人間として彼に恥をかかせる?

 それはあるのかもしれない。

 特別な状況下で意図があってするのではなくただ、お城で王様に会うに相応しい格好をする事が出来ない、TPOをわきまえられない程度の知能しかないと思われるのは、得策ではないのも解る。

 でも、日本の一般家庭に育った女子高生としては、慣れないというか、緊張するというか、居心地悪いというか。

 スーパー銭湯が流行っている、昔から公衆浴場の習慣のある日本人とは言え、まだ未経験で、まして他人に身体を洗われるとか、身をほぐされるとか、勘弁して~!!

 お母さまはとても張り切っていた。

 娘が居たらこんなに楽しいだろうと、とても楽しんでおられたので、断りにくかった。

 結果、お母さまの指示で侍女もメイドもテキパキ働き、私は未だかつてないほど、身体も装いも粧いもぴかぴかになった。



 次話
🚫12 魔法士から高嶺の存在へ
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