148 / 163
心を守ってくれた優しい人
🚫10 張り切るご母堂さま
しおりを挟む「帰って早々で悪いのだけれど、一度陛下に顔だけでも見せてくれるかしら?」
「勿論です。萌々香の事もありますし、すぐにでも挨拶はしなくてはと思ってました」
「姉上。たった今、私の転移魔法で戻ったところですよ。まずは、竜妃様の御身を整えねば」
「あら、それは勿論よ。私に任せてもらえるかしら?」
「侍女の手配がまだでして」
「だから、私に任せて」
私を置き去りに、話がどんどん進んでいく。
お母さまがパンパンと手を打ち鳴らすと、メイドさんルックの女性が数人と、お仕着せではないシンプルながらものは良さそうなドレスを着た女性が二人、部屋に入って来た。
メイドさんのひとりはワゴンを手押しして、ひとりは小さめのもうひとりは大きめの、木製の上部が左右に開くお裁縫箱のような箱を抱えていた。
「さあさ、お嬢さんの身仕度には時間がかかるものよ。殿方達はお外でお待ちになって?」
え、いや、あの。
この国で暮らすことになった異世界人が、国王様に顔見世するのは解らないでもない。
私の日常や常識が、ここでは知識チートになる可能性があって、他国や悪い人に影響しないよう監視の目を付けるとか色々あるんだろうとは思うし。
だけど、ここは、イサナさんの転移魔法で出た場所で、イサナさんかマクロンさんかのお部屋なのでは?
なのに、部屋の主の方を追い出すの?
そして、そのメイドさんや恐らく侍女と思われる人達は、なんなのかな?
私を、異世界ファンタジー小説のように、お姫さまよろしく磨き上げるとか言わないよね?
──いいじゃん、やってもらいなよ
──そうそう、王様に会うんなら、第一印象は大事だもん
──ハッタリ効かすにも、それ相応の装いってあるよね
なんのハッタリか。私、ちょっとこしょばがりなんだけど。
──あっちはプロだよ、こそばしたりしないって
──郷に入りては郷に従えって言うじゃん?
──それに、王様はともかく、他の貴族達や役人に嘗められないようにしないとね
──モモカを連れて来たマクロンに恥をかかせないためにも、ちゃんとした格好をしなきゃ
私が見窄らしい格好をしていたり、さっきまでドンパチやったりトレッキングしてましたって丸わかりの、埃っぽいままだと、マクロンさんの連れて来た人間として彼に恥をかかせる?
それはあるのかもしれない。
特別な状況下で意図があってするのではなくただ、お城で王様に会うに相応しい格好をする事が出来ない、TPOを弁えられない程度の知能しかないと思われるのは、得策ではないのも解る。
でも、日本の一般家庭に育った女子高生としては、慣れないというか、緊張するというか、居心地悪いというか。
スーパー銭湯が流行っている、昔から公衆浴場の習慣のある日本人とは言え、まだ未経験で、まして他人に身体を洗われるとか、身をほぐされるとか、勘弁して~!!
お母さまはとても張り切っていた。
娘が居たらこんなに楽しいだろうと、とても楽しんでおられたので、断りにくかった。
結果、お母さまの指示で侍女もメイドもテキパキ働き、私は未だかつてないほど、身体も装いも粧いもぴかぴかになった。
次話
🚫12 魔法士から高嶺の存在へ
0
あなたにおすすめの小説
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる