聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

文字の大きさ
150 / 163
心を守ってくれた優しい人

🚫12 廊下でもお父さん抱っこ

しおりを挟む

 お母さまや侍女の人達みたいな、足首まで隠れる、釣り鐘型やプリンセスラインのような本格的な夜会ドレスではなく、脹ら脛までの丈のワンピースでよかった。
 あんなの着せられた日には、裾を踏んづけて転ぶ未来しか見えない。それもきっと、王さまの目の前で。

 フリルは殆どなくて、タックを多めに取ったりプリーツも多めに入っていて、コルセットなんかもしなくていいし、全体的にゆっりしたデザイン。ベロア生地が肌触りもよくて、お嬢様になった気分。

 お母さまいわく、帝国の貴婦人達のような、コルセットだパニエだって鎧のような衣装は、健康によくないとのこと。
 なんにせよ、着やすい服でよかった。

 ******

 石造りのお屋敷の部屋の中は暖炉(やたぶん魔法)で暖かかったけど、廊下に出たら底冷えのする寒さだった。

 夏休みにこちらに召喚されて約ひと月半ほど。まだ秋だよね?
 それとも日本の季節と関係ないかな。

──時間軸は平行に、リアルタイムで召喚されたから、時間差や暦のズレはないよ
──今、日本でもちゃんと、10月の上旬かな?

 そうなんだ。

──この辺りは高原地帯で、標高は高いし、夜霧が降りる頃だからね
──これから、明け方はグッと冷えるよ

「メラ、ウィン、エア、ルク、その他の精霊達も。萌々香ももかが冷えないように気をつかってやってくれ」

──あ~い

 評議国にいた時のマクロンさんは、精霊の声は聴けなかったのに、今は、自分の守護精霊でなくても会話してる。

「評議国にいた時は、身バレしないように、名前も変えて、記憶や魔力の大半を封印していたんだ」
「記憶も?」
「そう。誓約付きの魔法で身元を確認されたらいつわれないからね。この国の身内や過去の経歴などを忘れて • • • イサナの遠縁のひとりとして入国したんだ」

 竜王国は、この辺りでは帝国に次ぐ大きい国で、星竜を慕って集まる精霊の多さと魔法技術の発達、経済の発展と豊かな大地で、国力はむしろ帝国より大きいのだと、落ち人救済監理局での勉強で学んだ。

 その大国の重要人物だとバレたら、あの国でどう扱われるか解らないという警戒は、理解できる。

「だから、名も家名のマクロンだけで、生まれつきの基礎的な生体魔法と、便宜上降霊しておいた緑樹の精霊だけで薬剤調合魔法士をやって、あの国を見ていた」
「国を見るの?」
「そう。それが、私の本来の存在意義だから」

 間近で見るマクロンさんの横顔は、シュッとした、若かりし頃の竹野内豊から濃さとか若々しい健康的な熱量を差し引いたような、見てるだけで謎に恥ずかしくなってくるくらい整っているけれど、人の形をした別次元の生き物のように感じる。
 勿論、そんな事誰にも言えないけど。

 間近。そう、その長い廊下も、自分の足で歩かせてもらえず、お父さん抱っこなのだ。

 マクロンさんにとって私は、もうすぐ17歳だと口では言っていても、感覚的には10歳児なのかもしれないな。



 次話
🚫13 漢字で呼びたい
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...