聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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心を守ってくれた優しい人

🚫13 漢字で呼びたい

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 今まで居たお屋敷は、お母さまとマクロンさんのためのお屋敷で、王城とは別口に敷地内に建てられた物だったようで。それでも小ぶりのお城みたいだったけど、もう突っ込むまい。

 私を縦抱きに抱えたまま、廊下を突き進み、カーペットの敷かれた大理石の階段を下り、エントランスホールに出ると、執事らしき男性が恭しく扉を開ける。
 マクロンさんは、頷いて外に出た。

 うっ 寒っ。

 寒いと思った途端、メラに温められたエアの発する霊気が、ウィンによって私達の周りを包み込んでいく。
 暖かい空気のシャボンの中にいるような感じ。

「暖かくなったよ、みんなありがとう」

 何かしてもらうと、こうして感謝の気持ちを口にする。
 それが合図になって、私が命じた魔法でもなくても吸収できるようになるみたいで、みんなが少しづつ私の魔力や霊気を舐め摂って行く。

「いい関係が築けているようだね。さすが萌々香ももか

 優しい、保護者みたいな目をして褒める様子は、まるで幼児によく出来ましたと労う保育士さんのよう。

「そう言えば、再会してからずっと、私の名前を呼ぶ発音が、漢字っぽいね」
「教えてもらったからね。樹々が茂り若葉が萌える様子を意味する『萌』が重なって(萌々)、瑞々しく清々しい新緑の『香』りが漂うという、とても素晴らしい名前だから、ちゃんとその意味も噛みしめて呼ばないとね。我々の使う表音文字よりも、『漢字』そのものに意味のある表意文字は、憶えるのは大変だろうけど、魔法の咒紋と同じく、それだけで存在価値のある素晴らしい物だと思う」

 マクロンさんは、意味のある物を識ったり集めたりするのが趣味なのかな?
 さっきも、国を見たり識ったりする事が本来の存在意義だとか言ってたっけ?

 ──本来の

 それって、今のマクロンさんは、本来の存在意義から外れた存在って事なの?

 肯定されるのも怖くて訊けなかった。



 次話
🚫14 ぬくもりを分け合う
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