これって乙女ゲーム? ──残念ながら序盤しか知りません──

ピコっぴ

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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?

こことは違う、どこかの私たち②

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     📚

 毎朝、お兄さまと、アーベントシュティアン様とグラディオーレ様の迎えの馬車に乗り込み、通学。

 小一時間揺られて、ヴェスペリ公爵領からもアゥルヴーム侯爵領からも出て、国内の貴族階級と、資産家の商家や豪農などの郷紳、ジェントリ 有識者インテリなどの子供たちが通う学園へ馬車は入っていく。

 ──王都と私達の所領って、こんな近かったっけ?

 私の中の違和感は置き去りに、幾つもの馬車が順番待ちしていた馬車留めに、私達の順番が来る。
 と言うか、横入りである。

 ヴェスペリ公爵家当主は、当代国王陛下の王弟殿下。最も王家に近い王族である。

 ヴェスペリ公爵家の紋章の入った黒塗りの馬車は、順番待ちすることなく王族専用のエントランスへ横付けできるのだ。

「アーベントと友人だと、こういうときは本当便利だよな」
「便利扱いか? フォオリウム」

 ニカッと笑い、お兄さまは先に降りて客室の中に向けて手を差し出す。
 小さく「先に」とだけ伝えてステップに片足を掛けたグラディオーレ様に手を添え、お兄さまは颯爽と校舎へエスコートする。

 いつもなら馬車の後方ステップに立つフットマンが扉を開け、グラディオーレ様や私のために、五段の小さな階段を馬車の客室扉に掛ける。

 私が馬車に備え付けの、扉が開くと降りる仕掛けの小さなステップでは段差があり過ぎて降りられないのでまごまごしていると、アーベントシュティアン様様が徐に立ちあがった。

「やれやれ。草原の子猿は平地暮らしに慣れてしまって、木から降りられないらしいね」

 軽く毒舌を吐いて私の背と腿裏に腕を差し入れ、横抱きに抱き上げると、イジワルな笑顔で馬車から降りた。
 それを見ていた他の生徒達から黄色い声があがる。わざとだよね? アーベントシュティアン様?

 後ろのステップに立ったままのフットマンが、馬車の屋根に載せられた私達の鞄や教材をおろすと、何処からか出て来た、まだ拍車も与えられていない小姓ペイジの少年が教材を抱えて、私達についてくる。

 馬車待ちからエントランスホールへ入り、人目があるので私が文句を言うと、アーベントシュティアン様はスンナリ私を床に下ろした。

 そのタイミングで、周りの雑然としていた生徒達がモーセの海割りのように左右に分かれ、通り道が出来る。
 そして、出来た道の向こう側から、キャーッとかワーッとか、歓声が上がり、近場ではため息も聴こえる。
 歓声は段々近づいて来て、何やら(比喩ではなく物理的に)目が痛いほど眩しい集団が近づいてくる。


「フロリス」


 小首を傾げると、ロゼワインのような透き通るピンクゴールドの髪がサラサラと流れ、ミントガーネットの瞳が輝いて、まるで全身が宝石かクリスマスの電飾のような、男性が私達の前に立った。

 ルシーファ殿下である。

 柔らかく、ふわっと微笑み、私の手をとる。

「待ってたよ、教室まで行こう。今朝の一限目は、地理の小テストだよ。ちゃんと周辺諸国の位置と王都の名と場所、名産品などは憶えてきたかい?」
「⋯⋯ええ。たぶん、大丈夫だと思います」
「よかった。でも、一応、僕とお復習さらいしておこうか」

 左手と腰をホールドして離さず、教室まで連行される。

 教師が来るまで、開放されそうになかった。

▶素直に復習する
・抵抗して逃げる
・周りに助けを求める

 一回目は助けを求めたけど、お兄さまもアーベントシュティアン様も学年違うし、グラディオーレ様も加わるだけで、結局お復習いコースだったのよねぇ⋯⋯
 その後、殿下の親衛隊に取り囲まれちゃったわ。

 二回目は【素直に⋯⋯】を選んだけど、当然、後で知らないご令嬢に囲まれた。
 三回目は【抵抗して逃げ】たけど、アーベントシュティアン様に捕まって、三人でお復習いコースだった。(グラディオーレ様は横で知らん顔)

 結局、どれを選んでも、お復習いはする。

 これで、何のフラグが立ったんだろう?



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