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魔導大会三日目
113話 三つ巴の戦い
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「彼の実力を推し測りたい、少し眺めていてくれない?」
「アルムは僕の敵だ、戦えるチャンスを見過ごせというのか!」
「……貴方、彼に勝ちたいんじゃなかったの?」
反論するセロブロにタリオナは鋭い眼光で睨みつける。
「……分かった、あまり時間は掛けないでくれよ」
セロブロは本来の目的を思い出したようで素直に譲った。
『人数的に有利であるにもかかわらずタリオナ選手! アルム選手と単騎で戦うつもりのようだァ!』
「何考えてんだ、アイツはよぉ……」
会場から様子を伺うライオスは彼女らしくない判断に強い抵抗感を示す。
「アルム君、貴方は私だけに集中してくれれば良いから全力で来て下さいね」
「誰か信じるかっつーの」
(ベレスたちに気付かれても面倒だ、さっさと済ませよう……)
意を決したアルムは地面を強く蹴り、剣を突き立てながら彼女に突撃する。
「【特攻する槍】」
タリオナは淡々と魔法を発動し、構築式から二本の長槍を飛ばす。
「【影移動】」
アルムは向けられた槍をギリギリまで引き付けると木の影に足を踏み入れ、彼女らの目の前から姿を消した。
「――――どこにっ⁉」
「…………」
焦燥が体を駆け巡るセロブロに対しタリオナは冷静に相手の魔法を分析する。
「……【降下する斧】」
構築式から六本の斧を取り出し、左後方を除いて周囲の木々を切り伏せる。
「チィ!」
その瞬間、慌てた様子のアルムが影の中から姿を現し、長剣を片手に大きく振り被った。
(そう来ると思ったわ!)
「【守護する盾】!」
タリオナと剣のあいだに大盾が割り込まれ、ものの見事に防がれてしまう。
「【乱舞する短剣】」
アルムの強襲を防いだ彼女は構築式から無数の短剣を取り出し、即座に彼を囲い込む。
「【黒棘】!」
しかし地面から鋭利な黒結晶を出させ、短剣の包囲網から何とか脱することに成功する。
『タリオナ選手、特異魔法『万器統率』でアルム選手と対等以上に渡り合っているっ! これが昨年の魔撃墜優勝者の実力かァ!」
「良いぞタリオナ! そんな一年、お前の敵じゃねェ!」
「タリオナ様、カッコいいィ!」
彼女の活躍で実況役のサイベルやグレニア学園の生徒たちは大いに盛り上がった。
「思ってたよりもやるね……」
(至近距離に侵入できれば倒すのは簡単だと思ってたけど、高い判断力と洞察力がその弱点をカバーして有り余る強さ)
軽口を叩くアルムの内心は穏やかではなかった。
「ありがとう、逆にこっちは少し拍子抜けだけど」
「……こっちの気も知らないで、せいぜい今だけは優越感に浸っていろ」
「貴方が気に掛けているのはベレスたちに戦っていることを悟られない事だろうけど。でも残念ね、彼らはもうすぐこちら来るわ」
「……⁉ 誰がそんな話を信じると……」
アルムは図星を付かれ、否が応でも彼女の言葉を聞き入ってしまう。
(タリオナチームの水晶球が見つからず、ベレスたちが近づいていて状況かなり最悪だ。この場は上手く撒いてカルティアたちと現状の打開策を――――)
「――――させない」
アルムの頭上から長槍を落とし、彼の思考を妨害する。
「貴方は私の手で葬ってあげる!」
(先生、信じる人を間違えたことをこの場で証明して見せます)
「…………」
一人で倒そうと意気込む彼女をセロブロは黙って見ていた。
「あいつが来てんなら仕方ねェ、遠慮はしないぞ」
両者の視線が交じり合い、激戦が勃発しようとした時――――数十本の木が抉られたかのように忽然と姿を消す。
「「「――――――――⁉」」」
「いやぁ、危うく戦場に遅れるところだったぜ」
睨み合っていた彼らは一人の乱入者に釘付けになる。
「まあお前が無事ならそれで良いけどな」
しかしベレスはアルム以外は眼中になかったようだった。
(早すぎるっ! 少なくともあと五分は猶予があったはず……)
「……試合が始まってまだ十五分も経ってねぇのに、みんな飛ばし過ぎな」
(三竦みの状況ならタイミングを見て撒くことはできるはず。だが……)
彼はベレスの左腕に抱えられた水晶球に視線を向けた。
(わざわざ弱点を晒してくれる機会も無いだろう。乱戦に乗じてあいつ等の水晶球を叩く)
「だがせっかく役者は揃ったんだ。三つ巴の戦いと洒落込もうじゃねえか」
アルムは己の立ち回りを決め、彼らを戦うように促す。
「ははっ! 魔力を残しておけよ、俺との一騎打ちが控えてるんだからよォ!」
(アルムを討ち取れる千載一遇のチャンスだったのに……!)
「アルムもベレスも……私の邪魔ばかりして、絶対に許さない!」
タリオナは激しい怒りに顔を歪め、殺意を込めた眼差しを彼らに送った。
「アルムは僕の敵だ、戦えるチャンスを見過ごせというのか!」
「……貴方、彼に勝ちたいんじゃなかったの?」
反論するセロブロにタリオナは鋭い眼光で睨みつける。
「……分かった、あまり時間は掛けないでくれよ」
セロブロは本来の目的を思い出したようで素直に譲った。
『人数的に有利であるにもかかわらずタリオナ選手! アルム選手と単騎で戦うつもりのようだァ!』
「何考えてんだ、アイツはよぉ……」
会場から様子を伺うライオスは彼女らしくない判断に強い抵抗感を示す。
「アルム君、貴方は私だけに集中してくれれば良いから全力で来て下さいね」
「誰か信じるかっつーの」
(ベレスたちに気付かれても面倒だ、さっさと済ませよう……)
意を決したアルムは地面を強く蹴り、剣を突き立てながら彼女に突撃する。
「【特攻する槍】」
タリオナは淡々と魔法を発動し、構築式から二本の長槍を飛ばす。
「【影移動】」
アルムは向けられた槍をギリギリまで引き付けると木の影に足を踏み入れ、彼女らの目の前から姿を消した。
「――――どこにっ⁉」
「…………」
焦燥が体を駆け巡るセロブロに対しタリオナは冷静に相手の魔法を分析する。
「……【降下する斧】」
構築式から六本の斧を取り出し、左後方を除いて周囲の木々を切り伏せる。
「チィ!」
その瞬間、慌てた様子のアルムが影の中から姿を現し、長剣を片手に大きく振り被った。
(そう来ると思ったわ!)
「【守護する盾】!」
タリオナと剣のあいだに大盾が割り込まれ、ものの見事に防がれてしまう。
「【乱舞する短剣】」
アルムの強襲を防いだ彼女は構築式から無数の短剣を取り出し、即座に彼を囲い込む。
「【黒棘】!」
しかし地面から鋭利な黒結晶を出させ、短剣の包囲網から何とか脱することに成功する。
『タリオナ選手、特異魔法『万器統率』でアルム選手と対等以上に渡り合っているっ! これが昨年の魔撃墜優勝者の実力かァ!」
「良いぞタリオナ! そんな一年、お前の敵じゃねェ!」
「タリオナ様、カッコいいィ!」
彼女の活躍で実況役のサイベルやグレニア学園の生徒たちは大いに盛り上がった。
「思ってたよりもやるね……」
(至近距離に侵入できれば倒すのは簡単だと思ってたけど、高い判断力と洞察力がその弱点をカバーして有り余る強さ)
軽口を叩くアルムの内心は穏やかではなかった。
「ありがとう、逆にこっちは少し拍子抜けだけど」
「……こっちの気も知らないで、せいぜい今だけは優越感に浸っていろ」
「貴方が気に掛けているのはベレスたちに戦っていることを悟られない事だろうけど。でも残念ね、彼らはもうすぐこちら来るわ」
「……⁉ 誰がそんな話を信じると……」
アルムは図星を付かれ、否が応でも彼女の言葉を聞き入ってしまう。
(タリオナチームの水晶球が見つからず、ベレスたちが近づいていて状況かなり最悪だ。この場は上手く撒いてカルティアたちと現状の打開策を――――)
「――――させない」
アルムの頭上から長槍を落とし、彼の思考を妨害する。
「貴方は私の手で葬ってあげる!」
(先生、信じる人を間違えたことをこの場で証明して見せます)
「…………」
一人で倒そうと意気込む彼女をセロブロは黙って見ていた。
「あいつが来てんなら仕方ねェ、遠慮はしないぞ」
両者の視線が交じり合い、激戦が勃発しようとした時――――数十本の木が抉られたかのように忽然と姿を消す。
「「「――――――――⁉」」」
「いやぁ、危うく戦場に遅れるところだったぜ」
睨み合っていた彼らは一人の乱入者に釘付けになる。
「まあお前が無事ならそれで良いけどな」
しかしベレスはアルム以外は眼中になかったようだった。
(早すぎるっ! 少なくともあと五分は猶予があったはず……)
「……試合が始まってまだ十五分も経ってねぇのに、みんな飛ばし過ぎな」
(三竦みの状況ならタイミングを見て撒くことはできるはず。だが……)
彼はベレスの左腕に抱えられた水晶球に視線を向けた。
(わざわざ弱点を晒してくれる機会も無いだろう。乱戦に乗じてあいつ等の水晶球を叩く)
「だがせっかく役者は揃ったんだ。三つ巴の戦いと洒落込もうじゃねえか」
アルムは己の立ち回りを決め、彼らを戦うように促す。
「ははっ! 魔力を残しておけよ、俺との一騎打ちが控えてるんだからよォ!」
(アルムを討ち取れる千載一遇のチャンスだったのに……!)
「アルムもベレスも……私の邪魔ばかりして、絶対に許さない!」
タリオナは激しい怒りに顔を歪め、殺意を込めた眼差しを彼らに送った。
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