死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会三日目

114話 翻弄される弱者たち

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 セロブロを除き、三者が戦闘の意思を示してから数秒後。

「「「「――――――――」」」」

 お互いに睨み合う中、一人の男が地中に魔力を注ぎ終えると魔法を発動させる。

「――――【黒棘ブラックパレス】」

 一連の戦闘で周辺の木々が無くなり小規模の荒野が広がっていたが、アルムの魔法によって針状の黒結晶が無差別に地上を侵略する。

「ッ――――⁉」
「【守護する盾ディアン・シード】!」
「【手中抹消インディレーダ】」

 タリオナたちは盾でしのぎ、ベレスは手に触れた結晶を跡形もなく消し去る。

『アルム選手の広域魔法をタリオナ選手は盾で防御、ベレス選手は魔法で迎撃と機敏な対応を見せる!』

「……た、助かったよ」

「セロブロ、貴方は下がってなさい。あいつ等は私が倒すから」

 彼の顔は見向きもせず、淡々とした声色こわいろでタリオナは答えた。

「ははっ! こうしてお前と戦うために理事長に頼んで出場したんだ!」

 ベレスは片手に水晶球を抱えたまま、乱雑に出現する黒棘を触れては消し去り、発生元に直進する。

「競技の事なんて忘れて思いっきり殺し合おうぜェ!」

「【影移動シャドウムーブ】」

 アルムの眼前に差し迫ろうと接近するが、吸い込まれるように結晶の影に逃げられてしまう。

(悪いなベレス、俺はお前と戦うために試合に臨んだんじゃない)

「試合に勝つために来たんだぜ」

 直後、ベレスの背後に位置する影から再び姿を見せる。

「なぁっ⁉」

魔黒ビルス――――」  
「【特攻する槍アシック・スピア】」

 ベレスの虚を突き、至近距離から魔法を撃ち込もうとするが三本の長槍が急所に目掛けて放たれる。

「チィ!」

 アルムは光線を放つあと一歩のところでその場を離脱し、数少ないチャンスを逃してしまった。

「「もったいねェ!」」

『エンドリアス学園から観客席からチャンスを惜しむ声が聞こえます! しかしあの場でタリオナ選手の攻撃を無視し、ベレス選手の水晶球クリスタル撃破を優先していたら戦闘続行不可能だったのは明らかでしょう!』

『深追いしたくなるあの局面で手を出さず、落ち着いてチャンスを見送ることが出来たのは良い判断だったと思います』

『しかしあの場は早々にベレス選手たちを退場させてアルム選手のチームに集中すべきだと思いましたが……タリオナ選手は何を考えているんでしょうね?』

『確かに冷静沈着れいせいちんちゃくな彼女らしくない対応だとは思います。恐らく昨年の成績を気負って緊張しているのでしょう……』

 エリアは当たり障りのない言葉で彼の問いに答える。

(もしくはアルム選手に個人的な思いがあるのかもしれない……)

 そして彼らと肩を並べるタリオナを密かに応援した。

「とんだ邪魔が入ったな」

三つ巴みつどもえだと思ったから黒棘ブラックパレスを展開したけどタリオナの考えは違うようだ。俺を付け狙うベレスとタリオナ、これでは実質3対1……)

 アルムは棘山から俯瞰ふかんする形で最善の策を模索する。

「じゃあ俺がタリオナたちに絡むしかないか」

 戦い方を選定した彼はあくどい顔を浮かべ、再び影の中に足を踏み入れた。

「あの状況では静観するか、双方に攻撃すべき場面だったはずだ」

 一方、セロブロたちは展開された黒棘の外側へ移動しながら彼女の行いを叱責しっせきしていた。

「これでは乱戦の意味が無い、アルムが僕たちに狙いを定めるのも時間の問題だぞ」

「ずいぶん頭が回るのね。まあ攻撃も防御も私に頼っているんだから当然よね?」

「ッ……悪いと思っている」

 さとしていた彼だが事実を突きつけられ、言葉を詰まらせてしまう。

「そんな心配しなくて大丈夫よ、さっきの戦いで私の魔法が通用するところは見ていたでしょ。次は必ず仕留めるわ」

「……お前がアルムを嫌っているのは分かっていた、そしてどんな理由なのか興味も無かった。けどな、反故ほごにしようとしてるなら話は変わって来る」

 立ち止まり、語彙ごいを強める彼に先行していたタリオナも振り返ざる負えなかった。

「僕はアルムに勝ちたい、奴に敗北の文字を刻んでやりたい、そのためならどんな手段だっていとわないと決めた。だがその決意を踏み倒し、好き勝手に暴れようとしているのなら絶対に許さない……!」

 しかし強く出れないセロブロも譲れない部分は断固とした意志を見せつける。

「だから話してくれないか。きみがアルムを嫌う理由を」

「…………」

 そして寄り添う姿勢を見せる彼に、自身の言動を僅かだが振り返ることが出来たようだった。

「――――私は」
「見ぃつけた!」

 彼女が口を開けた瞬間、影の中からアルムが姿を見せる。

「――――⁉ ファイヤ――――」
「遅いッ‼」

 セロブロは炎で影を退けようとするがそれよりも早く地面に触れ、黒棘で周囲を埋め尽くした。

「――――【乱舞する短剣ピース・キリング】!」

 閉所空間で大型武器の引き出しを断念し、無数の短剣でアルムを迎撃する。

「【黒憑クロウヴィル】」

 アルムは不敵な笑みを浮かべると長剣に魔力をまとわせ、向かい来る短剣の軍勢に斬り掛かった。

『おおっとアルム選手、自ら短剣の中へ飛び込んで行くゥ! これは自殺に等しい行為だァ――――あれ?』

 不安と興奮を交えながら実況するサイベル、だが目の前の映し出された光景に呆気あっけに取られてしまう。

『な、なんという事だァ⁉ 立ち向かった相手を切り刻んできた無数の短剣が!』

「……くっ、いつから気付いて……!」

 タリオナは力強く彼を睨みつける。
 しかしその瞳の奥には不安と焦りが入り混じっていた。

「気付いたって言うほど確信めいたものがあったわけじゃない。ただ最近はに触れる機会が多かったから試しただけさ」

 アルムは横に視線を流すと少し考え込んだ後に再び彼女に視線を戻す。

「あんたの特異魔法『万器統率ばんきとうそつ』は物体に己の魔力を纏わせて意のままに操る、違うか?」

「……答える義理は無い」

「ああ、別に答えて欲しくて言った訳じゃない。これは軽い意趣返いしゅがえし、そして俺に勝てないと分からせるためだ」

「――――図に乗るなよォ‼」

 挑発する彼にタリオナは目を血走らせる。

「待てタリオナ、ここは退いて体制を立て直そう!」

「どこに逃げるって言うの! こいつはここで殺すしかない……!」

 激昂した彼女はセロブロの声に聞く耳を持たず、長槍をアルムに差し向けた。

「退くも殺すも勝手にしろよ。そんな余裕はねェけどな」 

 視界の端から結晶の粉砕音が響き渡り、散らばった四人が集結を果たす。
 彼の思惑通り、接触した時には全てが遅かったのだった。
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