死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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死神転生

3話 初の人助け

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「【黒き空牢ローブ・ジエルド】」

 構築式が展開されると円形状の黒い壁面が二人を囲む。
 これは転生して初めて習得したオリジナルの結界魔法だ。耐久力は一般の結界と比べて劣るかもしれないが、その代わり俺ならではの魔法特性が付与してある。

 特性を確かめようと俺は地面を踏みしめ全力の蹴りを結界璧に叩き込む。ガンッと鈍い音を立てるも傷ひとつ付いていない。

「……完璧だ」

 成功した魔法を素直に喜ぶ。
 暗黒魔法を有する俺だけが付与できる魔法特性、それは『結界外との隔絶』だ。
 俺の力は万物を引き寄せ、吸収する性質を持っている。だからその性質を結界の壁面に付与してダメージを吸収する緩衝材としての役割を与えた。
 そのため結界内の二人には外で起きるあらゆる事象に気付かれることは無い。

「さっきの蹴りで耐久力も問題なさそうだし早速実戦だ」

 俺は森の奥に体勢を向けると大きな動作で走り出す。
 春風が体を突き抜ける心地よさは存分に感じながら魔物探しを楽しんだ。
   
 ***

 魔物を探すこと数十分、黒狐スティングフォックスの群れを発見する。
 黒い毛並みと鋭い牙が特徴の小型魔物。数は十二体、初戦闘が群れとなると油断はできないな。

 俺は助走をつけて跳躍し、群れの中心に飛び込む。

「まずは素手だ」

 死角を突いた黒狐の腹部を狙って蹴り飛ばす、が致命傷には至らず距離を取られてしまう。
 厚い毛皮のせいなのか、俺の力不足なのか、噛みつきを回避しながら拳を打ち込むも効果は薄いように見える。

「【黒器創成くろきそうせい】」

 俺は漆黒の短剣を右手に作り出し、飛び込んできた黒狐の腹を掻っ捌く。
 これは自身の魔力や物質を結晶化させる結晶魔法で生成したもので、硬度は並みの剣を遥かに上回る。
 高密度に仕上げるため魔力の消費は馬鹿にならないが剣を携帯する手間を考えれば採算が取れる。

 俺は急所を狙って次々に黒狐を斬っていく。
 複数で攻めてきても小柄な体格と剣術を活かして回避と迎撃を繰り返した。

「ふぅ、悪くない」

 全てを切り伏せた俺は息を整える。
 打撃が通用する程のパワーはないが幾らでもやり様がある体だ。
 それに今は魔力消費を考える戦い方だが、体が成長して魔力量や身体能力は向上する。それに魔法の練度も上がれば魔力消費量も抑えることが出来る。
 無限に湧き出る魔力を感性に任せて戦っていた前世と違って、頭を使う窮屈な戦い方だが汎用魔法を使っていた訓練兵時代に近いかもしれない。

「……楽しくなってきた」

 俺は次なる魔物を求めて再び走り出した。

 ***

「往復時間を考えるとそろそろ潮時か……」

 黒狐戦の後も何度か魔物と戦闘を交えたが、イルクスが言っていた人鬼オーガには遭遇していない。
 門兵の彼らには気が重いだろうし、今日中に狩っておきたいところだ。

「……?」

 周囲の気配に敏感になっている中、微かに人の悲鳴が聞こえる。
 俺は足を止めて耳を澄ました。

「――――あっちか!」

 俺は悲鳴が聞こえた方向へ急転回し走り出す。

 茂みに構わず直進すると開けた場所で少女と怪我人、そして枝下からは脚しか見えないほどの大型魔物が立っていた。
 付近には馬車と思われる木造物が半壊しており路上で襲われたことが推測できる。

「【黒器創成くろきそうせい】」

 短剣を片手に魔物の足に斬りかかる。
 しかしギャン、と音を立てて攻撃が弾かれてしまう。
 注意を引くため全力の攻撃では無かったが、無傷で済まされてしまうとは……。

 俺は彼らのところに近寄って状況を確認する。

「あんたら大丈夫か?」

「ヒグッ、ヒグッ――――」

 少女は魔物に怯えていて対話どころでは無い。怪我人の男も出血はしていないが殴られて気絶している様子。
 彼らに問い続けても無駄だと考えた俺は目の前の魔物に視線を向ける。

 イルクスが言っていた人鬼? でもこの見た目は――――。

超人鬼ハイ・オーガか……」

 超人鬼は十メートルを超えるの大型の魔物でほかの人鬼と違って染め紅などが顔に塗られている。
 それは力の象徴、すなわち群れの中で一番強いことを意味する。
 そして群れの長がいるということは率いている群れが近くに居てもおかしくない。
 現状の俺では人鬼が無理なく倒せるレベル。
 魔法のテストだと想定していたため回復薬は持ってきていない。そもそも必要な相手なら戦闘は回避している。
 それが超人鬼が相手となれば、怪我どころか命の保証も絶対とは言い切れないな。
 俺一人なら逃げても良かったんだが怪我人に子供までいるとなると――――。

「……助けて、お兄ちゃん」

 思考を巡らす俺を横目に震えた声で助けを求めた。

「――――馬鹿だな、おれ」

 超人鬼なんかに人を助けるのかどうか迷うなんて馬鹿らしい!
 
「来いよ、クソ人鬼オーガ! 死神の力を見せてやる!」

 俺は目の前の超人鬼に向かって突っ走る。

「グオオオオオォォォ――――!」

 右手に持っていた大木を勢いよく振り下ろして来たため急いで横に回避する。地面が粉砕し衝撃が轟く。

「こわ……」

 あんな攻撃を一度でも食らったら誰の死体か判別も出来ないくらいグチャグチャな肉塊に変り果ててしまうだろう。
 少なくとも力と耐久力では太刀打ちできない。俊敏性や技能は上だが、先の奇襲を見るに攻撃が軽すぎてダメージもほとんど見込めない。

「出し惜しみして勝てる相手じゃないか……【真黒しんこく】、【黒器創成くろきそうせい】」

 超人鬼の視界を奪うと同時に長剣を生成する。
 力不足なら武器の重量を上げる方法が一番手っ取り早い。正直、前世で使っていた魔法の使用は極力控えたかった。しかし怪我をせずに人を助けて超人鬼を倒すとなると手段を選んでいる場合じゃない。

 超人鬼が混乱している内に殺しきろうと攻勢に出る。迎撃されないよう腕や肩と場所を変えて不規則に斬り掛かった。

「ッ……⁉」

 がしかし斬り掛かる直前に位置が特定され大木がすぐ横を掠め取る。
 予想外の苦戦に一歩下がって様子を伺おうとするも、超人鬼は俺の方へ迷うことなく向かって来る。

「クッソ、うぜぇな!」
 
 思い通りにいかない現状に怒りが込み上げつつも回避を続けて対応を考える。
 
 真黒が効いていない? いやそれはありえない。魔物相手に使うのは初めてだがあの混乱様を見るに目は見えない。なら俺の魔力を感知している――――。

「いたッ……」

 粉砕した破片が当たったのか少女の腕から血が流れていた。

「怪我させんじゃねえよ!」

 衝動に駆られた俺は思考を放棄し、目の前の敵を殺すことに全神経を注ぐ。
 大きな振りを回避した瞬間に懐へもぐり、がら空きとなった首元に剣を突き立てる……が刃先が突き刺さるだけだった。

 硬い皮膚に対抗しよう生成した長剣だが五歳児のアルムには扱いきれない重量であることに違いなかった。剣の重さを利用して振り落とすならまだしも、自身の身長より高い場所に突き立てるなど武器の力を活かすことが出来ない愚行という他ない。

「ヤバッ――――」

 誤った判断であると認識するも時すでに遅く、超人鬼の大きな手に掴まり森のほうへ投げ飛ばされる。
 枝葉にぶつかるも勢いは止まらず、幹に激突してようやく収まりを見せた。

「い、痛ェ……」

 意識はあるようだが枝葉によって服や肌が裂かれ、激突した後頭部や背中に数か所の打撲が見受けられる。

「絶対殺す……殺してやる! 【影移動シャドウムーブ】」

 生じた痛みを怒りと原動力に変え、アルムは魔法を発動する。
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