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第一章 目覚めた記憶
第55話 ヒロイン補正
しおりを挟む「不気味ですけど……案外ゲーム感覚なのかもしれませんよ。落としていく過程が楽しいというか、夢に夢見ているというか?」
「あぁ、成る程。確かにそれはあり得そうですわね」
「でしょう? 攻略対象でなくても、王立学園にはイケメンが多いですから。こう、手近なところで恋愛スキルを磨いておいてから、本命に突撃する心づもりだとか……? ほら、影からの新しい情報にもあったじゃないですか」
「ああ、例のアレですわね?」
ヒロインの独り言を正確に聞き取れたと、先程、最新報告が上がってきていたのだった。
『もうっ、何でフレデリック様が見つからないのぉ? 出会いイベントにはいたのに、その後は全然会えないしぃ。悪役令嬢もいないしっ、予定が狂っちゃうっ。いじめてくれなきゃ始まらないのにさぁ……おかげでシリル様も冷たいままだしっ。駄目じゃん!? はぁぁっ、二人ともかっこいいし手に入れたいのにな……』
とか何とか言っていたらしい……。
自分達の主人に対するあまりの不敬な内容に、フツフツと怒りを覚えた影達は、よりいっそう偵察に力を入れてくれているらしい。
「ね? ヒロインちゃん、僕達を攻略する気満々でしょ? やっぱり踏み台なんですよ、今の取り巻き連中って」
「……そのようですわね」
フレデリックの推察が正解な気がするヴィヴィアンであった…… とっても迷惑だけれど。
「嫌なスキルアップ方法ですわねぇ。皆様の……特に女性徒の反感を買いそうですわ」
「でもなんだか僕はちょっと、もっとその先が気になりますけどね。ここからどう彼女が巻き返すのか含めてですけれど……その手段というか」
「巻き返しの手段……ですか」
「ええ、もしかしたらシナリオの修正力で、何か強力な魅了魔法のようなものが彼女自身に備わるようになる……とかね」
色々な可能性のうちの一つだけれどあり得るかもしれないと、深刻そうに言った。
「……それも十分、考えられますわね。フレデリック様はともかく、学園にいらっしゃる主要な攻略対象者とは誰一人うまくいっていない状態ですもの。むしろ好感度はマイナスのような……そこからの巻き返しすためのチート能力ですか」
「はい。ここは、ヒロインちゃんに都合のよい世界のはずですから、いつ補正されてもおかしくないなって考えてます。彼女が努力して歓心を勝ち取らなくても何とかなるようにって」
「その分、私達にとってはありがたくない世界になりそうで、怖いですわねぇ」
「そうなんですよ。こちらが先を見て対策を立てても、それに対抗して刻一刻と状況が変化しそうなんですよね。いく通りかに備えることも出てきそうですが、まず確実にやっておかなきゃいけないものがあります」
「まあ、それは何でしょうか?」
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