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第二章 シークレットステージ
第82話 用心し過ぎるぐらいで丁度良い
しおりを挟む「私達はまだ子供ですからね。いくら従者を連れて行くといっても、用心し過ぎるくらいで丁度いいと思ったものですから」
シリルの言葉に同意するように、フレデリックも頷く。
「確かにそうですね。僕だってもし、ダンジョン内でリリィに何かあったらと考えると恐ろしいですから。これで安心できる材料が一つ増えました」
「まぁ、フレデリック様ったら。私を心配してくださるのは嬉しいですが、皆様の心配もしてくださいませ」
「あ、すみません。そうですよね。僕は君のことになると、つい視野が狭くなってしまって……君のことしか考えられなくなるんだ」
リリアンヌに叱られてシュンとなりながらも、彼女への想いゆえだと訴える。
「もう、恥ずかしいですわ、フレデリック様。そういうことは二人っきりの時に言ってくださらないと……」
真剣な瞳で見つめられ、途端にぽぽぽっと頬を染めた彼女の可愛らしい姿に、フレデリックは嬉しそうに微笑んだ。
「フッ、貴女お望み通りにしますよ、リリィ」
「フレデリック様……」
……まだまだ説明の途中なのだが、 互いに視線を絡ませ、うっとりと二人の世界に入ってしまった。
最初は政略で決められた婚約だったはずなのだが、相変わらず仲のいいことだ。恋人同士にしか見えない。
間近で見せつけられると、婚約者との中が二人ほどは良くないシリルとヴィヴィアンにとってはちょっと、いたたまれないのだけれど。
「んんっ。えっと、シリル様? 発動には魔力を流すだけで、他には何もしなくていいんですのね?」
「え? あ、う、うん。そうなんだっ」
動揺を隠しきれない様子だったシリルも、軌道修正しようと頑張るヴィヴィアンの言葉に、すぐに乗ってきた。
「ただ、ダンジョン内は声が響くからね、伝える時には周りにも気をつけて欲しい」
魔道具はどれも高価なので、使っているなと勘づかれると他の冒険者に狙われる危険度は上がる。
それにダンジョン内では犯罪が隠蔽しやすいという厄介な問題もあった。
殺害されて一定時間が経過すると、死体がダンジョンに吸収されてしまうのだ。
つまり、地上と比べて殺害の証拠がほぼ残らないという、犯罪者にとって都合のいい環境なのである。
その為、冒険者の中には同業者を標的にしている悪質な層が一定数いるらしく、特に駆け出しの冒険者は危ない。
「そんな奴らに目をつけられてはたまらないからね」
「分かりましたわ。十分、気を付けます」
シリルの忠告に、ヴィヴィアン達三人は使用する際には周りにも注意しようと決心して、頷きあったのだった。
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