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第二章 シークレットステージ
第87話
しおりを挟む実は先程ネックレスをつける際、シリルは彼女のきめ細やかな肌に少しだけ触れてしまったのである。
指先がかすめる程度のことだったが妙に意識してしまい、触れた部分が熱を持ったかのように感じた。
ヴィヴィアンは全く気にしていないみたいだが、彼女と目を合わせられずに微妙に視線を彷徨さまよわせることになった。
真面目で堅物なシリルは、フレデリックと違って恋愛事に不慣れなのだ。頭脳明晰な彼にも苦手分野はあった。
年々、美しくなっていく婚約者に惹かれてほのかな恋心を抱き始めていたが、最近では彼女が自分から一定の距離を置いていて、踏み込ませないようにしているのも感じていた。
それはヴィヴィアンに前世の記憶が戻り、乙女ゲームの悪役令嬢だと気づいてしまった為、破滅エンド回避に向けて必死になっていたせいでもあるが、そんなことは知らなかったシリルは少し寂しく思っていた。
この間冒険者ギルドで予知夢について聞いたことで、彼女の変化の原因が分かったのはよかった。別に嫌われた訳ではなかったらしい。
今回のダンジョン探索では一週間ずっと一緒に行動することになる。
チャンスだと思った。
これを機に、他人行儀な二人の関係が少しでも変わればいいなと思うシリルなのだった。
「さて、これから一週間、ダンジョンに潜る訳ですが……私達はそれぞれの家から限られた時間の中で、目に見える成果を出すようにと求められています」
皆で通信の魔道具の試運転までを一通り試し終えたところで、シリルが切り出した。
「そうですわね。効率よくやらないとあっという間に時間が経ってしまいそうですわ」
「ええ。ですが、十階層の魔物の検証の方は何とかなりそうじゃありません? シリル様達のおかげで、後は幸運値をくれる特殊個体が出現するタイミングを調べるだけですもの」
ヴィヴィアンに続いてリリアンヌも発言し、今回は大丈夫なんじゃないかと自分の意見を述べた。
「まぁそうなんですが。ただ今後のためにも、何かもうひとつくらい、良い成果が欲しくはないですか?」
彼らはヒロインより早く、強くなっておきたいという目標がある。彼女の魅了をはね除ける力を手に入れるためだ。
魔物を倒すとパーソナルレベルが上がり、それに伴い物理系、精神系ともにレジストする力が備わる。
相手よりもレベルが高ければ高いほど、害される恐れが減少するのだ。
その為にも、無限の可能性を秘めているダンジョンの秘密をヒロインより先に解き明かしたいと、シリルは考えていた。
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