上 下
180 / 308
第一章 辺境の町

第180話 初顔合わせ

しおりを挟む
 

「悪い、遅くなった。帰ってくる途中で迷いの魔樹の幻術にかかった新人に、たまたま行き逢ってな。さっきまでギルドに報告してたんだ」 

「えぇっ、その子達は!?」

「助け出して全員無事だ。まったく、あんな実力で北の森とはいえ奥まで入って来るなんて無謀過ぎる」

 見つけた時にはもう迷いの魔樹に引き摺り込まれかけており、装備品も溶解液と土にまみれてボロボロだったそうだ。

 幸いなことに怪我はしているものの、全員人の手を借りずに歩いて帰ってこれる状態だったとの事。

「良かった、でもラグナードか偶々通りもかからなかったらどうなっていたか」

「まあな。こういうの、新人時代に割りとやらかす奴らが多いんだ」

 パーティーメンバーが人族しかいないにも関わらず、幻術を甘く見て対策を立てずに、新装備を手に入れた高揚感も手伝って突っ走っちゃったらしい。今頃はギルド職員によって、別室でこってり絞られているとか。

 魔道具屋のマールさんにも聞いていたけど、本当に人族には幻術耐性がないんだね。
 パーソナルレベルが高いと徐々に耐性が出来てくるそうだけど、それまでは危険と紙一重なんだ。
 今回の冒険者さん達は、獣人族で特に五感に優れているラグナードが近くにいて、運良く助けて貰えて幸運だった。というか彼も今日は北の森にいたのか。



「ローザ、彼が例の?」

「そう、紹介するね。彼が獣人族のラグナード。私も前に一度、危ないところを助けてもらった人。そして、こっちが今、パーティーを組んでいる人族のリノです」

「よろしくお願いします」

「おう。こっちこそ、よろしくな」

 この町でようやく再会できたことだし、あの時助けて貰った事に改めてお礼を言う。
 もう本当、ダメだと思ったもんね。絶体絶命のピンチに、格好良く登場して助け出してくれました。

「偶然そうなっただけで、あれは俺も助かったんだよ。ゴブリンとはいえ一度にあれだけ群れると危険だからな、一人で抜けるのは苦労するんだ。派手に魔法を使えるローザがいて、ゴブリン達も浮き足立ってたから簡単に蹴散らせただけだ」

 それは謙遜が過ぎると思う。すっごく強かったもん。



 軽くそれぞれの自己紹介も終わったので、さっそく本題入る。
 
「それで今日、こうして来てくれたって事は、パーティー結成について前向きに検討してもらえるって思ってもいいのかな?」

「あぁ、そのつもりだ。人族の町では森の侵略を食い止めるのが最優先だからな。こっちもエルフが一緒だと魔力に余力をもてるし、短時間に討伐と浄化が出来るから助かる」

「それなんだけど、私達も今日北の森で結構探し回って……でも一体しか見つけられなかった。そんなに侵略が進んでいるっていうのが信じられないというか」

「確かに森の浅い部分では少なくなったよな。だが、侵略っていうのはやつらが中奥まで出て来ると認定されるんだ。俺は今日、そこまで行ってきたが他にもスモールトレントや、それに一体だけだが霧の魔樹にも出くわした」

「迷いの魔樹以外にもそんなに……知らなかった」

 ラグナードが遅くなったのは、その報告も併せてしていた為らしい。ギルドも警戒レベルを引き上げると決め、八級以上の冒険者に強制依頼を出す方針を固めたとか。今まで以上に危険だと認識しといた方がいいと教えてくれた。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,160pt お気に入り:1,650

王子を助けたのは妹だと勘違いされた令嬢は人魚姫の嘆きを知る

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,322pt お気に入り:2,675

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:205pt お気に入り:163

完堕ち女子大生~愛と哀しみのナポリタン~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:823pt お気に入り:66

【完結】【R18】結婚相手を間違えました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:724pt お気に入り:128

可哀想な私が好き

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,941pt お気に入り:540

潔癖の公爵と政略結婚したけど、なんだか私に触ってほしそうです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:38,006pt お気に入り:770

三度目の嘘つき

恋愛 / 完結 24h.ポイント:837pt お気に入り:1,915

処理中です...