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第一章 辺境の町
第251話 霧雨の降る朝
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翌朝、いつも通り開門時間の六時に間に合うよう、二人して早めに起床する。
昨日のお昼過ぎから降りだした雨が気になって、外の様子をそっと伺ってみた。
ガラス代わりにスライム素材が嵌め込まれた窓は、割りと透過性が高い。夜明け直後でまだ少し薄暗いけど、『暗視』スキルのおかげで、霧のような小雨が降っているのがはっきりと見える。
「雨、止んでないね」
「う~ん、本当ですねぇ。でも、このくらいなら何とか行けそうじゃないですか?」
確かに、昨日よりずっと雨足は弱まっているようだけど……。
「じゃあ一応準備して、ラグナードとも相談して決めようか」
「そうですね。判断はベテラン冒険者さんにお任せした方がいいですし」
「うん」
そう言うことになったので、さっそく朝の支度をしていこう。
革鎧を着込み、魔鉄入りの短剣と新たに買い換えた万能ナイフをベルトに差してから懐中時計を懐に仕舞う。
「物理耐性+2上昇」「幻術耐性+3上昇」「MP全回復+2上昇」のブレスレットやペンダント型の魔道具が三個、きちんと装着されているかも確かめていく。
ベルトに取り付けた皮製のポーチの中には、ポーションが入れてある。劣化版の下級パワーポーションで、HP・MP回復効果のあるやつだ。
じわじわと効いていく魔道具や支援魔法と違って即効性が売りだけど、正規の物と違って効き目が落ちる。でも半額で買えるからいいの。回復率は変わんないし、回復速度が落ちるくらいだから。
「いつかは正規品のポーションを常備したいです」
リノも自分の分のポーションを確認しながら言う。
「お金に余裕が出来たらね」
「……先は長そうですね」
「まあね」
だって、正規品は一本600シクルだよ!? 日本円にすると六万円……お金のない冒険者にとっては、消耗品にこのお値段はキツいっ。安全に冒険するためにも本当はきちんと良いのを買っておきたいんだけどね。
そういうリノも準備が終わったようだ。
彼女の装備品は、元がほとんど中古品だった事もあってこのところ入れ替わりが激しい。
前衛だし、トレントとの連戦で無くしたり壊れたりしたものが多かったんだ。
革鎧や籠手、万能ナイフまでは手が回らなくてちょっとくたびれたのをそのまま使っているんだけど、メインの武器である投擲用の投げナイフや短剣は順次新調していっている。
他にも、以前私がゴブリンから奪った長剣も壊れたので、半剣と呼ばれる短剣と長剣の中間の長さの武器に買い直していた。
これは、刃渡り50cmほどの片手剣で、初心者にも軽くて扱いやすい。狭い場所での戦闘にも便利だからと薦められたんだよね。私もお金が貯まったら買う予定なんだ。
障害物の多い森の中で使うのにいい武器だし、買って良かったと本人も言ってた。でもさ、武器って高価なんだよ……。
そして、魔道具も高価だよね。リノが持っているのは、「幻術耐性+3上昇」のブレスレットと「MP全回復+1上昇」のペンダント、付与魔法の「物理耐性」と「俊足」が付いたブーツの三点。
これがあるおかげで、随分と冒険が楽になったんだけど、やっぱりお金が紙屑のように飛んでいったよね。
当然、正規品のポーションを買えるほど手元に残らないわけで……。
「私達って、ずっとお金がないって言ってますよねぇ」
「そうね」
「一日で結構稼ぐ時もあるのに……」
「うん」
「あっという間に、消耗品とか装備の新調費用とかに消えてっちゃうんですよ……」
「ねっ。携帯食とか、節約出来るところはちゃんとやってるのにね」
「ですよね? 私達なりに工夫して頑張っていると思うんですけど」
これ以上、どうすればいいのか良い案も浮かばず、二人してため息をついた。
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