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第一章 辺境の町
第259話 延寿の樹の葉
しおりを挟む早速、手袋をしたまま慎重に拾い上げてみると、掌に乗るほど小さいのにずっしりと重たい。たっぷりとミルクを含んでいる証拠だ。これ一つで小さなカップ一杯分になるんだとか。
採れたてを搾り取り、加熱処理することでかぶれの原因となる毒素も消える。そうして加工されたミルクは、原液のままでは濃すぎるのでお湯などで薄めてから飲むんだけど、美味しい上に様々な効能もあって栄養価も高い為、高値で取引されるらしい。
特に、傷のないものほど効能も高いからいい値が付くんだとか……。普通は五日程で劣化が始まるのに、無傷だとその倍くらいは鮮度が保たれ効能も落ちないからって。
今回は、殆どの茸がきれいな状態で採取出来たと思う。ふふっ、換金するのが今から楽しみです!
期待は高まるけど、その前に一つ問題が……。
どうすれば、汁気が多くて衝撃にも弱い乳茸を損ねず町まで運んで行けるか……。まだ来たばかりだし、あと半日程は討伐に採取にとアクティブに動くことになる。緩衝材のようなものが何かあればいいんだけど。
「それなら、これに入れてけばいい」
「あ、やわらかい……」
「本当だ。手触りもいいね」
迷っていたら、ラグナードがフワフワの布とよく鞣してある革製の袋を出してくれた。
なるほど、こうゆう小物も必要になってくるのか……勉強になります。
「ありがとう」
「うん。一つずつ包んでおけば破損を防げるからな」
「はい、分かりました」
さっそくお借りして、傷つかないように丁寧にくるみ込んでから、重ならないようにして革袋に仕舞っていった。
後は背負子の一番上に乗せ、なるべく揺らさないよう注意して運べばいいよね。
次に、最初の目的である薬樹、延寿の樹の葉を採る事に……。
水光茸、三つ葉の花、魔石と共にパワーポーションの原料となる素材らしい。
成木だと10m程の高さになる常緑樹で、私の感覚では十分大きい方だと思うんだけど、この世界の樹木は全体的に巨大だから低木扱いになるみたい。
100m級ので普通サイズなんだよ……。ここにいると、何だか自分達が小人になっちゃったかのような気分になるなぁ。
薄暗い場所でも育つために、乱立する巨木群の隙間に紛れ込んでしまうので、ラグナードが案内してくれなければ発見が難しかっただろう。
太陽の光が届きにくい中、垂れ桜のように垂れ下がった枝についた可愛いハート型の葉っぱは、僅かな光を反射し淡く輝いている。
葉色は、緑から朱金までのグラデーションになっていて、まるで紅葉し初めたばかりの樹みたいな見た目だけど、色彩によって効能が変わったりするんだろうか?
疑問を解消するためにもさっそく『鑑定』してみると……。
【 延寿の木の葉:薬樹葉
効能:HP回復効果 持久力回復効果
可食:生食不可
熱処理をすれば可能だが、苦味が強い
採取:魔素を溜め込み、朱金色に変化した葉を採る
樹全体に毒素を持ち、触ると危険
僅かな刺激を与えるだけで、葉を落として
攻撃してくるため注意 】
となっていた。やっぱり葉の色には意味があったらしい。
「朱金色の葉を探せばいいんだね。続きは……って毒持ちだから接触も僅かな刺激も危険で駄目って……えっ?」
「うんうん、そうなんだよな」
「……それは難しそうです。僅かな刺激も駄目っていうと、樹から直接葉っぱを採るときの振動でもいけないってことなんでしょうか? それに何かの拍子で、頭上に葉を落とされでもしたら……」
「確かに、危険だよね。専用の道具が必要なのかな」
「心配しなくても大丈夫だ。今から教えるから。分かってしまえば案外簡単な事なんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ。まずはここから少し離れようか」
「うん、分かったよ」
「了解です」
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