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第一章 辺境の町
第258話 上手な採取の仕方
しおりを挟む今回の乳茸は魔物化したてという事もあり、一体の大きさはマグカップサイズと割りとちんまりしている。
なので攻撃魔法を使うには的が小さすぎるというかね。水玉茸よりは大きいけどこの茸は動くし、しっかりと土に埋まって見えない足元の触手だけを狙い、切り離すのは難しいと思うんだ。
少しでも動かれたら他の部位に当たってしまって、中身を損ねる可能性があるしね。
せっかく短剣術スキルも取ったので、最初からそれを使って攻撃するつもり。その方が確実なはす。ゆっくりと近づけば、気づかれにくいらしいし。
魔物化してもまだ魔石がない状態のフォレスト・ファンガスは、五感が発達しおらず未成熟だから敵の接近を知る方法が限られていて、身体に伝わる空気の振動を頼りにするしかないみたいだからね。
――『隠密』スキルを発動させ、なるべく気配を消し、忍び足で近づいていく。
逃げられないよう三方から囲んでジリジリと距離を縮め、短剣が届くところまで来た。
『鑑定』スキルを持ってないので見分けるのに自信がないリノには、群生している中に紛れているフォレスト・ファンガスの位置を、空気を揺らさないよう注意しながら指を差してそっと教える。うん、微かに頷いてくれたし大丈夫そうだね。
――私も目の前の一体に、集中する。
気づかれて暴れられては傷が付いてしまう。素材としての価値を下げない為にも、本体を避けて慎重に狙いを定める。
何とか一撃で仕留めたい。
脇を締め、低く構えた短剣を地面すれすれを狙い、まっすぐに突き出すっ。
確かな手応えとともに、刃が柄と触手の切れ目をシュッと貫ら抜いた。
よしっ、狙い通り一撃で採れた!
ポロンっと転がったのを見てみると、柄の部分からきれいに切り取られていて、大事なミルクも溢れていない。よかった!
とりあえず採れたのは後で回収するとして、まだ気づいていない、少し離れたところのやつも採取しようかな……。
三回目からは近くで空気が動いたのを感知されたらしく、私達の接近を気づかれた。隠密行動はここまでか……。
動き出そうとしているのか、地中からは触手がゆっくりと這い出てきている。
ただ、幸いなことにフォレスト・ファンガスの攻撃のタイミングは分かりやすいはずなんだよね。
胞子や体液の白い汁を飛ばす前に、頭というか傘の部分を一旦後ろに反らせる動作をし、その反動で勢いをつけて飛距離を稼ぐみたいだから。
今回は生まれたてというか、魔物化した直後に来れた事もあって余計に動きが鈍く、スローモーションを見ているようだったので助かった。
この群生地にいる魔物化した茸は元々数が少なくて、三人で一斉に狩っていたため残りは僅かだ。
見つかるのを気にする必要がなくなったので、スピード重視でいくことにする。
反撃してくる前にと攻撃し、三人で倒しきった。ラグナード以外は失敗した時もあって、少し汁が掛かってしまったけどね。
でもすぐに聖魔法の『治療』で治したので、かぶれて赤くなった皮膚も即座にきれいになった。よかった。
最終的には、合わせて十一個を手に入れる事が出来たよ。初めてにしては中々の成果です。
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