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第一章 辺境の町
第257話 フォレスト・ファンガス
しおりを挟むさて、乳茸のフォレスト・ファンガスについてだけど……。
ある程度魔素の濃い森の奥じゃないと魔物化しないけど、その条件さえ満たせば通年採取が可能らしい。
中奥に入ったばかりで、北の森全体から見ると比較的浅いこの場所だと、普段なら魔素が少ないため瘴気も薄くて見つけるのは難しいそうだ。
今日来れて良かったぁ。雨がもたらしてくれた恵みに感謝です。
「折角だし、まずはこれを採ろうか。やり方は分かるか?」
「うん、大丈夫」
「お任せくださいっ。二人とも予習はバッチリです」
これ、シルエラさんの所で借りた「森の魔物辞典」にも載ってたヤツなんだよね。
結構詳しく解説されていて、十日間の貸し出し期間中、リノと二人で勉強したよ。
――まあ、必死に読んでいた彼女には申し訳ないけど、私はちょっとズルした気分になったんだけどね……『鑑定』スキルのおかげで。
中々レベルの上がらないと言われている技能スキルだけど、『鑑定』には一読した情報を全て取り込み、記録する機能がある事が徐々に判明したんだ。初めは分からなかったんだけどね。
勿論、意識的に強く覚えようとしないと駄目だし、そうやって取り込んだ情報も自動的に出てくる訳じゃないから、ちゃんとスキルとして発動させる必要はあるんだけど。
自分が天才になったと勘違いしそうな程には、優秀な機能だった……素晴らしい。
この世界に来る前の私の記憶力がどうだったのかは記憶がないから不明の為推察になるけど、多分強化されたんじゃないかな。暗記に苦労しなくていいなんて素敵!
ともかく「森の魔物辞典」には、フォレスト・ファンガス倒し方もきちんと載っていたので覚えている。
――確か乳茸みたいな普通の茸が魔物化すると、柄の部分の下、土と接するところに、蛸足のようなウネウネとした触手が何本か生えてくるんだよね。
触手は主に移動したり魔素や生命を吸収するのに使われるから、直接さわると危険なんだよ。人の魔力も大好物だから、微量とは言え吸い取られちゃうし。
採取するには、魔物化した触手だけを上手に切り離せれば、成功だと書いてあった。
ただし『鑑定』結果にもあるように、白い汁を噴射して攻撃してくるので注意が必要。
直接皮膚に掛かるとかぶれちゃうからね。まあ、聖魔法の『治療』で治せる程度なので、そこまで強いものではないらしいけど……。
森には様々な茸が生息していて、フォレスト・ファンガスに変幻するものも多く、中には麻痺や痺れ、幻覚や眠りの胞子を振り撒いて攻撃してくるタイプのもいるみたい。
乳茸のフォレスト・ファンガスの場合は、攻撃手段が白い汁の噴射の他には胞子を放出して目眩ましをかける程度。
胞子には特に害はないし、油断しなければ大丈夫なはず……。
「うん、その通りだ。まずは、白い汁を使って攻撃させないことが大事だ。生のままだと毒だが、加熱すると甘くて美味しいミルクになる貴重な素材だからな」
「なるほど。確かに攻撃で中身を吐き出されて、どんどん減っていくのは勿体ないです……」
「先に一撃で倒せばればいいんだけど。そうすれば、素材を余さず採取できるし」
「そうだな。幸い、まだそれほど動けないはずだし、五感も鈍いから気づかれずに近づけるはずだ。手分けして倒すぞ」
「「了解!!」」
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