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第一章 辺境の町
第256話 乳茸
しおりを挟む聞いてみたら、ラグナードも『マップ作成』スキルを持っていて、目的の延寿の樹がある場所はマッピング済みだった。迷わず無事にたどり着けたよ。
「おっ、ラッキーだな。乳茸が生えている」
ラグナードが嬉しそうに言った。どうやら高額対象の茸を見つけたらしい。ほほう、早速お宝発見ですか!
「えっ、どこですか?」
「ほら、あそこだ。ちょっと遠いから分かりにくいと思うが、延寿の樹の根元をよく見て。茶色くて歪な円形のがあるだろ?」
言われた通りよく見てみると、確かにそこにある。落ち葉に似た保護色をしており、周囲に溶け込み上手く隠れていた。
「あっ、分かりました、あれですねっ。……もしかして、群生してたりしてます?」
「うん、正解。でもここにある分は……まだ殆ど採れないな」
「そうなの?」
どれどれ? 『鑑定』してみると……。
【 乳茸:薬用茸
効能:免疫力強化作用 滋養強壮作用 鎮静作用
可食:生食不可
たっぷり含んだ白い汁を搾り取って加熱する
ほんのり甘めのミルクのような味わいで美味
鮮度が良いほど効能が高く、高値が付く
採取:薬樹の根元に出来るが、採取可能なのは魔物化したものだけ
攻撃手段は茸の中身である白い汁の噴射で、
皮膚に触れるとかぶれるので注意
魔物化した部分を切り取って採取する
適量の魔素があれば同じ場所に何回も生えてくる 】
「本当だ……薬用茸ってなってる。他のも鑑定したけど、同じのが多いなぁ。フォレスト・ファンガスになってるのは少ない」
「そうだな。魔物化したものが、フォレスト・ファンガスと呼ばれるようになる。そうしたヤツだけ、採取が可能になるんだ」
「珍しくて効能も高く、美味しい茸だって聞いていますけど。こんなにたくさんあるのに……残念ですね」
「でも少しはあるよ。ほら、あそこ。じっと動かないけど、まだ魔物化したばかりなのかなぁ?」
魔物だと、問答無用で襲いかかって来るもんね。
「成り立てってことですか……う~ん? 見ただけでは区別がつかないです……」
「まあ、魔物化したばかりのヤツには魔石も無いし、鑑定スキルがないと難しいかもな。雨の後だから容量を越えやすかったんだろうけど、魔力も微量だし感知しにくいんだろ」
魔素溜まりが多い森の奥ほど瘴気も濃くなり、魔の物が生まれやすい環境になっていくが、ここら辺でも魔素を多く含んだ雨上がり後だと、その身に取り込む量が増えて普通の植物や茸、野生動物等も魔物化しやすくなる。
魔物は主に魔素溜まりから発生するが、その他にもスライみたいに無性生殖で分裂し増えていくものもある。
こうして生み出されたものは、必ず体内に魔石があるんだけど、今回の乳茸のように魔素を多く取り込んで魔物化してしまったものには最初、魔石がない。なので、厳密に言うとこの状態はまだ魔物じゃないらしい……。
長い時間をかけて瘴気に変化した魔素に侵蝕され、徐々に魔物へと変幻していく過程で体内に魔石が形成されていくんだとか。
ちなみに魔物と呼ばれるものは全て、有性生殖では増えないみたい。なので、この世界では魔物と人類がどうにかなって繁殖するなんて事は、起こり得ないんだよね。
女子としてはとっても安心出来る情報でした。本当、そこは異世界王道テンプレじゃなくて良かったよ……。
応援ありがとうございます!
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