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第一章 辺境の町
第231話 集中
しおりを挟むその注意が逸れた一瞬の隙をついてすかさず蔓状の魔樹が触手を伸ばし、襲いかかってきたっ。
「うおぉっ? なんだぁ!?」
「もう来たっ。さっそく勘づかれたよっ 」
「なんて賢いんだ、触手の癖に!」
「本当、この機を見る能力、すごいですよねっ」
「何誉めてんだよっ。今それどころじゃないだろ!」
「音と熱に反応していますっ。気をつけてっ」
「……あっ、上からも来てますよ!」
「何!?」
「嘘だろ、おいっ」
「みんな、できるだけ距離を取るんだっ。視界を確保しろ! 切れる者は触手を切り落とせっ。後のことは気にするな!」
「「了解!!」」
動きを予見していたかのように、触手が一斉に動き出したっ。
複数の手足を操る一体の魔物のように、意識を持ってこちらの弱い人員、隙のある場所へとよどみなく……。
こんな時のために全員、スライム製の全身タイツを着用しているので大丈夫だとは思うけど、少しでも素肌に密着されたら魔力を吸い取られてカラカラに干からびてしまうらしいので気を付けないとっ。
間近に見るこの蔓性の魔樹の動きは、なんと言うか……蛇がのたくっているような、それが何本も互いに意思を持って絡み付き蠢きあっているような気色悪さがあった。
本能的な嫌悪感から、思わず竦みそうになってしまう。ううっ、苦手な動きだ……。
「うらぁっ!」
「せいゃあぁぁっ!」
向かってくる触手には、容赦なく何振りもの剣や斧で応戦していく。
蠢く魔樹の根がまだ地中には張り巡らされていないと事前の調査分かっているので、足元を警戒せずに済むのはありがたい。全力で踏み込んでいけるから。
巨大な剣の恐るべき一撃が、次々と伸ばされる触手を薙ぎ払う。
普段は樹木を切るのに使われる斧が、何度となく渾身の力で振り下ろされる。
蔓状の魔樹の防御力は高い。
高レベルの冒険者や魔鉄製の武器以外の生半可な攻撃だと、表皮を深く貫くことができない。
なので皆、思い切り振り抜いている。
一回の威力は弱くとも、何度も受けてしまえば流石にダメージは蓄積するから、諦めずに黙々と手を動かす。
ガンガン攻めていると、切り落とされる触手も出てきた。
ラグナード達が蔓状の魔樹を攻撃している間にも、ゴブリンやポイズンラットの一団から攻撃は続いている。
こちらの方にも人手を割かなきゃいけないから、戦力が分散されている今、何気に個別に掛かる負担が増してきたんだよねっ。結構、忙しいんですけどっ。
ただ、スライム製の全身タイツを着ているおかげで、全員一度も戦線を離れることなく参加できているため、この一人でも欠けて欲しくない状況においてその点は高く評価できる。見た目とは裏腹の優秀さを、遺憾なく発揮してくれた。
一体ずつは弱い魔物とはいえ、時間差でかなりの数を相手取らなきゃいけないし、魔樹と魔物に挟み撃ちにされた状態なので、一瞬の油断と隙が命取りになりかねない危うさもあるからさ。
命大事にっ、だからね。集中力を切らさず、頑張って倒していくよっ。
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