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第一章 辺境の町
第244話 危険だけどおいしい話
しおりを挟む他にも一人、人族の使い手がいたらしいんだけど、その人は人族らしく総魔力量がエルフに比べて少なく、全てを対応するには魔力不足らしかった。人族で聖魔法の使い手は希少なので、プライドが高いから本人は認めないだろうけどね。
そもそも『浄化』とは、本来アンデッド系を討伐するのに使うものだからって断わったみたい。
私もそろそろ忘れそうになってたけど、確かに身体や洗濯物をきれいにするのがメインじゃないから、その言い分も分かるけど。
生活魔法の『洗浄』と『乾燥』、『殺菌』を組み合わせれば、ほぼ同じ効果が得られるというのに、何故わざわざ聖魔法の使い手に頼むんだと言われたらしいよ。
まあ、確かにそっちが本来の正しいスキルの使い方だから、反論しにくいよね。
ただ、聖魔法の『浄化』に比べると、生活魔法はその工程にお金と時間が掛かり過ぎるという問題があるみたいでさ。
『洗浄』に高価な聖水を利用する必要があるし、生活魔法とはいえ、一人で完璧に三つの工程を出来る人がフリーで中々いないし。
仮にヘッドハンティング出来たとしても、又々コストが嵩み継続的な生産が難しくなり、出来れば庶民にも手の届く範囲の価格に押さえたいっていう、彼らの想いが叶わなくなる。
三つの工程を分業出来ればよかったんだけど、魔力の質が違うと何故か失敗するみたい。
地味に手入れの要求が高くて、現時点の予算で引き受けてくれる人を探しだせなかったみたいなんだ。
職人さん達が資金繰りも含め、困り切っていた現場を見て、一回だけ実験に付き合うはずが、こう……ズルズルとねっ。
「工房の人達も新しい技術に張り切っていましたし。それに彼らの中にもその、水虫に悩んでいる人がいて他人事じゃないらしくて。あんなに毎回喜ばれるとちょっと断りにくくなっちゃいました……。せめて早朝の来客がいない時間帯に、こっそり行ってやってるんですけど、ね」
私の懐事情的にも全身タイツのリサイクルは、安全な町中で、短時間で高額を稼げる仕事だから、出来れば続けたいんだけど。
危険なのは、主に権力者や商人に目をつけられる事だけで、それさえなければおいしい話だし。
「もう、ローザったら。仕方のない子ねぇ」
「す、すみません……」
「ここの領主様は良心的な方だけど、目をつけられたら厄介だわ。十分気を付けるのよ?」
「はい、シルエラさん」
「でもそうなってくると益々、身を守るためにも早めに四属性魔法を身につけて欲しいわね。今日もこれからやっていくでしょう?」
「ええ、出来ればそうさせていただきたいと思ってます」
「いいわ。じゃあ、遠慮なく鍛えるわよっ」
「よろしくお願いします!」
頑張ろう! シルエラさんに心配をかけ続けるのは心苦しいし。早く強くなって安心してもらわなきゃねっ。
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