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第15話 宣言
しおりを挟む周囲から注がれる、好奇心むき出しの視線をものともせず散々いちゃついていた彼らは、シルヴィアーナたちを見つけると一直線にこちらへ向かって歩いてきた。
「……皆様、ついにここへと来られますわよ」
「あら、いやだ。見つかってしまいましたのね」
「わたくし、切実にお相手したくありませんわ……絶対に面倒なことになりますもの」
「同感ですわ、ダフネ様」
四人の令嬢がいくら嫌がろうとも、彼らの歩みが止まることはない。
ランシェル王子達の進む方向にいた紳士淑女の面々は、巻き添えを食っては堪らないとばかりにそそくさと道を開けていく。
そのため、あっという間に目の前まで来られてしまった。
「シルヴィアーナ嬢、話がある」
先ほどまでサリーナに向けていた蕩けるような甘い声と優しい笑顔は影を潜め、厳しい表情で挨拶もなしにいきなり切り出してきたランシェル王子。
豹変した王子に臆することなく、シルヴィアーナは微笑みを浮かべながら王族に対する型通りのカーテシーを完璧にこなしてみせた。
「ごきげんよう、殿下。お久しぶりにございます。お話でしたら、ランスフォード公爵にお願いして別室を用意していただきましょう。そちらで承りますわ」
今宵のパーティーには外国からの招待客も多く来ている。この国に仕える臣下の一員として、できる限り醜聞から王子達を遠ざけなくてはならない。
事前にランスフォード公爵にも話を通し、いざという時には協力してくれるようにと頼んであった。
「いや、その必要はない」
だが、シルヴィアーナの気遣いはあっさりと無視された。王子は、その場で話を続ける気でいるらしい。
サリーナの華奢な肩を優しく引き寄せると、己の婚約者をキッと睨みながら高らかに宣言する。
「シルヴィアーナ・バーリエット公爵令嬢! 今、ここで……」
「あっ、殿下……お待ちになっ……」
「黙れ! 貴女との婚約を解消する!」
シルヴィアーナが再度、止めようとするのを遮り、そう言いきってしまった。
「今まで散々、サリーナ嬢を寄って集っていじめるように指示していたのだろう? 身分を振りかざして弱い立場の彼女を傷つけたこと、いくら貴女でも許しがたい」
続けて彼女を糾弾する言葉を並べ立てる。
勿論、これで終わりということはなく、後ろ側に控えていた側近たちに意味ありげな視線を送ってみせた。
その視線に、心得たように頷いた彼らは一歩前に出てそれぞれの婚約者に向き直った。
順に自らの婚約者の前に移動し、こちらも宣言する気満々である。
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