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第14話 突っ込みどころが満載です
しおりを挟む「あらあら……もはや、どこから突っ込めばいいのやら分かりませんわね、ダフネ様?」
「ええ。突っ込みどころが満載過ぎて頭が痛いですわ。はぁ……あの毒花さん、どうあってもわたくし達を悪女に仕立てあげたいようですわね、ルイーザ様」
「腹立たしいこと。淑女の礼儀等をお教えしたくらいで悪女扱いされては堪りませんわよっ」
ルイーザが握りしめた扇が、ミシミシと嫌な音を立てる。
「それにわたくし、あのクレイブ様から強すぎて男がいらないとまで言われましたわよ。とんだ戦闘民族扱いしてくださいましたけれど、ご自分だって脳筋のくせによくおっしゃいますこと! 辺境の地を治める領主の娘として強くなければ魔物を蹴散らせませんわよっ。貴方好みの、思わず守ってあげたくような可愛い女じゃなくて悪かったですわね!」
「ル、ルイーザ様、落ち着いてくださいませっ」
怒り心頭のルイーザを、慌ててアンジェリーナが宥める。
「……なんなんですの、あの殿下は」
「シルヴィアーナ様?」
「あの女嫌いの殿下が、三文芝居のようなセリフを吐かれるなんて……わたくしの中のあの方と隔離しすぎていて気持ち悪いですわ。ゾワゾワが止まりません……」
とても見てはいられないと、顔を反らす。
「確かに。殿下は容姿端麗で洗練されたお振る舞いをしておられましたが、女性の扱いに関しては今一つでしたものね……。辟易していらっしゃったと言いますか」
「そうですわね。シルヴィアーナ様とのご婚約が決まった時期が遅かったですから、その間に貴族令嬢達の猛アピールを受け続けられてうんざりなさっておいででしたから。女性と接する時はいつも、口数が少なく表情筋も死んでおられましたものね」
ドン引きする気持ちは分かると言うように、ダフネ達は頷きあった。
「その殿下を落とすとはたいしたものです。さすがに、毒花令嬢と呼ばれるだけはありますこと」
「あれほど手慣れていらっしゃるのに殿方に慣れていないだなんて、おっしゃっていてよ。殿下達も素直にそれを受け入れておられますし。白々しい」
「厚顔無恥も甚だしいですわ。若くて見目の良い令息達に片っ端から声をかけていらっしゃったのに」
「本当にね。今も殿下にベッタリと引っ付いておいて、どの口が言うのでしょう」
ダフネの言葉を受けて、ルイーザも吐き捨てるようにそう言うと、不快げに眉をひそめる。
「……あそこまであからさまだというのに疑問に思わないものでしょうか」
「さぁ、殿方の考えることはわかりませんわ。いいえ、疑問に思わない……ということがもう、術中に嵌まっておられるのでしょう」
困ったものだと、四人は揃ってため息をつく。
「ええ。あの方が庶民感覚が抜けないとか何とか、寝ぼけたことをおっしゃっても不自然さに気づいていないようですものね?」
「お高い夜会服とバカ高いピンクダイヤモンドの装身具をおねだりされていることにも、気づいておられないご様子……あんな稚拙な言葉にコロコロ転がされるなんて情けないですわ」
「その上、流れるように自然にもう一着、ドレスをおねだりされていますし」
恐ろしいくらいの手際の良さだった。
「凄腕ですわねぇ。詐欺師としても立派にやっていけそうですこと……」
「あら、諜報員としての素質もありますわよ。ただしその場合、接触する相手の性別は男性に限定されますから二流ですけれど。同性からの反発を招くやり方しか出来ないようでは、使いどころも限られてしまいますから」
「成る程。男性特化型なら優秀な諜報が可能そうだということですのね」
「ええ……但しそれが全て、彼女の実力だったら……と言う注釈はつきますけれども、ね」
意味深な一言は、その後の出来事を示唆していた言える。
華やいだ夜会の空気はこれから、王子達の出方次第で打ち破られることになるかもしれないのだから……。
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