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第18話 反撃
しおりを挟む――令嬢達の華麗なる反撃が今、始まる。
まずは、ランシェル王子達の婚約破棄宣言を一通り聞かされた婚約者達のなかで、一番身分が高いシルヴィアーナが口火を切った。
表情を読み取られないよう、扇子を開いて口元を隠しながら……。
「まあ、殿下……それに側近の方々も。いきなりこのような場で何をおっしゃいますの? 非常識でしてよ」
無駄かと思いながらも一応、嗜めてみる。
「ふんっ! 貴女の悪事を白日の元に晒すためにやむを得ず取った処置だ。こうでもしないと、いくらでも言い逃れをしようとするだろうからな」
「殿下のおっしゃる通りですよ。公爵令嬢という身分を笠に着て、子爵令嬢のサリーナにした嫌がらせの数々、ご存知ないとは言わせません!」
「忌々しいことに、僕達の婚約者が貴女の悪事に手を貸したことは分かっています。アンジュリーナ達を使って他の令嬢達をも煽動し、何の落ち度もないサリーナ嬢の評判を地に落とすような真似をしたでしょう? 今更、無かったことには出来ないのですよ」
ランシェル王子に追随して、リアンやジョナスも非難の声をあげる。
突然始まった婚約破棄宣言に続いて、自らの婚約者を貶める発言をはじめたランシェル王子達を、パーティ会場にいる招待客らも呆気にとられた様子で見つめている。
「何のことでしょう? わたくしもここにおられる皆様も、全く心当たりがございませんわ?」
「心当たりがないだと!? 醜い嫉妬心と権力欲からサリーナ嬢に私達に近づくなと迫ったことを忘れたか!?」
シルヴィアーナの言葉に王子が声を荒らげる。
「あら、わたくしは別に彼女に嫉妬しておりませんし、権力欲なども特にありませんのに……」
「嘘をつくな!」
「はぁ、真実なのですが……まあ、よろしいわ」
それ以上言っても無駄なことはシルヴィアーナには分かっていたので、苦々しく思いながらもここは早々に訂正を諦める。
「それと近づくな……でしたか? それは確かに申し上げました」
「ふんっ、認めるのだな?」
「ええ。ボートン子爵令嬢は淑女として、あまりにも酷かったものですからさすがに見逃すことが出来ませんでしたの」
「な、何だと!?」
「だってその方、婚約者のいらっしゃる殿方に対するお振る舞いが目に余るんですもの。ところ構わずベタベタと触るわ、ビッタリ体を押し付けては必要以上にまとわりつかれるわで……あまりの惨状に思わず目を疑いましたわ」
本当に困ったものです、とため息混じりにサリーナの尻軽っぷりを力説するシルヴィアーナ。
「とっても非常識甚だしくていらっしゃったので、人前では慎む行為だと教えて差し上げただけですのよ」
「ひ、ひどいです。わ、わたしそんな風にまとわりついてなんていませんっ。ただ、皆様と仲良くしたくてお話ししていただけなのに!」
か弱い令嬢の振りをして、弱々しく震えながら反論してみせるサリーナ。
ランシェル王子とその婚約者であるシルヴィアーナの会話に割って入るという大胆不敵な真似が出来る癖に……わざとらしさに辟易する。
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