皆まとめて婚約破棄!? 男を虜にする、毒の花の秘密を暴け! ~見た目だけは可憐な毒花に、婚約者を奪われた令嬢たちは……~

飛鳥井 真理

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第52話 魅了返しの魔道具

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「それで、そのランドルフがここにいるということは、精神系の魔法に関する調査結果が出たということですか」

 アンジュリーナは彼の協力で確信を得たと言う。

 それを信じるならサリーナのブローチは宝石ではなく魔石で、魅了の魔法が掛けられており、ジョナスもランシェル王子達も騙されていたことになる……認めたくはないが。

 渋々問いかけるジョナスに、ランドルフは頷く。

「ええ。最終段階に入ったと言っていいでしょう。後一つ、確認が出来れば証明が可能となります」

 そう言うと細くて長い指をスッと懐に手を入れ、五個のブレスレットを取り出してみせた。



「その為にも、あなた方五人にはこれを装着していただきたいのですよ」

「……何ですか、それは?」

「ボートン子爵令嬢の持つ魔石から皆様を守るものです。魔法省長官の許可も得ておりますので……さあ、どうぞ?」

 まずはジョナスに渡し、ランシェル王子やリアン、クレイグにも手渡していく。戸惑いながらも、差し出された物を受けとる彼ら。


「もしかしてこれ、魔道具なんですか?」

 ランドルフから渡されたブレスレットを見ながらジョナスが言う。

「ええ。まだ出来たばかりでね。名前がないんですが便宜上、魅了返しの魔道具とでも言っておきましょうか」

「魅了返しの魔道具……必要ないとは思うのですがね?」

「でしたら尚のこと、装着したほうがいい。彼女の主張通り、アレがただのサファイアのブローチかどうかを明らかに出来ますからね」

「……いいでしょう。そこまで言うなら試してあげましょう」

「ええ、どうぞ。個人差はありますが、効果は徐々に現れてきますので」

 サリーナの無実を信じるなら、ここで強く拒否するのは下策だと考えたジョナスは、ランシェル王子達を説得する。

 そして四人全員が、ブレスレット型の魅了返しの魔道具を手首に嵌めたのだった。



 彼らがちゃんと装着したのを確認したランドルフ。

 これでブレスレットは残り一つになった。

 サリーナにつけさせる分だけだ。

 ランドルフが彼女に目をやると、座り込んだまま固まっているのが見える。

 彼女らしくもなく随分と大人しいと思ったが、どうやら動けなかったようだ。リアンが心配そうに彼女の背をさすり、何か声をかけているが反応していない。

 先程まで泣き叫びながら激しく抗議していたのに、急にピタリと黙ったのでおかしいと思った。

 多分、こちら側の陣営にいる誰かが何か細工をしたのだろう。

 思わずアンジュリーナ達のいる方をみると、ルイーザの隣に立つ剣聖と真っ先に目が合った。

 口角を上げ、ニヤリと不敵に微笑んだのを見てピンときた。





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