52 / 138
第52話 魅了返しの魔道具
しおりを挟む「それで、そのランドルフがここにいるということは、精神系の魔法に関する調査結果が出たということですか」
アンジュリーナは彼の協力で確信を得たと言う。
それを信じるならサリーナのブローチは宝石ではなく魔石で、魅了の魔法が掛けられており、ジョナスもランシェル王子達も騙されていたことになる……認めたくはないが。
渋々問いかけるジョナスに、ランドルフは頷く。
「ええ。最終段階に入ったと言っていいでしょう。後一つ、確認が出来れば証明が可能となります」
そう言うと細くて長い指をスッと懐に手を入れ、五個のブレスレットを取り出してみせた。
「その為にも、あなた方五人にはこれを装着していただきたいのですよ」
「……何ですか、それは?」
「ボートン子爵令嬢の持つ魔石から皆様を守るものです。魔法省長官の許可も得ておりますので……さあ、どうぞ?」
まずはジョナスに渡し、ランシェル王子やリアン、クレイグにも手渡していく。戸惑いながらも、差し出された物を受けとる彼ら。
「もしかしてこれ、魔道具なんですか?」
ランドルフから渡されたブレスレットを見ながらジョナスが言う。
「ええ。まだ出来たばかりでね。名前がないんですが便宜上、魅了返しの魔道具とでも言っておきましょうか」
「魅了返しの魔道具……必要ないとは思うのですがね?」
「でしたら尚のこと、装着したほうがいい。彼女の主張通り、アレがただのサファイアのブローチかどうかを明らかに出来ますからね」
「……いいでしょう。そこまで言うなら試してあげましょう」
「ええ、どうぞ。個人差はありますが、効果は徐々に現れてきますので」
サリーナの無実を信じるなら、ここで強く拒否するのは下策だと考えたジョナスは、ランシェル王子達を説得する。
そして四人全員が、ブレスレット型の魅了返しの魔道具を手首に嵌めたのだった。
彼らがちゃんと装着したのを確認したランドルフ。
これでブレスレットは残り一つになった。
サリーナにつけさせる分だけだ。
ランドルフが彼女に目をやると、座り込んだまま固まっているのが見える。
彼女らしくもなく随分と大人しいと思ったが、どうやら動けなかったようだ。リアンが心配そうに彼女の背をさすり、何か声をかけているが反応していない。
先程まで泣き叫びながら激しく抗議していたのに、急にピタリと黙ったのでおかしいと思った。
多分、こちら側の陣営にいる誰かが何か細工をしたのだろう。
思わずアンジュリーナ達のいる方をみると、ルイーザの隣に立つ剣聖と真っ先に目が合った。
口角を上げ、ニヤリと不敵に微笑んだのを見てピンときた。
4
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる