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第53話 因果応報
しおりを挟む(成る程、剣聖様の仕業ですか。貴方が助太刀してくださっていたとは心強い……)
晴れて婚約者になったルイーザに頼まれたのかもしれないが、再び騒ぎだそうとした彼女を静かにさせるために、威圧スキルをかけてくれたらしい。
せっかくの心遣いを無駄にするわけにはいかない。
正気に返る前にと、ぼんやりと座り込んだままのサリーナの手を取り、さっさと装着してしまった。
「え、彼女にもつけるんですか?」
それを見たジョナスが、驚いたように聞いてくる。
「ええ、魔石の影響が彼女にも及んでいるかも知れませんから」
勝手にサリーナの手首に触れたことも許しがたいが、必要だからやっただけだという淡々とした態度にもイライラする。
だが、彼女の身を守るための処置だと言われては不満を言いにくい。
「……ふん、仕方ありませんね」
忌々しげに呟くジョナス。
だがいくら父が了承したとはいえ、このブレスレットにはまだ正式な名前もついていないのだ。
ランドルフ作だというだけでも胡散臭く感じるというのに、試作品の実験に付き合わされるようなものではないか。
(こんな貧相な魔道具で、本当に魅了魔法のような分析の難しいものが分かるというのでしょうか? 信じられませんね……)
自分の手首に嵌まっているものを苦々しく見つめる。
今のところ自分には何の作用もなさそうだが、これをつけられたサリーナは大丈夫だろうか。
彼女の様子が急に心配になり、様子を窺うと……。
「サリーナ嬢?」
名前を呼んでも、ピクリとも動かない。
先程の激高が嘘のようだ。
何故急に、一切抵抗することをやめたのだろう?
「サリーナ、どうした。大丈夫か?」
ランシェル王子が声をかけても、一切反応がない。
(おかしい……我々の呼び掛けに、一言も返ってこないのは不自然では……?)
不安になって近くまで行き、小さな顔を覗き込んだジョナスは息を飲んだ。
彼女の目が、虚ろだったのだ。
意識が無いのか、何も映していないように見える。
嫌な予感が当たったと、頭に血が上ったジョナスは思わず声を荒らげた。
「ランドルフ、これはどういうことですっ。彼女に何をした!?」
「ああ、大丈夫ですよ。落ち着いてください」
「なっ!? こんな魂が抜けたような状態の彼女を見て、落ち着けだと!?」
詰め寄るジョナスに冷静に対応したのがまた、彼の気に障ったらしい。
ますます怒って、ランドルフを怒鳴り付けてくる。
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