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第71話 罪を重ねる
しおりを挟むただし、壊れてもらっては困る。黒幕が捕まるまでは証言できる状態で生きていてもらわなくてはいけない。
美少女の面影がなくなって見た目は随分と変化したが、廃人になってしまった訳じゃないし可能だろう。
本人に知らせるつもりはないが、彼女に装着させた魅了返しの魔道具には、状態異常停止の術式も組み込まれていると、報告を受けていた。
ランドルフと相手の術者の間に、どれだけ力量差があるのかは不明だ。
しかし、一時は魅了返しの魔道具をつけた反動で一気に加齢が進み、生命力さえも削られていたのに症状が落ち着いたように見える。
術式が上手く展開されているのか……全てが終わるまでは死なせずに済みそうだ。
サリーナの状態を注意深く観察してそういう結論を出したダフネは、一旦彼女から意識を外した。
リアンも、まだまだ喚いているサリーナを、今は無視することにしたらしい。
彼には先程から疑問に思ったことがあったからだ。
全てを把握していそうなダフネに尋ねる。
「……何故、サーカス団が隣国のスパイだという結論に?」
確かに各地を転々とするサーカス団であれば、諜報活動にはもってこいだろうとは思う。
彼女達は相手が隣国であるとの確信を持っているようだが、それをどうやって特定したのか。リアンには分からなかった。
「初めは分かりませんでしたわ。ですが、ある切っ掛けで全ての謎が解けましたの」
「それは……なんだったんです?」
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「サリーナ嬢の?」
「ええ。何故、彼女は魅了の魔道具を手に入れた後も頻繁にサーカス団を訪れていたのでしょう? それも、堂々と訪れるのではなく、一人でコソコソと?」
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「そ、それは。言いたくはないが、次に魅了するターゲットの指示を受けるため……ではないのですか?」
彼らが隣国の手先なら、有力な貴族の子息を魅了して次代をメチャクチャにし国に混乱をもたらすのが目的のはず。
リアンの言うとおり、隣国がこの国に禁呪である魅了魔法の魔道具を持ち込んだのはそのためであろう。
改めて今回の件を冷静に分析したリアンは、自分達側近が揃ってサリーナの術中に嵌まってしまった危険を思い、ゾッとした。
結局、彼女がランシェル王子に手を出すのを防げなかったのだ。
ダフネ達はサリーナの異様さに気づいていたというのに……情けない。
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