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第99話 苦悩する王子様達 後編
しおりを挟む魅了返しの魔道具を装着後、魔法が解けたことで強制的にまやかしの愛だったと気付かされてから、まるで霧が晴れたかのように頭もすっきりしてきた。
落ち着いて自身の置かれた状況を整理すればするほど、後悔が湧き上がる。
元々、将来を有望視された優秀な若者達であるだけに現状理解も早かった。
嘆いてばかりいられない。
自分達は現実逃避など許されない立場にいるのだ、どんなに辛くても直視しなければ……と。
頭を抱えていたランシェル王子は、意を決したように顔をあげると側近達に問いかけた。
「私達はこれから最悪、どうなると考える?」
「そうですね。誠に遺憾ながら……やはり一番問題視されるのは、我々が国に対しどこまでの背徳行為をしたのか……でしょうか」
この期に及んで遠慮していても仕方がないと思い、ズバリと切り込んだ。
「お、おい、リアンっ。そんなことを殿下に申し上げるなんてっ」
あまりに直接的な物言いをするリアンに、クレイブは戸惑ったようだ。
王子の方を気にして、チラチラと気まずげに見ている。
「いや、はっきり言ってくれてかまわない」
「殿下……恐れ入ります」
主君の許しを得て、頭を下げると続けた。
「おそらく我々は無論のこと、殿下も詰問を受けることは免れないでしょう」
「そ、そんなっ。私達は決して、国を裏切るような行為などしておりませんっ」
「そうだそうだっ。あの女に騙されていたとはいえ、そこまで自分をっ、自分の立場を見失ってないぞ!」
必死に言い募る二人だったが……。
「ジョナス、クレイブ。一体、それを誰が信じてくれるというのです?」
「「……っ」」
静かに指摘され、反論出来ずに言葉を飲み込む。
リアンじっと見つめられ、先に目をそらしたのはジョナスだった。そして、諦めたように目を閉じる。
「……確かに、リアンが言う通りです」
「ジョナス……」
「私だって認めたくありませんが、疑われる要因に心当たりはない……とは言い切れませんから」
例えば、問題のサーカス団にサリーナと何度も遊びに行ったこと……。
彼女にうまく誘導されて道化師から、ドレスや宝石以外にも薦められるまま高額な商品をいくつも購入したこと……。
また、そこでサリーナを介して知り合った貴族達と親しく交流し、パーティーに誘われれば気楽に参加していたこと、など……。
「あの時は、奴等の思惑や裏で何が行われていたかなんて、考えもしませんでしたよ」
クシャリと秀麗な顔を歪めて吐き捨てた。
今宵、その貴族達が近衛兵に国賊として捕縛されていくのを見て血の気が引いた。
ランシェル王子の側近達とは敵対する派閥に所属している貴族家は、今頃祝杯をあげているはずだ。こんなにおいしい醜聞はない……と。
ここぞとばかりに攻勢を強め、糾弾してくることだろう。
本当に何も知らなかったのだが、そんな主張が認められるとは到底思えなかった。
過去の自分がした迂闊な行動に項垂れるジョナスを見て、クレイブも爪が食い込むほど強く震える拳を握りしめたのだった。
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