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第126話 クレイグ・バラミス侯爵令息の処遇 中編
しおりを挟む「将軍には申し訳ないが、御子息は心身ともに未熟すぎますな」
「左様、左様。騎士たるもの、伴侶以外の女性に簡単に靡かれては困ります」
そもそも騎士は、清廉潔白であれという暗黙の了解がある。
任務上、護衛対象には女性もいるからだ。
身持ちの堅さも職務をこなす上で重要な要素なのである。
ちなみに女性問題の他にも賄賂や賭け事等に手を出さないこと等も、同様に求められる。
バラミス将軍の息子と言うこともあり、そのあたりはきちんと教育されているはずだと思われていたのだが……。
「うむ。遅くに出来た一人息子というのはやはり、可愛いのだろうな」
「ああ。鬼の将軍といえども、我が子には弱い……か」
心情として共感できる部分はないとはいえないが、結果はいただけない。
どうしたものかと考え込む様子の国王に、辺境伯がある提案した。
「よろしければ我が領で一時的に預かりましょうか」
「……それは願ってもない提案だが……良いのか、辺境伯?」
娘を裏切り、家同士の契約を軽んじた不義理な相手だ。
不快ではないのかと尋ねる。
「はい。我々は常に、優秀な戦闘員を求めておりますのでな。一応、即戦力として使えるはずですし」
そこはさすがに将軍も鍛えていると信じたい。
「ならばいっそのこと、第一王子殿下も含めた四人まとめて剣聖殿に鍛え直していただくというのもありか?」
「おおっ、成る程。剣聖様が承知いただけるのであれば、確かにそれも手ですな」
ランスフォード公爵の発言に、会議の出席者から賛同の声が上がった。
「お言葉ですがランスフォード公爵。やめておかれた方がよろしいかと存じます」
「ほぅ。何故だね?」
「あの四人は一度、離した方がお互いの為になるかと」
固まっていては、同じことを繰り返す可能性が残る。
共依存してしまうのではないか、と危惧していることを伝える。
「うむ、それもそうだな。辺境伯のご懸念はもっともだ」
もっともな指摘に納得して頷く。
「それに直々のご指導だと、褒美ととらえるかもしれないからな」
あんな騒動を引き起こしたにもかかわらず、特権意識が強いままの令息達だ。
剣聖など宛がって、自分達はやはり特別なんだと勘違いしてもらっては困る。
正直、その甘ったれた性根を鍛え直して欲しい気持ちはあるが、辺境伯の言う通りやめておいた方がいいだろう。
「ふむ。それもそうか。陛下、どうされますか?」
「そうさな」
当初国王はクレイブの処遇について、ランシェル王子たち四人に同じ処罰を与えようと考えていた。
「全員まとめて魔の森へ放り込もうと思っておったが……辺境伯の言う通り、一度鍛え直してからの方が良いやもしれん」
精神が未熟なままではまた、誰かに利用されかねない。
「確かにあの辺りは帝国と近すぎますからな」
「……成る程、良い案かと」
ランスフォード公爵も納得したようだ。
「ではそのように手配を……」
「うむ」
と言うわけでヴァレンチノ辺境伯領について話し合うついでに、北の塔へ収監後のクレイグ・バラミス侯爵令息の処遇も決まったのだった。
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