異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

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第三部・第10話「許す覚悟と、共に歩む道」

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🌙 料理祭の夜、騎士団テントにて
収穫祭の熱気が静まり、夜の風が心地よく吹き抜ける。
陽介はテントの前で、焚き火を見つめていた。
そこに現れたのは――昼間、陽介に冷笑を浴びせていた王都の商人たち。
彼らは、深々と頭を下げた。
「……本当に、申し訳ありませんでした。
 男爵様の野菜が、ここまでの可能性を秘めていたとは、夢にも思わず……」
「あなたの努力を、無知と偏見で踏みにじったことを深く後悔しております」
「どうか……もう一度だけ、機会をいただけませんか?」
その姿勢は、見せかけではなかった。
背中を曲げ、額を地に擦りつけるような、本物の謝罪だった。
________________________________________
🔥 陽介の答え
焚き火の炎をじっと見つめたまま、陽介はしばらく沈黙していた。
そして――
「……俺はね、“この世界で生きていく”って決めた時から、思ってたんだ」
「“信頼できる人”としか、絶対に組まないって」
商人たちの顔が引き締まる。
「でも――間違えたことを、ちゃんと謝れる人は、“信頼に足る人”でもあると思ってる」
「だから、いいよ。取引しよう」
「……え?」
「ただし――“仲間”として、恥じない行動を頼むよ。
 俺たちは、農業で世界を変えようとしてる。
 利益だけじゃなくて、志でつながりたいんだ」
一人の商人が、思わず涙をこぼした。
「……そんな言葉、誰からも言われたことがない……」
________________________________________
🤝 仲間になった者たち
こうして、かつて陽介を見下していた商人たちは、改めて「ミドリヤマ農場騎士団」と契約を交わした。
• ケルツ商会:運送と倉庫業に強み。騎士団の物流を一手に担う。
• エスフォル商会:市場流通に精通。新野菜のブランド展開を支援。
• ファルモン商会:加工食品に強く、スイートコーンの缶詰を企画。
彼らは後に、陽介たちの構想をより具体的に形にしていく**「戦略の左腕」**として機能していくことになる。
________________________________________
🍷 紬と陽介、夜の語らい
その夜。紬が、手作りのスパイシーな焼き枝豆を焚き火で炙っていた。
「……よく“許した”ね。正直、私だったらビンタしてた」
陽介は笑って答えた。
「“許す”ってさ、誰かのためじゃなく、自分のためにするもんだと思うんだ。
 俺、あのまま怒ってたら、ずっと背負うことになるからさ。そういうの、重いじゃん?」
「……なるほど。さすが“団長”」
「さすが“副団長”に言われると、照れるな」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
________________________________________
🌱 器の広さが、世界を広げる
翌朝から、商人たちは本気の姿勢で畑に通い始めた。
自ら手を動かし、泥にまみれながら、農産物の特徴を学び、商品化へのアイデアを出してくる。
その姿に、騎士団員たちも感動した。
「団長、あの商人たち、いいヤツらっすね」
「うん。たぶん――“許されたこと”に応えたいんだろうね」
陽介はそう言って、耕された土を踏みしめた。
この土の上には、失敗も後悔もある。
でもそれを乗り越えて芽吹く“未来”がある。
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