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第3部 第122話 議会での火花
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王都の中央議事堂。
天井の高い円形の議場には、貴族議員、都市代表、商業組合の代弁者らがずらりと並び、ざわめきが渦を巻いていた。
「次の議題――“油芋由来の新素材・プラスチック”の研究と工業化について」
議長の声が響くと、場内の空気が一層重くなる。
まず立ち上がったのは、陽介たちの支援を表明している若手議員リカルドだった。
「諸君、この新素材は単なる実験成果ではありません。耐久性に優れ、軽く、加工も容易。これが工業と商業を結びつけ、王国の未来を変えるのです!」
彼の声は若々しく、しかし確信に満ちていた。
「しかも――環境に優しい! 我らの子や孫の世代まで、澄んだ空気と水を残せるのです!」
議場の一角から拍手が起こる。しかしすぐに別の議員が立ち上がった。
「夢物語を聞きに来たのではない!」
彼は王国北部の大地主にして、鉱山を抱える有力者。
「我々には鉄や銅、木材という確立された資材がある。それらで十分に発展してきた。いまさら怪しげな新素材に頼る必要はない!」
「そうだ!」「資材の供給網を乱すな!」
既得権益を握る議員たちが次々に声を上げる。
陽介と紬は議場の傍聴席にいた。
反発は予想していたが、やはり勢力は大きい。拳を握る陽介の横で、紬が囁いた。
「落ち着いて。ここからよ」
リカルドは表情を崩さず、ゆっくりと反論を続けた。
「確かに、鉄や木材は我が国を支えてきた。しかし資源は有限です。鉱山は枯渇し、森林は減り続けている。次の世代に何を残すのか――それを考えるのが、我々の責務ではありませんか?」
沈黙が一瞬、場を覆う。
その隙を突くように、別の議員が声を上げた。
「環境、未来、綺麗ごとばかりだ! 重要なのは、いまの経済と民の生活だ! 新素材が本当に安価で供給できるのか? 机上の空論で市井を惑わせるな!」
再びざわめき。だが今回は、庶民出身の都市代表がすっと立ち上がった。
「机上の空論ではありません。我々都市の民はすでに“油芋プラスチック”の試作品を見ています。軽く、丈夫で、再利用が可能。生活が豊かになることは間違いない!」
市井の代表の声に、傍聴席からも小さな拍手が漏れる。
紬は静かに頷いた。――根回しが効いている。
最後に、議長が議場を鎮めるように杖を打ち鳴らした。
「この件、次期の予算審議に大きく影響する。両派の意見をまとめたうえで、来月改めて採決とする!」
議場は一気にざわめきに戻った。
しかし、陽介と紬の胸には確かな手応えが残っていた。
――反対派は強硬だが、もはや民衆の心を無視できない。
次の一手こそ、勝負を決める。
天井の高い円形の議場には、貴族議員、都市代表、商業組合の代弁者らがずらりと並び、ざわめきが渦を巻いていた。
「次の議題――“油芋由来の新素材・プラスチック”の研究と工業化について」
議長の声が響くと、場内の空気が一層重くなる。
まず立ち上がったのは、陽介たちの支援を表明している若手議員リカルドだった。
「諸君、この新素材は単なる実験成果ではありません。耐久性に優れ、軽く、加工も容易。これが工業と商業を結びつけ、王国の未来を変えるのです!」
彼の声は若々しく、しかし確信に満ちていた。
「しかも――環境に優しい! 我らの子や孫の世代まで、澄んだ空気と水を残せるのです!」
議場の一角から拍手が起こる。しかしすぐに別の議員が立ち上がった。
「夢物語を聞きに来たのではない!」
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「我々には鉄や銅、木材という確立された資材がある。それらで十分に発展してきた。いまさら怪しげな新素材に頼る必要はない!」
「そうだ!」「資材の供給網を乱すな!」
既得権益を握る議員たちが次々に声を上げる。
陽介と紬は議場の傍聴席にいた。
反発は予想していたが、やはり勢力は大きい。拳を握る陽介の横で、紬が囁いた。
「落ち着いて。ここからよ」
リカルドは表情を崩さず、ゆっくりと反論を続けた。
「確かに、鉄や木材は我が国を支えてきた。しかし資源は有限です。鉱山は枯渇し、森林は減り続けている。次の世代に何を残すのか――それを考えるのが、我々の責務ではありませんか?」
沈黙が一瞬、場を覆う。
その隙を突くように、別の議員が声を上げた。
「環境、未来、綺麗ごとばかりだ! 重要なのは、いまの経済と民の生活だ! 新素材が本当に安価で供給できるのか? 机上の空論で市井を惑わせるな!」
再びざわめき。だが今回は、庶民出身の都市代表がすっと立ち上がった。
「机上の空論ではありません。我々都市の民はすでに“油芋プラスチック”の試作品を見ています。軽く、丈夫で、再利用が可能。生活が豊かになることは間違いない!」
市井の代表の声に、傍聴席からも小さな拍手が漏れる。
紬は静かに頷いた。――根回しが効いている。
最後に、議長が議場を鎮めるように杖を打ち鳴らした。
「この件、次期の予算審議に大きく影響する。両派の意見をまとめたうえで、来月改めて採決とする!」
議場は一気にざわめきに戻った。
しかし、陽介と紬の胸には確かな手応えが残っていた。
――反対派は強硬だが、もはや民衆の心を無視できない。
次の一手こそ、勝負を決める。
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