異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

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第5部 第5話 守護獣との対峙――二つの魂の証明

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🌋 水晶の巨獣、咆哮
 四河が集まる峡谷の底。
 巨大な水晶のアーチ――水門の前に立ちはだかるのは、
 **水晶の鎧をまとった守護獣(ガーディアン)**だった。
 その体は七メートルを超え、四足でありながら人のような体幹を持ち、
 全身の水晶が青く脈動し、生命の鼓動のように光を放つ。
「……これが、水門の守護者」
 紬が息を呑む。
「さすが初代王だ……とんでもない仕掛けを残してくれたな」
 陽介は静かに剣を構えた。
 守護獣が一歩踏み出すたび、地面が震える。
 水晶が軋む音を立て、喉奥から低い咆哮が響き渡った。
 ――試すように。
 ――問いかけるように。
________________________________________
⚔️ 第一撃――触れた瞬間に砕ける剣
 前衛の騎士が一斉に突撃した。
 鋼の槍が水晶の脚へ向けられる。
「突撃ーーーっ!!」
 しかし――
 バキィン!!
 槍は全て粉々に砕け散った。
 守護獣の水晶装甲は、鋼を石ころのように叩き折る。
「ダ、ダメだ! 武器が通らない!」
 後衛が悲鳴を上げる間もなく、守護獣の尾が横薙ぎに振られた。
「下がれ!!」
 陽介が叫び、飛び込んで盾を構える。
 巨大な尾が陽介の盾を叩きつけ、地面を滑りながら後退させられた。
 陽介は歯を食いしばる。
「……桁が違う。
 本気で“通さないつもり”だな、こいつ」
________________________________________
🌊 紬の判断――属性の読み解き
 紬は杖を構え、目を凝らした。
「水晶装甲は……“魔力の流れ”そのもの……!
 だから魔法で破壊しようとしても、逆流してこちらに跳ね返る……」
 守護獣は “攻撃を拒絶する装甲” を持つ存在。
 ただの魔物ではない。
 “門を開かせる気がない者”を排除するための存在だ。
「陽介。
 これ、多分だけど……“倒す相手”じゃない」
「倒さない……? どういうことだ?」
「証明する相手よ。
 心の強さ、願いの強さ……“二つの魂が一致しているかどうか”。
 戦いながら、その真意を測ってる」
 陽介は深く頷いた。
「じゃあ……“俺たちの覚悟”を見せる戦いってことか」
________________________________________
🔥 第二撃――十領主の精鋭たちの参戦
 その時、後方から声が響いた。
「陽介様! 我らも参ります!」
 駆けつけたのは十領主の精鋭たちだった。
 トマスの部隊が重盾を構え、衝撃を受け止める壁を作る。
 カティア配下の商隊護衛が機動力で側面を取る。
 オルフェンの鍛冶兵は強化ハンマーで水晶の節を叩く。
 エリナの研究班は守護獣の魔力の流れを分析し、弱点を探る。
 フェリクスとノアの補給隊が矢と薬を配り、
 マリアの治療班が後衛で負傷兵を支える。
 ユリウスが全体指揮に立ち、
 ライナルトが水晶の紋を読み取りながら叫んだ。
「守護獣は“完全拒絶”ではない!
 攻撃の瞬間、胸の水晶が白く濁る……!
 あれが“心の揺らぎ”だ!」
「揺らぎ……?
 じゃあ、そこが唯一の突破口だ!」
 陽介が剣を構え直した。
________________________________________
⚡ 激突――二つの魂の決意
 陽介と紬が、同時に前へ踏み出す。
「行くぞ紬! 俺たちの答えを叩き込む!」
「ええ――二人で、未来を切り拓こう!」
 守護獣が咆哮し、胸の水晶が光る。
 陽介は低く構え、渾身の踏み込みで胸部へ斬りつける。
 紬はその横で魔力を圧縮し、純白の光を重ねる。
 剣と魔力。
 二つの力が同じ線を描くように重なった。
 バァァンッ!!!
 守護獣の胸の水晶が初めて砕け、青い光が霧散した。
 守護獣は一歩後退し、低く頭を垂れた。
________________________________________
🌈 認められた証し
 ライナルトが叫ぶ。
「――門が反応しています!!」
 巨大な水晶アーチの紋章が光り始めた。
 青い光が川のように流れ、アーチ全体が震える。
 守護獣は陽介と紬を見つめ、
 まるで“通行を許す”かのように、静かに身を引いた。
 陽介は剣を下げ、深く礼をした。
「ありがとう……俺たちの覚悟を、確かめてくれたんだな」
 紬も涙を浮かべながら言う。
「私たち……あなたが守ってきた未来を、絶対に壊さないわ」
 守護獣は静かに頷き、
 光の粒となって水門の向こうへ消えていった。
________________________________________
🌅 水門、開く――そして、選択のときへ
 水門の中心に、青白い“光の揺らぎ”が生まれた。
 まるで水面のように揺れ、
 しかしその奥には――見覚えのある“空の青”が見えた。
 陽介の心臓が早鐘のように鳴る。
「……これは――」
「……現世……?」
 紬の声も震えていた。
 二つの世界の境界線が、
 いま静かに“扉として”姿を現した。
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