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第5話「模試と堆肥の二刀流! 陽介、地味に伸びる」
「――よし、今日の堆肥は完璧な水分量!」
陽介は真顔で、しゃがみ込みながら手の中の土を握った。
ぎゅっ、と握って、すぐにパラパラと崩れる。
見事な“しっとりホロホロ”状態。
「これは……“発酵の黄金比”……!」
陽介の自宅ベランダには、もはや家庭菜園というより“小規模農業実験場”が広がっていた。
母の買ってくれたコンポスト容器は2基に増え、野菜くずと米ぬかをブレンドしながら、発酵具合を記録するノートは3冊目。
『堆肥戦記vol.3~腐敗と戦う者たち~』
「ここまで来ると、もはや研究者の域……!」
しかしそれと同時に――
「くそぉっ、また一次関数かよぉぉぉ!!」
勉強机では、模試の過去問と格闘する姿も。
「“y=ax+b”って、bはなんだ!傾きと切片ってなんだよ!」
「“NPK肥料の配合バランスを計算せよ”!?いやそれは逆に得意だな!?」
まるで農学にだけステ振りされたRPGキャラのように、偏った得意不得意を見せながら、陽介は日々地道に努力を続けていた。
*
「……ねぇ、あんた最近、夜中まで勉強してるけど、寝てる?」
「寝てる! けど3時間くらい!」
「それ、寝てないって言うのよ……?」
「母さん、堆肥はね、寝かせる時間が大事なんだよ。だから俺も寝ないと」
「……誰だっけ、あんた……?」
*
やがてやってきた、人生初の本番模試。
「うわー、緊張してきた……!」
駅前の模試会場には、スーツ姿の保護者たち、全国から集まった中学生たちの熱気であふれていた。
「農家の息子さん? お父さん、有機認証農家って言ってたよね」
「え? 陽介くん、農家じゃないのに国農受けるの? すごいね……」
(そ、そんなに珍しいのか……!?)
だが、陽介は内心でこう思っていた。
(農家の家に生まれたかどうかじゃない。今、どれだけ本気かだ!)
*
数日後、模試の結果が返ってきた。
「……おおっ!? 社会と理科、めっちゃ伸びてる!」
「うおっ、“有機農業とEUの輸入規制”とか、正解してるし!?」
「いやそこ誰が出すんだよって問題だろ!? でも俺は正解したぞ!!」
一方で、数学と英語はまだ“踏ん張りどころ”だが――
「苦手科目:数学と英語、でも“農”は得意」
「農力……つまり、“農闘力”が上がっている……!」
(俺は……異世界でも、戦えるっ……!)
陽介の農力ノートには、今日も更新が続いていく。
・コンポスト温度:48℃(安定)
・今朝の堆肥の香り:ほのかに甘い香り。成功
・夢に出てきた牛:多分、校内にいた“しずかちゃん”
(夢にも影響与えてるじゃん!?)
*
夕食時、母がぽつりと漏らす。
「……ほんとに、農業高校行くんだね」
「うん。行きたい。ギリギリでも、チャレンジしたい」
「でも倍率高いでしょ。農家の子たち、強いわよ?」
「それでも、自分で選んだ道だし。あの夢見てから、何かが変わったんだ」
「……夢って、25歳で死ぬってやつ?」
「うん。まだ変な話って思われるかもしれないけど、あれ、本当に未来の自分からの警告みたいだったんだ」
「そっか……なら、母さんも信じる」
そして母は、冷蔵庫から一冊のノートを取り出した。
「陽介が初めて堆肥混ぜた日から、日記つけてたの。母さんなりの“記録”」
「え……なにそれ、知らなかった」
「“家庭菜園観察日誌”よ。小学生の自由研究の続編みたいなものだけどね」
陽介は思わず、鼻の奥がつんとした。
「俺……絶対、受かる」
陽介は真顔で、しゃがみ込みながら手の中の土を握った。
ぎゅっ、と握って、すぐにパラパラと崩れる。
見事な“しっとりホロホロ”状態。
「これは……“発酵の黄金比”……!」
陽介の自宅ベランダには、もはや家庭菜園というより“小規模農業実験場”が広がっていた。
母の買ってくれたコンポスト容器は2基に増え、野菜くずと米ぬかをブレンドしながら、発酵具合を記録するノートは3冊目。
『堆肥戦記vol.3~腐敗と戦う者たち~』
「ここまで来ると、もはや研究者の域……!」
しかしそれと同時に――
「くそぉっ、また一次関数かよぉぉぉ!!」
勉強机では、模試の過去問と格闘する姿も。
「“y=ax+b”って、bはなんだ!傾きと切片ってなんだよ!」
「“NPK肥料の配合バランスを計算せよ”!?いやそれは逆に得意だな!?」
まるで農学にだけステ振りされたRPGキャラのように、偏った得意不得意を見せながら、陽介は日々地道に努力を続けていた。
*
「……ねぇ、あんた最近、夜中まで勉強してるけど、寝てる?」
「寝てる! けど3時間くらい!」
「それ、寝てないって言うのよ……?」
「母さん、堆肥はね、寝かせる時間が大事なんだよ。だから俺も寝ないと」
「……誰だっけ、あんた……?」
*
やがてやってきた、人生初の本番模試。
「うわー、緊張してきた……!」
駅前の模試会場には、スーツ姿の保護者たち、全国から集まった中学生たちの熱気であふれていた。
「農家の息子さん? お父さん、有機認証農家って言ってたよね」
「え? 陽介くん、農家じゃないのに国農受けるの? すごいね……」
(そ、そんなに珍しいのか……!?)
だが、陽介は内心でこう思っていた。
(農家の家に生まれたかどうかじゃない。今、どれだけ本気かだ!)
*
数日後、模試の結果が返ってきた。
「……おおっ!? 社会と理科、めっちゃ伸びてる!」
「うおっ、“有機農業とEUの輸入規制”とか、正解してるし!?」
「いやそこ誰が出すんだよって問題だろ!? でも俺は正解したぞ!!」
一方で、数学と英語はまだ“踏ん張りどころ”だが――
「苦手科目:数学と英語、でも“農”は得意」
「農力……つまり、“農闘力”が上がっている……!」
(俺は……異世界でも、戦えるっ……!)
陽介の農力ノートには、今日も更新が続いていく。
・コンポスト温度:48℃(安定)
・今朝の堆肥の香り:ほのかに甘い香り。成功
・夢に出てきた牛:多分、校内にいた“しずかちゃん”
(夢にも影響与えてるじゃん!?)
*
夕食時、母がぽつりと漏らす。
「……ほんとに、農業高校行くんだね」
「うん。行きたい。ギリギリでも、チャレンジしたい」
「でも倍率高いでしょ。農家の子たち、強いわよ?」
「それでも、自分で選んだ道だし。あの夢見てから、何かが変わったんだ」
「……夢って、25歳で死ぬってやつ?」
「うん。まだ変な話って思われるかもしれないけど、あれ、本当に未来の自分からの警告みたいだったんだ」
「そっか……なら、母さんも信じる」
そして母は、冷蔵庫から一冊のノートを取り出した。
「陽介が初めて堆肥混ぜた日から、日記つけてたの。母さんなりの“記録”」
「え……なにそれ、知らなかった」
「“家庭菜園観察日誌”よ。小学生の自由研究の続編みたいなものだけどね」
陽介は思わず、鼻の奥がつんとした。
「俺……絶対、受かる」
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