追放ガチャ 只今、神界配信中! ~神々の賭けで弾かれ続ける俺は、追放ポイントで世界をぶっ壊す~

雪ノ瞬キ

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23話

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「なんだこれ? なんで俺が嗤っているんだ?」

「これ無心の鏡ですね」

「なんだそれ?」

「心の底にある欲望を映し出します」

「いや俺、そんなんないって」

 鏡から目を離した瞬間、
 そこに映っていた“俺”は、まだ嗤っていた。
 
「クロ―そんなに見たかったの?」

「違う! 断じて違う」

「だって、ねぇ。そんなだいたんにスカートめくらなくっても」

「ちがうんだー。俺じゃねぇー」

 俺はこの姿見の前から即座に離れた。
 なんだ。ここはなんなんだ。
 笑ってたのは俺じゃない。中身だけを引きずり出した顔だ。

 膝に手をあてて息を整えていると床が全面鏡張りだ。
 つまり……

「なんで、お前そこに立つ?」

「え? だってこういうの好きなんでしょ? いいよ?」

「違うんだー!」

 どうなっていやがる。
 俺を追い詰める宝物庫かここは?

 かなり明るい倉庫で、相当な数のアイテムがある。
 何がなんだかわからん物ばかりだ。

 ……ただ、どれも“触れていい”とは思えなかった。
 理由は分からない。
 だが、長居してはいけない場所だと、肌で分かる。

 このままだと俺自身が危うい。
 エラはニヤつきながら俺の前に立つ。
 床は鏡。
 肩幅に足をわざわざ開く。

「いいよ。今ならチャンスだよ」

「やめてくれー」

 俺はすぐに離れた。
 このままだとテント張ってしまう。
 まずい、まずすぎる。

 全部は持ち帰れない。

「クロ―、ビス留めあったよ」

 手元に見せるのは赤い杭1個と3つの黒い杭だ。

「赤はね、自分が持つ方。黒いのを目的の場所に刺しておけば移動できるよ」

 こんな小さいのか。
 片方の手のひらに4つ余裕で乗る。
 
「……でもねクロ―」
「これ、座標を“固定する”ってことはさ」
「間違えた場所に刺したら、逃げ場も固定されるのよ」

 やっかいだな。
 だが、俺が刺したい場所はきまっている。
 今は、あの白い空間だけだ。

 あの白い空間は、俺にとって特別だ。

 どの世界で追放されても、
 どんな理不尽な目に遭っても、
 最後には必ず、あそこに戻されてきた。

 床も壁も白くて、
 何もなくて、
 誰もいない。

 だが、不思議と怖くはなかった。

 戻された瞬間だけは、
 「まだ生きている」と思えたからだ。

 エラが呼びかける。

「……クロ―? 今、すっごい遠い目してたけど」

「え?ああ悪りぃ。追放された時のことでな」

「どうしたの?」

「ああ、白い空間にいつも一時的に連れてかれるんだ」

 そうさあの場所は、世界に弾かれても、
 拒絶されても、
 あの場所だけは俺を突き放さなかった。

 逃げ場というより、
 リセット地点。
 セーブポイント。
 ――いや、たぶん“檻”に近い。

「そこって、どんな場所なの?」

「ただの真っ白な何も無い空間さ」

 それでも、
 そこに戻れるという事実が、
 俺を前に進ませてきた。

 だからだ。
 ビス留めを刺すなら、
 他の場所なんて考えられない。

「クロ―、戻りたいの?」

「いや、そういうわけじゃないんだ」

 あそこは唯一、
 俺が世界に見捨てられていないと
 錯覚できる場所なんだ。

 白い空間では、時間の感覚も曖昧になる。
 どれだけ追放を繰り返しても、
 戻ってきた瞬間だけは疲労が薄れ、
 呼吸が整った。

「……理由は、あるんじゃない?」

「……かもな」

 理由は分からない。
 だが、あそこでは世界の視線が消える。
 神の声も、オッズも、評価もない。

 誰にも観測されていない、
 ただ「存在しているだけ」の場所。

 だから俺は、
 あそこを安全だと信じていた。
 疑う理由がなかった。

 もし戻れなくなったら。
 その想像だけが、胸の奥に引っかかった。
 嫌な予感は、いつも当たる。

 胸騒ぎだけが、消えなかった。

 ……。

「クロ―これ、倉庫指輪よ3つもある」

 ミレーヌは物珍しそうに黒い指輪を眺める。

「ちょうど3個あるな、皆でわけよう」

 エラが目を輝かせながら俺に左手薬指をさしだす。

「ねえ、クロ―お願い。ここに入れて」

「ああ、これでいいか?」

「わぁ感激。あたしたち夫婦みたい」

 夫婦なら、こんな地獄に新婚旅行しねぇ。

 なんだ?
 どうしてそうなるんだ。
 まあ、今はいいか。

「クロ―私も頼んでいいかしら」

 ミレーヌもどこかほほを染める。

「ああ、お前も同じ指か?」

「ええ、ぜひお願いするわ」

 指に刺すと大事そうにし笑みを浮かべる。

「うん。嬉しいわ。ありがとう」

 そっか、エラもミレーヌも収納指輪が欲しかったんだな。
 俺も必要だったし、3人でもてれば確かにいいな。

「おっ、おう?」

 この指輪はどの程度入れられるんだ?
 まあ、ひとまず入るだけ、やってみるか。

 3人で手分けしてかたっぱしから触れ収めた。

「空だな」

 あっという間にがらんどうの部屋だ。

「ええ、見事なほどね」

「クロ―ここにあるのってどれも高価な物よ」

 これまた僥倖だな。
 俺は、久しぶりに笑みがわき出た。

 さて、得る物得たし帰るか。
 辺りを見回し、残る物はない。

 エラは突然、モーニングスターを構える。

「クロ―! 何か変」
 
 光っていた棚が次々と暗くなる。
 床の鏡張りが「ただの黒い床」に戻る。
 無心の鏡は、ひび割れたまま沈黙。

「……終わった、よな?」

【宝物庫:取得判定 完了】
【残存価値:なし】

 なんだ? こんなタイプのログは初めてだな。

 ミレーヌは顎に手を当て考え込む。

「おかしいわ」
「通常、ここで“帰還予測”が出る」

 エラは肩をすくめる。

「神の演出でしょ」
「ほら、帰り道あるし」

 俺は背後を見て思わず出た。

「帰り道?」

 来たはずの通路が“広い”
 壁の模様が微妙に違う。
 外から何故か風が吹く。
 その風が、外の匂いじゃない。金属みたいに冷たい。

「……これ、戻れねぇな」

 扉だった出入口の姿は、
 もう跡形もなく、広い通路に変わっていた。
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