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二話
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彗は不義の子だった。
歴史だけはある家柄だが金持ちでもなければ人に誇れるような性格でもなく、目鼻立ちが整っているわけでもない、妻のある身でありながら外の女を孕ませるような下手を打つ、一言で言えばうだつの上がらない父親と、各国が自治区を置く都に自治区すらないような遠い遠い北の果ての小国から女一人で旅をしていた変わり者の母親との間に彗は生まれた。
母親は産後の肥立が悪く彗を産んですぐに死んでしまったから、彗は父親と父親の本妻に育てられた。
育てられたと言っても義母は彗のことを心底恨んでいて嫌がらせこそされど愛情をかけてもらったことは一度もないし、父親も人間としてできた男ではなく彗を見る度に過去の過ちを思い出して体を小さくして足早に通り過ぎるだけだったから家に置いてもらったというのが一番ふさわしい言葉だろう。
だから彗は物心がついた時には自分がこの家に居るべき人間ではないことをしっかりと理解していた。
目立たず、主張せず、わがままを言わない。それだけを心に刻んで日々を生きる。
先のことは何も考えず、空気の薄い屋敷の中で小さく呼吸を繰り返すだけの生活だった。
そんな彗が唯一深く呼吸ができるのが、屋敷を抜け出して都を彷徨い歩いている瞬間だった。
都はさまざまな国が自治区を置いていて多種多様な文化が入り混じり独特の世界を作り出していた。
たくさんの色が混ざり合い陽の光を浴びて輝く砂の国の香水瓶、華の国の精緻な柄が施された美しい陶器の皿、各々の国の人々が滑らかに発する言葉の数々。
彗は都に足を運ぶたびにまだ見ぬ世界の土地に思いを馳せてから、旅人であったという母親のことを考えて必ず涙を一粒ぽろりとこぼした。
陽蘭と出会ったのは確か都に通うようになってから数ヶ月が経った頃だった。
都といっても様々な国の自治区が置かれるが故に諍い事や事件に巻き込まれるなどはよくあることで、決して子供の一人歩きは勧められることではない。
そして彗は砂の国のバザールが開かれ大賑わいだったその日、大柄で血気盛んそうな男たちに体を押さえつけられていた。
歴史だけはある家柄だが金持ちでもなければ人に誇れるような性格でもなく、目鼻立ちが整っているわけでもない、妻のある身でありながら外の女を孕ませるような下手を打つ、一言で言えばうだつの上がらない父親と、各国が自治区を置く都に自治区すらないような遠い遠い北の果ての小国から女一人で旅をしていた変わり者の母親との間に彗は生まれた。
母親は産後の肥立が悪く彗を産んですぐに死んでしまったから、彗は父親と父親の本妻に育てられた。
育てられたと言っても義母は彗のことを心底恨んでいて嫌がらせこそされど愛情をかけてもらったことは一度もないし、父親も人間としてできた男ではなく彗を見る度に過去の過ちを思い出して体を小さくして足早に通り過ぎるだけだったから家に置いてもらったというのが一番ふさわしい言葉だろう。
だから彗は物心がついた時には自分がこの家に居るべき人間ではないことをしっかりと理解していた。
目立たず、主張せず、わがままを言わない。それだけを心に刻んで日々を生きる。
先のことは何も考えず、空気の薄い屋敷の中で小さく呼吸を繰り返すだけの生活だった。
そんな彗が唯一深く呼吸ができるのが、屋敷を抜け出して都を彷徨い歩いている瞬間だった。
都はさまざまな国が自治区を置いていて多種多様な文化が入り混じり独特の世界を作り出していた。
たくさんの色が混ざり合い陽の光を浴びて輝く砂の国の香水瓶、華の国の精緻な柄が施された美しい陶器の皿、各々の国の人々が滑らかに発する言葉の数々。
彗は都に足を運ぶたびにまだ見ぬ世界の土地に思いを馳せてから、旅人であったという母親のことを考えて必ず涙を一粒ぽろりとこぼした。
陽蘭と出会ったのは確か都に通うようになってから数ヶ月が経った頃だった。
都といっても様々な国の自治区が置かれるが故に諍い事や事件に巻き込まれるなどはよくあることで、決して子供の一人歩きは勧められることではない。
そして彗は砂の国のバザールが開かれ大賑わいだったその日、大柄で血気盛んそうな男たちに体を押さえつけられていた。
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一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
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