「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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12章 災厄再来

162、求心力

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 レッドたちが到着する頃にはライトが冒険者ギルドに掛け合い、一気にギルドマスターと面会していた。
 女神復活の件から肝を冷やし続けた上層部は次の侵略行為に備えて対策を考案中であり、未だ草案すら出来ていない中での巨大浮遊要塞の出現という大惨事。まさに藁にも縋る思いで居たところ、超有能冒険者であるライトが門戸を叩いてくれた。
 早速話し合いとなったが、ライトの持ってきた内容にギルドマスターは顔を顰めた。

「融資だって?!こんな時に何を考えているんだ!!」
「いや、こんな時だからこそだ。敵はあの要塞内に居るんだぞ? 要塞に乗り付けて戦うためには浮遊戦艦の建造は必要だ。もう既に魔導局局長に話は通してある」
「何を勝手なことを……」

 ギルドマスターは頭を抱える。
 確かに上澄みの冒険者やエデン正教に居る聖騎士パラディンなどの強者を運ぶのに空飛ぶ船は必要だろう。この企画に乗って融資出来れば、侵略者を撃破した暁に魔導国の冒険者ギルドの地位はうなぎ登りであることは間違いない。
 しかし額が不味い。突拍子もないほどの融資を単独で決めれば、真っ先にギルドマスターの地位は堕ち、融資額丸々借金に充てられる可能性がある。かといって他のギルドマスターに話を振れば、手柄は分散されて確固たる地位も揺らぐ。
 その上もう既に魔導局に話が通っているのも気に入らない。もし金を融通出来るとして、ライトが持ってきた話をこれから上層部同士で話し合うなら、その手柄は全部自分のものに出来た。話を通している現状、莫大な金だけを払うことになり、借金破滅コースまっしぐら。
 良い案ではあるのだが、用意周到が過ぎる。超有能ゆえに仕方がないことなのだが、隙が無くて入り込めない。
 世界の危機を前にしても、どうにか助かるような気がして未来に思いを馳せるのは人間のさがというものなのだろう。特に『みんなで力を合わせて』など、彼のような人間には反吐が出る言葉だ。

「……本当にこれはその……船の建造費……なのかな?」
「ん?」
「ど、どさくさに紛れて金を横領しようと考えてのことではないかと聞いているんだっ」
「……あ、何だと?」
「ふんっ!しらばっくれるな!持ち逃げして悠々自適に暮らすのが目的だろう?!大体、浮遊戦艦だって?!本国も建造してないのにどうやって作るつもりだ!?」
「はぁ……いいか? 設計図も局長に渡してある。そんなに心配なら魔導局に出向いたらどうだ?」
「それが本物であるとどうして言い切れる!? 局長と組んで私を騙すつもりだろう!!……そうだ、そういえば本国から魔導局に異動の通達があったそうだな。局長の交代で仕事が激減したのも記憶に新しい。ああそうか、収入の乏しい魔導局とラッキーセブンを解散させた冒険者崩れか。これは確定だな……」

 ──ガタッ

 ギルドマスターの言葉が言い終わる前にライトは立ち上がる。小さく縮こまりながら「ひぃっ!」と悲鳴を上げたが、ライトは特に何もしない。ただゴミを見るような目で蔑みながら退室した。

『よく我慢したのぅライト。此れなら殺しとるところじゃ』
「……ああ、正直俺も驚いてるよ」

 ギルドマスターから侮蔑の答えを返されたライトは静かに怒りながらギルド会館の広間に出る。そこに良く目立つ大男が仁王立ちで立っていた。

「貴様もここに来ていたのかディロン」
「ん? おお、ライトか。どこいってたんだオメー。探したぜ」
「嘘つけ。……ギルドマスターに融資を頼んだんだが、断られてしまったよ」
「ケッ、どいつもこいつもケチ臭ぇな」
「ねー」

 ヒョコッとディロンの脇から顔を出すウルラドリス。

「お、ウルラドリスも居たか。貴様らだけか? レッドはどこに……」

 そうしてライトが広間を見渡すと、掲示板の横にレッドとオリーが空の箱を持って立っているのが見えた。

「募金お願いしまーす。少しで良いので力を貸してくださーい」

 レッドは無い頭を捻って募金活動を始めた。ほんの僅かでも力になろうとする努力に涙ぐましいものを感じる。
 一介の冒険者はオリーの美しさに見惚れながらお布施のように金貨を箱に入れる。その度にオリーがニコリと笑って「どうもありがとう」と一言発するので、オリーの箱には金貨が積まれていく。

「見ろよあれ。女に一言感謝されるだけで面白れぇぐらいに貯まっていくぜ。男ってのはちょろいもんだよなぁ?」
「え? ディロンは違うの?」
「好みってのがあんだよ。俺の趣味じゃねぇってだけだ」
「……良いなあれ……俺も入れたい……」
「あ? なんか言ったか?」
「いや、何でもない。コツコツと貯めるレッドらしい集め方だ。普通の募金ではほとんど意味がなかったかもしれないが、オリーさんの力が効果的に発揮されている」
「つっても時間が掛かりすぎるぜ。もっとガバッと手に入れる方法は無ぇのか?」
「今し方実践してきたところだ。あれでも切り詰めた方だったのだが、難癖を付けられた上に値切り交渉もなくバッサリだ。ついてないよ」

 ライトは腕を組んでため息をついた。落ち込むライトを横目にディロンは軽口を自重し、口をへの字に結んだ。

「おっ!おいおーい!レッドじゃねぇかよぉ!」

 そこに陽気な声でワイワイと楽しそうに男性チームがギルド会館に入ってきた。戦士系だけで固められた血気盛んな肉体派。いつも陽気で空気も読まずに騒ぐのが大好きな祭り好き。ゴールデンビートルの面々である。

「あ、パイク」
「おっほ!『あ、パイク』だってよ!ハハハハッ!ちょー生意気ーっ!!……俺を見ても隠れなくなったな。慣れってやつか?」
「いや、今でもお前らは苦手だけどな」
「へっ!成長しやがってこの野郎。俺たちにビクついてたお前が懐かしいぜ。つか、何やってんのこれ? 募金?」
「おいおい、天下のレッド様が募金なんてするわきゃねぇだろぉ!ハッハッハッ!で? 何募金なんこれ?」

 レッドは拙い説明で浮遊戦艦を作るためのお金であることを説明する。説明されたゴールデンビートルは互いに顔を見合わせ、目をまん丸にしながらレッドを見た。

「マジか? あれに乗り込もうって腹なのかよ。スッゲェなおいっ!!」
「お前何が乗ってっか分かってんのかよ!」
「あ、えっと……魔神?」
「かぁーっ!!女神の次は魔神かよ!!お前どんだけこの世界救うつもりなの?!スッゲェな!英雄じゃん!!……おいウルフ、これ換金してこい」
「えぇ? 俺ぇ? ったく、人使いの荒い……」
「はいみんな注目ぅ!」

 パイクは手を2回叩いて広間にいるみんなの注目を引く。

「ここで募金活動をしているのはみんなご存知レッドさんだ!知らねぇ奴は居ねぇよな? 居たら教えてやるよ。あの女神をぶっ殺した張本人様よ!世界を救ったすげぇ御方だ!そんなレッドが今度はあの空にあるデケェ島の魔神をぶっ飛ばすんだとよ!!俺ぁ痺れたぜ!!……だがな。そんなすげぇ奴にも弱点がある!それは移動手段だ!それを作らなきゃあの島へ上陸すら出来ねぇ!つまり世界が救えねぇっ!!それじゃやるっきゃねぇよな!莫大な費用の足しになるか分かりゃしねぇが俺はこいつのために募金するぜっ!!」

 そういうとパイクはウルフが換金してきた袋を取り上げて丸々ゴソッとレッドの箱の中に入れた。

「あっ!ちょっ……!」
「あぁん? なんか文句あるかウルフ?」
「いや、まぁ良いけどよ。後で補填しろよな」
「バカいうなよ。俺たちはレッドにまだ感謝の印ってのを渡してなかったんだ。少し遅れたが、こいつが女神討伐のお礼ってことで受け取ってくれ」
「あ、ありがとうパイク」
「へへっ……見たかお前らっ!俺たちは世界平和のため、いの一番に金を出したぜ!お前らはなんだ? ただ指を加えてるだけか? ならこれで一生俺らに頭上がんないよなぁ? だってここで参加しなかったら、何もしなかった日和見野郎だもんな? いつでもマウント取ってやるよ!」

 ウルフもこの言葉でパイクの行動に納得した。ゴールデンビートルはゲラゲラ笑いながら冒険者たちを嘲笑う。
 バカみたいな煽りだが、のし上がるために舐められないよう生きてきた冒険者たちには刺さるものがあった。今まで静観していた冒険者たちも、ゴールデンビートルほどではないがお金を募金箱に投げ始めた。

「あらあら。先越されちゃったわね」

 そこに騒ぎを聞きつけて風花の翡翠もやってきた。

「レッド、わたくしたちのお金も受け取ってくださる? ジューン」
「畏まりましたお嬢様。どうぞこちらをお受け取りください」

 ドサッと置かれたお金は明らかにゴールデンビートルの倍以上入っている。パイクは敵意を見せたが、ルーシーは鼻で笑って流した。
 この上ない宣伝効果にライトとディロンも驚く。ギルドマスターという冒険者の元締めからは銅貨一枚すらももらえなかったが、レッドの人柄と力を知るものたちは何の躊躇もなくお金を出した。これも一つの力なのだろう。

「あっ!お前ら何をしているんだっ!!」

 そこにくだんのギルドマスターが騒ぎを聞きつけてやってくる。

「誰がここで募金活動を許したんだ!? 懲戒処分ものだぞっ!!お前もお前だっ!!冒険者のくせに乞食行為をするなっ!!」
「え、いや、これは生活に当てるお金ではなくて……」
「言い訳をするな!!戦艦だの何だの嘘ばかり吐いて!しかもこの私の庭で金の無心とは良い度胸だ!!お前を除名してもいいんだぞ!!」
「あ? おい待てコラ。聞き捨てならねぇな」

 そこにディロンが参戦する。

「金も出さねぇ奴が威張り散らしやがって。こいつらの善意に唾を吐きかけようなんざ、この俺が許さねぇ」
「なん……!? なんで君までこの男の肩を持つんだ?!ビフレストに袖にされた雑魚だろう!!君が一番嫌いなタイプじゃないか!!」
「俺が嫌ってるのはピーピー喚いて何もしねぇ癖に偉そうにしてるカス野郎だよ。そこで見とけよ? これ以上士気を下げるようなこと言うと俺ぁ何をしでかすか分かんねぇぞ? 理解したか? カス野郎」

 ディロンに凄まれたギルドマスターは押し黙ってすごすごと下がった。
 これ以降もレッドの募金活動は大繁盛となり、多くの寄付金が集まった。
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