魔王復活!

大好き丸

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第六十六話 ギスギス

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教室に入ると最近いつも机に突っ伏していた竹内の姿はなかった。

「ふ、三日続かなかったな…」

春田と虎田は窓際の端席に向かう。それに追従するように木島がついてきた。何が気に入らないのか、まだ許してくれないらしい。昨日、目を付けられてから明らかに敵視されている。

(やっぱ呼び捨てにしたのが悪かったのか?)

春田は虎田に洗った弁当箱を返したかったが、クラスメイトには知られたくない様だったので、返却する事が出来ない。別に腐るわけでも臭うわけでもないので、後々返せれば問題ないのだが、(忘れたら困るなぁ…)と気分の悪さを感じていた。

「今日さ~授業何だっけ?」

そこで気づく。(あ、友人同士の会話だ)ついてきたと感じたのは勘違いで、木島は虎田の席で駄弁っているだけ。いわゆる負の面で捉えすぎていたわけだ。前の席では自分の近くにグループがいなかったので静かなものだった。席替えはどうでも良かったが多少の弊害があったわけだ。(弊害は言い過ぎか…)

「一限目は現社だったと思うけど?」

「あ~、あのおばちゃんか…今日英語なかったっけ?」

実にこの学園の女子らしい発言だ。馬鹿にするわけではないが、一応、進学校のこの学園で、英語のみの会話に花を咲かせるのは如何なものかとも思ったりする。別に授業を好きになれとは言わないものの、他にも力を入れる所はあるんじゃないかと耳の端で聞いて思った。

「みーちゃんそればっかだよね。同年代にそういうのはいないの?」

「ちょっと~みゆきの趣味じゃないからって突き放さないでよ~。男子は近すぎてそんな気にならないのよね~。やっぱ恋人は年上男子が理想よ」

ふふんっと得意気だ。意外だったのは虎田がマイケルに興味がなかったことだ。木島の言う通り単純に趣味じゃないって事なんだろうけど、この学園の女子は少なからずマイケルに好意を抱いているというイメージがあったからだ。

「ねぇ、さっきからだんまりだけど聞いてるんでしょ~?あんたはどうなの?」

「あんた」という言葉の真意が分からない。春田は自分の事じゃないと無視するが、「聞いてんの?」ともう一度聞いてきた。視線を向けると、木島と目が合う。

「…俺?」

「は?他に誰がいるのよ」

何故か会話に加えられた。(友人同士で会話してればいいものを…)

「えっと…聞いちゃいたが、俺に何が聞きたいってんだ?マイケルの事か?」

聞いていた事を否定しないと「キモ…」とボソリと言った後、手を振って否定する。

「みゆきが言ったでしょ?同年代の子に誰か気になる子とかいないわけ?」

「…みーちゃん失礼だよ」

確かに今のはどう考えても喧嘩に発展しそうな一言だった。春田も思う所はあったので切り返す。

「いるかもな、お前じゃない事は確かだ」

「は?」木島は春田の言葉にイラっと来るが、「それはなにより。あんたに好かれたら自殺もんだわ」とそっぽを向いた。
ギスギスした空気の中に竹内が入ってくる。春田を見るなり「うぃーっす」という気の抜けた挨拶をする。

「おはよう竹内さん」

「お、おはよう竹内さん…」

虎田と木島はそれに返答する。手をひらひらさせてそれに答える。春田の目の前まで行くと、ふんっと鼻で笑って、「…今日早いじゃん」と一言。

「お前もな。今日は自分の席で寝てろ」

と吐き捨てた。完全にタイミングが悪かったとしか言いようがない。「いや…あの…」と虎田が取り繕おうとするが、「冷た…」といいつつ目の前の席に座る。

「機嫌悪いじゃん…どしたん?」

と珍しく寄り添うような形で話を聞いてくる。そこで春田は自分がよっぽどさっきの言葉でイラついていたんだと知り、内心反省する。

「いや…すまん。虫の居所が悪くてな。お前には関係ない事なのに…」

「なにそれ、ウッザ!」

といって木島は離れた。

「…なんかあった?」

「何でもないさ、それより早く来たな」

ふんっと壁に寄りかかると不満そうに言葉を出す。

「…昨日はアタシの方が早かったけど…」

ブーたれて上目遣いで春田を見る。

「春田くんごめんね。みーちゃん普段はあんなんじゃないのに…」

「いや、俺こそ大人げなかった。後で謝っとくよ…今言っても聞いてくんないだろうし…」

春田は横目で木島を見る。木島もこっちを見ていたのか、一瞬目が合うと、プイッと顔を背けた。それを見た春田は顔に不安を滲ませる。

「これは一筋縄じゃ行かないぞ…」
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