魔王復活!

大好き丸

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第109話 編成

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「本日は大変申し訳ございませんでした」

レジにて頭を下げる店員たち。

「もうお帰りになるということですので、一時間料金に変更の上、次回お使いいただける無料券を差し上げます。またのお越しをお待ちしております」

犯罪を未然に防げなかったことを詫び、一応色々と気を使ってもらった。断ることなく有り難く頂戴する。ついでに春田たちも貰うことができた。

「なんか便乗しちまったな……」

カラオケに来るつもりもなかったし、その上歌ってないだけに腰が引ける。「貰っとけるものは貰っとくか」の精神で部下全員の分含めて5枚を財布にしまった。

「ラッキーじゃ~ん。また今度行こうね~」

マレフィアは嬉しそうに春田に抱き着いた。

「はぁ?お前歌える曲とかあるのかよ」

「あるよ~。多分聖ちゃん以上にそういうの知ってると思うけど?」

フフンッと得意気に鼻を鳴らす。

「離れろアバズレ」

ナルルは嫉妬を剥き出しにして冷ややかな目を向ける。しかしヤシャは別段気にしていない。こういうキャラだと認識しているのだろう。

「お姉ちゃんたち仲良いんだね」

加古が元気に春田に確認する。きっと周りから見るとそういう風に見えるのだろう。この二人はほっといても殺し合いの喧嘩には発展しないので、じゃれ合っているだけと言えばいいのかもしれない。

「……まぁね」

ここは軽く流しておくことにする。12人の大人数となった春田たちはとりあえずカラオケ店から出た。脇の有料パーキングに移動すると虎田たちを見回した。

「えっと……俺と帰り道が同じなのは虎田さんと竹内か?他はどうなんだ?」

そこで木島も手を上げる。

「私も一緒だよ。忘れんな」

そう言えばそうだった。先日一緒に登校したのを思い出す。それを聞いた加古はニコニコ笑顔で手をつないだ。一緒に帰れることが余程嬉しいと見える。

「ウチらが同じ方向」

といった篠崎は館川を抱き寄せる。「も~強引~」と独特の反応を見せるときゃっきゃとじゃれ合う。

「ふーん。高橋は?」

「めぐはあっちっす」

「だったら私たちと一緒だね~。一緒に帰りましょ~」

どうやらきっちり二手に分かれた様だ。

「どうやらそこまでバラけずに済みそうだな」

春田は四天王を見る。ジッと吟味すると、最後にポイ子を見て口を開いた。

「俺とポイ子はマンション方面に帰る。マレフィアが高橋たちを送ってくれ。あとの二人は……じゃんけんだな」

ヤシャとナルル。二人は横目でお互いを見合う。

「ちょっと待ってよ。ウチらを子ども扱いするっての?一人だって帰れるっつーの」

篠崎は春田の言葉に苛立ちを見せる。同い年のクラスメイトに向かって失礼というものだろう。例えそれが心配からだとは言え、老婆心が過ぎる。女だからと嘗めているのか?

「まぁいいじゃんか。今日くらい安全に帰ってほしいんだよ。それに俺の従姉妹は世界一強いから安心してくれ」

「はぁ?だからそういう事じゃ……」

その時、異様な熱気に気付く。熱気の正体を見ると、空間がねじ曲がり二人の気が立ち上る。広く見えた駐車場は二人の闘気に当てられ小さく見えた。今から始まるのは単なるじゃんけんではない。愛憎渦巻く生死をかけた戦いだ。

「……何?これ?」

「じゃんけんですよ?」

ポイ子は不思議そうな顔で答える。

「これが……じゃんけん?」

皆の目が釘付けになるのも無理はない。ここまで凄まじい気迫を放つじゃんけんなど歴史上一度もなかっただろう。それが単なる街の小さな有料駐車場で、それもどっちについていくかという下らない理由で行われるなんて誰が思うのだろうか?

「最初は」「グー」

二人は示し合わせたように拳を突き出す。闘気がつむじ風の様に足にまとわりつく。その辺に転がる小石が浮力を持って浮かび上がるのを見た気がした。

ヤシャの拳には血管が浮かび、どれほど強く握りしめているのかよく分かる。ナルルはそれに対して力んでいない。多少の違いはあれど、どちらも譲らないという確固とした気配を持っている。その手を同時に体に引き寄せると、まるで弓矢を引き絞るように体を逸らす。

「……じゃんけん」「ぽい」

勝敗は決した。

ヤシャはグー。ナルルはパー。

ナルルの勝利である。

「……馬鹿な……」

自分の拳を見つめ愕然とするヤシャ。

「わらわの勝ちじゃのぅ鬼の姫。お前は魔女と行くがいい」

フッと鼻で笑うと春田に近寄る。

「待て!その勝ち誇り様、私が何を出すのか知ってたような面だな……!」

ナルルは見下したような視線を向けて微笑を浮かべる。

「強いて言うなら……力みすぎかのぅ」

ヤシャは初見ならグーを出すと握り締めた拳から悟ったようだ。そしてその考えは的中した。「ぐぅっ!」と唸ってその握り拳を振り上げるが「ストップストップ!!」と春田が急いで止めに入ったので駐車場は無傷のまま終わる事が出来た。勝負が終わり弛緩した空気が流れる中、ふいにマレフィアが春田に訊ねた。

「なんでうちには決定権がなかったの?」

皆に聞こえないようコソッと耳打ちする。

「そりゃお前この世界の事よく知ってんだから迷ったりしないだろ?いざとなりゃ転移でも何でもして一瞬で家に帰れるし」

案の定と言える答えが返ってきた。予想していただけにぷっと膨れる。

「……うちだって聖ちゃんと一緒に帰りたかったのに……」

いじけたような顔になっているが、これは春田を困らせるためにする猿芝居だ。春田はこれに騙されない。

「そうかそうか、また今度な」

そっけなく返されたマレフィアはブーたれる。

「……ねぇ、ちょっといい?」

竹内が春田に話しかける。

「なんだ?」

「……従姉妹のお姉さんを便利に扱いすぎだと思うのはアタシだけ?凄い偉そうに感じる……」

見た目は皆春田たちより上だ。ポイ子でさえお姉さん感がある。

「うん、ちょっと言いづらかったけど私も思ったよ」

虎田もこの意見には賛同する。「私も」「ウチも」と次々に訝しむ声が出て気まずくなる。この時ほど(演技が足りなかったなぁ……)と思った事は無い。「えっと、それは……」と発言に困っていると、ニヤニヤしたマレフィアが横から口をはさんだ。

「聖ちゃんは恥ずかしがり屋さんだからね~。おうちじゃ”お姉ちゃんお姉ちゃん”って離してくんないんだから~」

「バ……おま、何言って……!」

ここで焦ると思うツボである。口を出したからには引っ込められない。

「そうじゃそうじゃ。わらわと結婚するーって部屋でギュッとしてくれるんじゃぞ?いじらしいったらありゃせんわ」

追い打ちをかけるナルル。

「は?そんな事言ってないだろ」

しかしそれはヤシャが華麗に否定。ナルルはイラっとした顔でヤシャを睨む。

「お兄ちゃんにも可愛い所があるんだね」

加古はその全てを見て総括する。否定したいが、純粋な目で見られると否定しづらい。

「……分かったよ……姉さんたち。そっちは頼んだよ」

「まっかせなさ~い。聖ちゃんの為に無事に送り届けるよ~」

フンッと胸を張ってアピールする。

「よろしくお願いするっす!」

高橋は”来るもの拒まず去るもの追わず”の精神で頭を下げる。それを見た篠崎も館川も、もう逆らう気はない。引っかかる所こそあるが素直に「よろしくっす」と会釈程度に頭を下げた。

「さぁさ、ここで色々してては注目の的です。とっとと帰りましょう」

ポイ子もお姉さん感を出してくる。(お前もか……)と呆れた目で見たが、ポイ子はその目にウィンクで返した。
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